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「男の人ってズルい…」結婚して子どもができても、生活が全然変わらない。結局、妻の負担が増えるだけ

  • 2025.8.13

結婚するか、しないか。
子どもを持つか、持たないか。
キャリアを追い続けるか、それとも手放すか。

私たちは、人生の岐路に立つたびに選択を重ねてきた。
女性の場合、ライフステージに応じて人間関係も変化していく。
同じ境遇の人と親しくなることもあるが、それは一時的なつながりにすぎないことも多い。

何にも左右されない“女の友情”は、本当に存在するのだろうか。
それとも――友情にも「賞味期限」があるのだろうか。

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ママ友付き合いってムズカシイ:愛梨(37歳)専業主婦/夫の会社の役員


「いやぁ、本当に暑いね〜。みんな何にするか決まった?」

『麻布 川上庵』の4人がけのテーブル席。息子の圭太と同じ幼稚園の年少クラスのママたちに誘われたランチ会。

まだ6月だというのに、今日は真夏のようにジットリと暑い。こんな日は冷たいビールで喉を潤したくなるが、アルコールを頼む人はいない。

子どものお迎えがあるしね、と自分を納得させて、私も天せいろに追加でクルミだれを注文した。

圭太を通わせている幼稚園は、港区のなかでもカジュアル寄りだと私は思っている。

入園前の説明会や入学式こそキチンとしたフォーマルな装いの親たちでホールは埋め尽くされていたものの、入園後の保護者会では、デニムにTシャツ姿のようなラフな格好の人も多い。

幼稚園があるのは港区のヒエラルキーでいうと“その他”に分類される。3Aつまり赤坂、青山、麻布エリアではない。

毎日ネイビーのワンピースなんて着たくないと思っていた私には、この園の肩の力が抜けた雰囲気がちょうどよかった。

「今年の役員の仕事、結構大変じゃない?去年より人数少ないのに、やる事多い気がするもん」

リーダー格のママが言う。

「そうなんですか…お手伝いできることあったら、仰ってくださいね」

私が気遣うような素振りを見せると、彼女は満足げに蕎麦をすすった。

年長クラスにも子どもがいる“先輩ママ”には、敬語を崩せない。相手がタメ口なので合わせていいのだろうが、私は圭太が第一子だし、37歳という年齢よりも若く見られることが多く、未だに敬語をやめるタイミングが掴めないのだ。

私は適当に相づちを打ったりしながら、蕎麦を口に運ぶ。

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麻布十番には蕎麦店がいくつかあるが、私はここが一番好きだ。特にクルミだれせいろは、家族で来ても必ず頼む定番で、濃厚な胡桃が細打ち蕎麦によく絡むのがたまらない。

いつもどおり美味しい。それは間違いないのだが、私はどこか心ここにあらずだった。

ママ友との距離感の取り方は、難しい。

仲良くできるのはもちろん嬉しいけれど、踏み込みすぎてはいけないし、踏み込まれすぎるのも困る。

例えば、圭太が夢中になっているアニメの話はするけれど、システム開発会社を経営している夫・将生のこと、私も役員であることは自分からは話さない…というように。

聞かれれば、うちは自営業なんです、とふわっと流すようにしている。

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「そろそろお会計しようか」

誰かが腕時計を見ながら言い、私はグラスに残った蕎麦茶をひと口飲み、財布を取り出した。

店の前で軽く手を振り合い、それぞれが帰路につき、私も麻布十番駅の方へ歩き出す。

自宅である麻布十番と赤羽橋の間のタワマン近くまで送迎バスが来てくれるということも、この幼稚園を選んだ理由のひとつだ。

バス停に5分遅れでバスが到着した。

「ママ〜〜!!」

圭太が笑顔でバスを降りて、駆け寄ってくれる。

「おかえり〜圭太。待ってたよ。今日は暑かったでしょう?あ、プール入ったんだね」

「うん。あのね、お水が顔にかかったけど泣かなかったんだ〜!すごいでしょ」

私は「かっこいいじゃん、もうお兄ちゃんだね」と褒めながらプールバッグを受け取り、手を繋ぎながら自宅へ帰った。

圭太は遊び疲れたのか眠そうだ。私はバスタブにお湯をため急いで入浴を済ませ、顔にフェイスパックをつけたまま、冷蔵庫を開ける。

今朝煮込んでおいたミートソースの鍋を取り出して温め、スパゲッティを茹でて食べさせた。

「ママ、ねむい…」

圭太がつぶやいたので慌てて歯磨きをさせ、寝室に連れていくと、絵本を開くこともなくスヤスヤと寝息を立て始めた。

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「ふぅ…可愛い寝顔」

私はキッチンに戻ると冷蔵庫を開け、昼間飲み損ねたビールの代わりに、よく冷えたシャルドネの栓を抜き、リーデルのワイングラスに注ぐ。

― さて、夕食はどうしよう。

時刻は19時。今夜は珍しく将生の会食がない…ということは、夕食を用意しなければならないということだ。

圭太用に作ったミートソースはケチャップを多めに入れていて甘いから、彼は好まないだろう。けれど、これから他の何かを作る体力も気力も残っていない。

「ただいま〜」

私が迷っているところに、将生が帰宅した。

「おかえりなさい」

とりあえず、将生の好きなスモークサーモンを入れたサラダを作り、ダイニングテーブルにはタバスコを置いた。

「なんだ、圭太は寝ちゃってるのかぁ…」

そう言いながら彼はスマホをテーブルに置き、ミートソースの味を確かめることもなく、案の定大量のタバスコをかけている。

「今日、保護者会だったんだけどね。秋のバザーかなり大規模らしいよ」

私はサラダを食べながら話しかけた。

「へぇ〜」

「ヘアゴムとか、ティッシュケースとか。何か手作りの物を提供しないとなの…」

将生は目線をスマホから動かさず、画面をスクロールしている。

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― はぁ…。

仕事が大変なのはわかる。経営者だし、リスペクトももちろんしている。

けれど結婚しても子どもができても、会食やら何やらで夜遅く帰ってきたり、変わらない交友関係を見ていると、なんだか“ずるい”と思ってしまうのだ。

口を閉ざすと、ようやく彼が「ごめん。なんだっけ?」と聞くが、私は「ううん」とフォークにパスタを巻きつけながら、小さく首を横に振る。



土曜日の11時。

広尾にあるリトル・シャイン。ここは圭太が1歳の時から通っている知育教室だ。教室に通い続けている理由は、圭太の小学校受験を視野に入れているためだ。

去年から母子分離のクラスになったため、圭太がレッスンしている間は、広尾駅前のカフェで時間をつぶすことにしている。

「愛梨ちゃん、今日なんか元気ない?」

私の顔を覗き込んできたのは、吉村由里子。大手保険会社に勤めているワーママだ。同じ教室に彼女の娘が通っているため仲良くなった。

「ううん、そんなことないよ!」

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レッスンを待っている間、ここで一緒にコーヒーを飲むようになり、お互いにちゃん付け、タメ口で話す仲にまでなれた。

「そっか…ていうか、愛梨ちゃんって、いつも綺麗にしててえらいよね」

「えぇ!?あ、ありがとう。でも、由里子ちゃんの方がすごいよ。働きながら子育てして、休みの日は習い事だなんて…」

誰かに褒められることが久しぶりすぎて戸惑い、私は咄嗟に褒め返す。

「いやいや、毎日ヘトヘトよ。総菜で夕飯済ませてばかりだし、もっとちゃんと子どもと向き合ってあげなきゃ、とは思うんだけどね」

「そっか…でも、外にも居場所があるのっていいよね。私は夫との会話も、子どものことしか話題なくてさ。しかも、それすら聞いてもらえてないっていうか」

こんなことまで由里子に話すつもりはなかったのに、自然と言葉が出てきてしまう。

ほぼ専業主婦、という選択をさせてもらっている今の生活に不満があるわけではない。むしろありがたく思っている。

でも、由里子のように外で働くという選択をしていたら、こんなに寂しい気持ちになることはなかったのかもしれない…と思うこともあるのだ。

「ねぇ、愛梨ちゃん!今度、夜出かけない? もし旦那さんに圭太くんを預けられる日があればだけど…」

「いいね!そういうの、もうずっとしてないかも」

話に夢中になり、すっかり氷が溶けてしまったアイスコーヒーを飲みながら答えた。

土日の夜ならば、将生も家にいる。たまには私が夜出かけても怒らないだろう。

数時間でもいい。母でも妻でもなく、ただの愛梨になりたい。専業主婦の私にだって、そういう夜があってもいいはずだ。

「オッケー!じゃあ、お店は私が選んでおくね」

そう言ってくれた由里子に、私は笑顔で頷いた。


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