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世界一の洋食は、実は東京にあった!プロの料理人がプライベートで通う、本当に旨い店5選

  • 2025.8.3

シンプルな和食は料理人の嗜好や経験が顕著に表れる。それらは普段の食生活でも養われ、異ジャンルが与える影響は大きい。

そこで、和食店主の慕う「洋」な店を聞いた。

― Recommender ―
乃木坂『乃木坂 しん』の石田伸二氏
東京カレンダー


『とくしま青柳』で15年、都内の日本料理店で5年腕を磨く。

2016年にソムリエの飛田泰秀さんと『乃木坂 しん』を開業。ふたりの力量が合わさって、和食随一のワインペアリングが叶う。

1.『乃木坂 しん』の石田伸二さんが惚れる『レストラン リューズ』の匠な絶品フレンチコース

六本木『レストラン リューズ』の調理風景
オープンキッチンからシェフトックをかぶった料理人たちが見える。中央が飯塚さん
“一流を確信する美しきひと皿の連続に思わずため息がこぼれる”


石田伸二さんと『レストラン リューズ』の飯塚隆太さんの出会いは約20年前。

徳島出身の石田さんが『とくしま青柳』の若手としてがむしゃらに働く中、同社のフランス料理主任教授だった飯塚さんに話を聞いてもらっていた。

交流は続き、いまも家族の祝い事などで飯塚さんの店を訪れ、都度感銘を受けている。

“繊細な職人技が光る料理に、いつ来ても新鮮な驚きがあります”
六本木『レストラン リューズ』の「仔羊のロースト」
「仔羊のロースト」。添えられた仔羊のジュは10kgで600ccしかとれない肉のエッセンス。骨を焼いて1時間炊いて煮詰める。つけ合わせはアミガサタケとアスパラソバージュ、層をなしたジャガイモのガトー


「優しい人柄がお料理にも反映されています。しっかりクラシックをされてきた土台があるからこそ、新しいことに挑戦しても、お料理にまったくブレがない。

美味しいのは元より、日本人が作るフレンチらしい繊細な盛り付けと食材の使い方が、ジャンルは違えど、勉強になります」

飯塚さんは、『ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション』の料理長も務めた日本屈指のシェフだが「和食の料理人から学ぶことは多いです」と話す。

六本木『レストラン リューズ』のアスパラガスとそのクーリ、赤玉ねぎや実山椒のコンディメント、さっと炙ったアオリイカ、グアンチャーレを重ねた逸品
アスパラガスとそのクーリ、赤玉ねぎや実山椒のコンディメント、さっと炙ったアオリイカ、グアンチャーレを重ねた逸品


アオリイカの料理が良い例で、包丁の切り込みは『青柳』で学んだ。

そこにアスパラガスのクーリや実山椒、シトロンキャビアを合わせるのはさすがの経験値。

六本木『レストラン リューズ』のフェンネルのエスプーマの中にウニとキャビア、ゼリーで固めたフェンネルときゅうりが入った一品
東京カレンダー


フェンネルのエスプーマの中にウニとキャビア、ゼリーで固めたフェンネルときゅうりが入っている。

周りはオマールのフォンがベースの甲殻類のカスタードソース。コース¥24,200~。

六本木『レストラン リューズ』の丸山俊輔氏
「素材を生かした軽やかなソースの料理が多いので、個性が強すぎないエレガントなワインの提案が多いです」とソムリエの丸山俊輔さん


「ジャンル問わず、いままで学んだ知識や技術があって新しい組み合わせが生まれます」と飯塚さん。

その想いに石田さんも共感し、新たな驚きを求めて何度でも通ってしまうのだ。

― Recommender ―
銀座『銀座 鼓門』の浅倉鼓太郎氏
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多国籍料理店や和食店での修業を経て2007年に久我山に『器楽亭』を開業。

2020年に銀座へ移転し、より贅沢に各国要素を効かせたコースを提供する。お酒好きでスタッフともよく飲む。

2.『銀座 鼓門』の浅倉鼓太郎さんが愛する『スペインバル ジローナ』の“飲める”パスタパエリア

大崎広小路『スペインバル ジローナ』の内観
黒板に手書きでぎっしり書かれたメニューもまた気さくなバル的で選ぶのが楽しい。店主は開業にあたりスペイン北部のジローナも訪れ、店内にはスペイン雑貨の装飾も
“肩肘張らずに美味しく、楽しいワイン飲みが叶う最高のお店です”


和食の枠にとらわれず、自由な発想で食通を魅了する浅倉鼓太郎さん。

その姿勢はラテン気質に通じるものがあり、今回推薦する『スペインバル ジローナ』も、本国らしい“楽しさ”がキーワードとなっている。

「一度訪れたサンセバスチャンのバルを思い出させてくれる賑やかな雰囲気と、日本の食材を多く使ったワインをがぶ飲みできるお料理、そして山岸治郎さんの兄貴分的人柄にどハマりして数年前から通っています。何を食べても美味しくて、とにかく楽しいのが好きです!」

店名からジローナの郷土料理があると思いきや、実は店主の名前ジローが由来。そんなお茶目さもある山岸さんが目指したのは、“西五反田に根ざすバル”だ。

“圧倒的コスパの逸品とスペイン各地のワインが相性抜群です”
大崎広小路『スペインバル ジローナ』で提供しているワイン
ワインはカタルーニャやリアス・バイシャスなどスペイン各地のものをそろえ、シェリーも豊富。グラス¥700~


スペインに溢れる生活に密着したバルのように、気楽にワイン片手にお喋りしてもらうべく、ワインはグラス¥700から、料理は¥1,000前後が大半だ。

大崎広小路『スペインバル ジローナ』の「豚肩ロースの炙り焼き」
東京カレンダー


塩胡椒とオリーブオイルだけで仕上げた「豚肩ロースの炙り焼き」¥880。下に敷くのは玉ねぎのマリネ。

大崎広小路『スペインバル ジローナ』の「ホタルイカのアヒージョ」
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「ホタルイカのアヒージョ」(¥1,200)は、最後に卓上で白ワインをかけて完成させる。刻んだ生ハムとエシャロットがアクセント。

大崎広小路『スペインバル ジローナ』の「真鱈のピルピル」
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「真鱈のピルピル」(¥1,500)のピルピルとは、鱈の旨みをオリーブオイルで乳化させたソース。

店ではこのソースのために鱈を干し、頭や骨、皮、貝の出汁で作る。

大崎広小路『スペインバル ジローナ』の「イカ墨のフィデウア」
「イカ墨のフィデウア」¥2,300。イカ墨、エビ、カニ、貝の出汁で炊いたパスタで作ったパエリア。浅倉さんと山岸さんはともに「肝や味噌の臭みが苦手」と話し、だからこそ臭みのないイカ墨料理が完成したのだ


浅倉さんの好物は裏メニューの「イカ墨のフィデウア(パスタのパエリア)」。イカ墨の旨みにワインが進み、「楽しく酔える最高のお店」との浅倉さんの言葉にも沿う逸品だ。

美味しいのはもちろん、感情を解き放つことのできる酒場が、ユニークな料理人のエネルギーを養っていた。

― Recommender ―
外苑前『御料理 太いち』の佐藤太一氏
東京カレンダー


1980年生まれ、北海道出身。『大木戸 矢部』などで腕を磨き、2014年に独立を果たす。

2024年には移転を機に店名を『御料理 太いち』と改め、コースと単品を組み合わせるスタイルに。

3.『御料理 太いち』の佐藤太一さんが選ぶ『ビストロ ミカミ』のやみつきトマトパスタ

中目黒『ビストロ ミカミ』の三上敏行氏、真夕美氏
店主の三上敏行さんとサービスの真夕美さんは息の合った名コンビ
“ぎっしり書かれたメニューから選ぶのが楽しいです”


創業は1994年。『ビストロ ミカミ』が30年以上にわたり東京で愛され続ける理由は、ゲストの声に耳を傾けながら、料理もスタイルも進化してきたから。

マダムの真夕美さんは「常連の方の食べたいものを出していたらいつの間にか増えちゃって」と笑う。その言葉どおり、黒板には細かい字でびっしりとメニューが並ぶ。

中目黒『ビストロ ミカミ』の黒板メニュー
黒板の左側はほぼ前菜で約60種以上もある。右側はブルゴーニュを中心としたワインのリスト。他にメインメニューも別に用意される


「とにかくメニューが多くて選べるのが魅力的ですね。アラカルトで自由に頼めるのも楽しいし、どの料理も手を抜かず、しかもリーズナブルなんです」と語るのは佐藤太一さん。

“気取らない街のビストロで、ワインを呼ぶ逸品たちに癒やされます”
中目黒『ビストロ ミカミ』の「車海老のクリームコロッケ」
エビの身がゴロゴロ入った「車海老のクリームコロッケ」¥1,200。エビ味噌と頭の出汁で作るソースは、パンにつけて最後の一滴まで食べたくなる


中にはコロッケや春巻きなど、フレンチの枠にとらわれないメニューもあり、さらにいろいろ楽しめるようにポーションは小さめ。

こうした、フレンチでありながら洋食の自由さを兼ね備えたスタイルが、佐藤さんの心を惹きつけている。

中目黒『ビストロ ミカミ』の「和牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」
東京カレンダー


力を入れなくてもほろりと切れる「和牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」¥1,500。

中目黒『ビストロ ミカミ』の「白イカとセロリのサラダ」
東京カレンダー


セロリの食感も小気味よい「白イカとセロリのサラダ」¥1,100。ビネガーを効かせたマスタードソースで和える。

中目黒『ビストロ ミカミ』の「フレッシュトマトの辛いパスタ」
「フレッシュトマトの辛いパスタ」。甘み、酸味、旨みが鮮やかな生のトマトを使ったシンプルなパスタ。日本人が好きな辛みをしっかり効かせた味わい。辛さはお好みで変えられるので、激辛をリクエストする人もいるという


また食事の〆にパスタを楽しめるのも、ここならではの魅力。佐藤さんのお気に入りは「フレッシュトマトの辛いパスタ」。

ワインの種類もそろっているので、「その日のオススメを選んでもらうのが毎回の楽しみです」と話す。

中目黒『ビストロ ミカミ』の内観
モダンで落ち着いた内装。厨房がチラリと覗けるカウンターではマダムとの会話も弾む。ゆったりと間を空けて配置されたテーブル席はリラックスして食事が楽しめる空間だ


そんな佐藤さんにとって、親しい友人と美味しい料理とワインで心地良く過ごすことのできるかけがえのない場所なのだ。

― Recommender ―
神谷町『無題』の鈴木智之氏
東京カレンダー


1989年生まれ、北海道出身。『青山 えさき』、赤坂『松川』などの名店で腕を磨き、2024年に自身の店『無題』を開店。

まっさらな表札は何にもとらわれずに料理を味わってほしいという意。

4.『無題』の鈴木智之さんを虜にした『PST 六本木』のもっちりジューシーピザ

乃木坂『PST 六本木』の調理風景
日本の職人が手がけたこだわりの薪窯は最高で500℃まで温度が上がる。ピザを窯に入れる前に塩を撒き、生地と窯の間に空間を作って焼き上げる
“巨大なピザ窯で焼き上げるライブ感に、食欲が駆り立てられます”


「世界中のレストランを食べ歩いているアメリカ人のグルメなお客様から、“世界一美味しいピザはローマではなく東京にある”と聞いて初めて訪れたときの感動は、いまでも忘れられません」と語るのは鈴木智之さん。

それ以来、東京のオススメのレストランを尋ねられると、決まって「世界一のピザは東京にあるらしいですよ」と『PST 六本木』紹介しているという。

“月替わりピザも確かな味わいで、個人的ナンバーワンピザです”
乃木坂『PST 六本木』の「桜エビと新玉ねぎ、国産レモンのピッツァ」、「自家製リモンチェッロソーダ」
「桜エビと新玉ねぎ、国産レモンのピッツァ」レギュラー¥3,790。旬の素材を組み合わせた月替わりメニュー。ベースはトマトとチーズから選択でき、ハーフ&ハーフも可能。さわやかな「自家製リモンチェッロソーダ」(¥850)とも合う


そのピッツァは、オーナーの玉城 翼さんオリジナルブレンドの生地に、農園から届く野菜、イタリア直送のフレッシュなモッツァレラチーズなど、素材一つひとつを丁寧に選び抜いている。それをシンプルに組み合わせるセンスが『無題』の世界観とも響き合う。

「月替わりのピッツァは、素材の組み合わせが楽しくてワクワクします。ラザニアやミートボールといった一品料理も本当に美味しくて」と家族そろってファンだという。

また鈴木さんがハマったのが「自家製リモンチェッロソーダ」。ここで出合って、家でも自分で飲むようになったほどだとか。

乃木坂『PST 六本木』の「国産牛の窯焼きラザニア」
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窯で熱を入れる熱々の「国産牛の窯焼きラザニア」¥1,880。

赤ワインで煮詰めたトマトソースの下にベシャメルソースがしのばせてある。たっぷりのとろけるチーズが食欲をそそる。

乃木坂『PST 六本木』の「ミートボール」
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トマトソースで煮込んだ合い挽肉の「ミートボール」¥1,980。肉の旨みが凝縮している。

乃木坂『PST 六本木』の内観
広々したキッチンを目の前にしたカウンターも人気。「目の前で生地を伸ばして、薪窯で焼き上げる風景を眺めているのも楽しいですね。子どもも大好きです」と鈴木さん


「席数が多いから、当日に思い立って電話しても入れることも多いんです」と、鈴木さん。

気軽な日常使いができるお気に入りの一軒として、足繫く通っているのだ。

― Recommender ―
赤坂『赤坂おぎ乃』の荻野聡士氏
東京カレンダー


京都『嵐山 吉兆』で8年、『銀座小十』で5年修業したあと、姉妹店である『銀座 奥田』で店長を任され2年務める。

2020年3月に独立し『赤坂おぎ乃』をオープンした。趣味は料理。

5.『赤坂おぎ乃』の荻野聡士さんが唸る『ドゥエリーニュプリュス』のひんやり鱧料理

牛込柳町『ドゥエリーニュプリュス』の内観
カウンターには手触りが柔らかい大雪山の桂の木を使い、椅子は長時間座りやすい飛騨家具を採用するなど、心地良さを追求
“ここでしか食べられない唯一無二感に、つい足を運んでしまいます”


荻野聡士さんが10年以上通うのが『ドゥエリーニュプリュス』。元は四谷3丁目にあり、4年前に牛込柳町に移転してからも訪れる。

その理由について、「癒やされたいときに来ています。店主の瀬野景介さんは、人柄もさることながら料理が素晴らしいです。和洋中どのジャンルの知識もあり、美味しく楽しい料理が多い。ここでしか食べられない料理ばかりで勉強になります」と荻野さん。

“シェフの自宅に招かれたような心地良さに癒やされます”
牛込柳町『ドゥエリーニュプリュス』の「アッラビアータ」
静岡産和牛「渡邊」のモツを使った「アッラビアータ」。モツと手打ちパスタのサイズ・食感が似ていてやみつきになる。ソースのポイントは熟成豆板醤


瀬野さんは欧州での修業も含めフレンチとイタリアンの経験が長く、中華も研修し、独学で和食も知る。

2021年に移転し、「僕の自宅にお招きしたかのように、気の置けない雰囲気で美味しいものを食べてもらいたい」と小体な店をひとりで営む。

牛込柳町『ドゥエリーニュプリュス』の「増田牛友三角のビアンキュイ」
「増田牛友三角のビアンキュイ」。霜降り肉の軽快な食べ方を追求し、赤ワインを塗りながら焼く。メインは6種から選択可


コースには料理人も驚くレシピが多く、荻野さんは「鱧のお料理が特に好き」と話す。

牛込柳町『ドゥエリーニュプリュス』の「梅雨限定 鱧と冬瓜 レモングラスのスープ」
「梅雨限定 鱧と冬瓜 レモングラスのスープ」。鱧と冬瓜はレモングラスのスープで合わせ、オリーブオイルと細かく刻んだ胡瓜がさわやかなアクセントに。鱧は鱧の出汁で火を入れ、鱧の出汁で冷ます。和食を知るからこそのアプローチ。料理はすべてコース(¥15,000~)の一例


さっと出汁に通した“落とし”の鱧と合わせるのはレモングラスのスープ。繊細な身質の鱧がさわやかな香りを纏い、和食店ではまずない仕上がりに。

また、パスタ生地で作る小籠包も斬新。中に豚肉とコンソメを入れ、生地には季節のフレーバーを練り込み、初夏なら新茶が香る。

牛込柳町『ドゥエリーニュプリュス』で提供しているワイン
外部ソムリエの声も聞きつつ、料理に合うワインを提案。ペアリング¥9,000


よく知る食材の魅力の引き出し方が未知の領域で、荻野さんほどの料理人もときめくのだ。

▶このほか:人気ソムリエが、プライベートで訪れる食事とワインを気軽に楽しめるレストラン6選

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