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“タイタニックのあの人”が仕掛ける食の革命──スージー・エイミス・キャメロンの挑戦【社会変化を率いるセレブたち】

  • 2025.8.11
Inside Out LLCのファウンダー、スージー・エイミス・キャメロン。
Inside Out LLCのファウンダー、スージー・エイミス・キャメロン。

1962年1月5日、アメリカ・オクラホマ州オクラホマシティに生まれたスージー・エイミス・キャメロンは、80年代に名門モデルエージェンシー「FORD」の顔として活躍したトップモデルであり、世界的にヒットした映画「TITANIC」(1997)でローズの孫娘リジー役を演じたことで世界が記憶する俳優でもある。

だが、そんな彼女の真のレガシーはハリウッドの枠を超えた場所にある。それが、2006年に妹レベッカとともに尽力した「ミューズ・グローバル・スクール」の設立だ。子どもたちの好奇心を育むイタリア発祥のレッジョエミリア教育に着想を得て始まったこの学校は、2015年に全米初の100%植物由来の給食プログラムを導入。教育界に革新をもたらしたとして世界中から大きな注目を集めた。そして今年8月には、同校はサンタモニカに移転し、最先端のSTEAM教育にMICA(測定・計測・制御・分析)技術を統合したプログラムを提供するなど、さらなる発展を見せている。

一方プライベートでは、映画監督のジェームズ・キャメロンの妻として5人の子どもたちのいる家庭を築いてきた母であり、環境活動家、作家、ソーシャル・アントレプレナーとして、サステナブルで思いやりある世界の実現に人生を捧げてきた。2018年に出版された著書「OMD(One Meal a Day)」で、「1日1食を植物由来の食事に変えるだけで、健康になり、寿命を延ばし、地球を救える」と、誰もが地球の未来に貢献できるというシンプルで力強いアイディアを提案。

また、ファッションの分野でも、2009年に「レッドカーペット・グリーンドレス」を立ち上げ、アカデミー賞の舞台でサステナブルなデザインにスポットライトを当てた世界的なエシカルファッションムーブメントを巻き起こした。2024年には画期的なホールディングカンパニー「Inside Out LLC」を設立。CEOとして、食・ファッション・メディア・科学・教育・ウェルネスの6つの分野をまたいだシステム変革と再生的イノベーションを促し、未来を切り拓く。

──2025年は「MUSE」以来の大型プロジェクトとなる新ベンチャー「Inside Out LLC」を立ち上げ、CEOとして7,000万ドル(約103億円)の自己資金を投資し、さらに3億ドル(約442億円)の資金調達にも成功したと伺いました。まずはこのプロジェクトの詳細と、立ち上げまでに最も困難だったことをお聞かせください。

そうですね、最も難しかったのは、意外なことに投資家やパートナーへのプレゼンテーションや議論ではなく、いかに妥協せずに私たちの使命を貫き通すことができるか、ということでした。

Inside Out LLCの使命は、ファッション・フード・ウェルネス・サイエンス・教育・メディアという6つのセクターが深く関わりながら、再生可能で価値あるエコシステムを構築する、というものです。ですが、あまりにも大掛かりで多角的なビジネスモデルであるため、一般的な資本の流れに逆行することから理解者を得ることにも苦戦しました。さらに、注力するポイントを絞り込み、より親しみやすいサービスを構築するため、時に短期的なトレンドを追うなどのプレッシャーが常につきまといました。

ですが、私はこの経験を通してこう実感したのです──“本当の変革は、サイロの中では起こらない”と。つまり、異業種交流に消極的であってはダメだということ。ですから、最も難しかったのは“共通の信念を持つパートナー”を見つける、ということに尽きるかもしれません。そして、いま地球規模で起きている危機の“緊急性”を本気で理解し、次世代のために投資という形で行動できる人とつながれることこそ、この企業を立ち上げた意味だと感じています。

──苦戦しながらも前進し続けたご自身を突き動かしたものとは一体何だったのでしょうか?

プロジェクトを進行していく中で、歩くペースが遅すぎるように感じたり、障害が大きすぎると感じたりする瞬間もありました。ですがそんなとき、私はこう思っていたのです──どんなに小さな一歩でも、波紋を起こすことができる。そして波紋が重なれば、大きな変化の波が生まれる、と。その信念を貫くことが、私の原動力だったのです。今の私には、変化が起きることを悠長に待っている時間はありません。そしてみなさん一人ひとりにも果たすべき役割があることを知ってもらいたいと思っています。

1日1食の植物由来食品がつなげる、地球の未来

Inside Out LLCのCEOに任命されたマテオ・ワードとともに、本社のあるローマで行われた式典に出席。
Inside Out LLCのCEOに任命されたマテオ・ワードとともに、本社のあるローマで行われた式典に出席。

──ところで、「MUSE」開校時から提唱されているスージーさん独自の「OMDプラン(One Meal a Day)」は、私たちも日々実践しやすい提案だと感じました。改めて、その考案のきっかけと具体的な内容を教えてください。

OMD──One Meal a Day(1日1食プラン)は、1日1食を植物由来食品に置き換えるという、シンプルかつパワフルな“豊かな食生活への誘い”とも言えると思います。たったこれだけ?と思われるかもしれませんが、実はこの“たった一つの選択”を継続的に行うことこそが、二酸化炭素排出量を大幅に削減し、健康状態を改善し、そして地球上のあらゆる生命を尊重する新たなフードシステムの構築へとつながるのです。

考案のきっかけは、私の子どもたち、そして気候危機の現実に加えて、2006年に妹のレベッカとともに設立した『MUSEスクール』での取り組みでした。私たちが学校給食を100%植物由来にしたとき、食そのものが、環境教育や啓発のとてもパワフルな手段となり得ることを目の当たりにしたのです。

OMDは、完璧を目指すものではなく、日々の中で少しずつ進んでいく“歩み”のようなもので、誰もが無理なく取り組めて、互いに支え合うことができるものです。一方で、OMDは学校や企業、レストランなどの組織にとっては「植物由来食品がスタンダードになったら何が可能か?」と問いかけるものでもあります。そして、これらが大きなうねりとなって、システムそのものの変革を促す──つまりODMとは、私たちの体と地球、そして未来の世代への愛と希望を、日々の暮らしの中で淡々と実践しつないでいく行為なのです。

──国連平和大使で動物行動学者のジェーン・グドール博士も、スージーさんのレシピを「人々の健康と自然界の両方に栄養を与えるもの」と絶賛しています。ご自身は、植物由来食品がどのように気候変動を解決するとお考えですか?

グドール博士の言葉は私にとってかけがえのないものであり、彼女は常に私を導いてくれる光です。実際、私たちが日々行っている“食べる”という行為と、食物を育て、生産し、消費する一連のプロセスは、気候変動において最も影響の大きい要因の一つでもあります。中でも畜産業は、温室効果ガスと気候変動の第2位の原因であり、森林破壊や水資源の枯渇、生息地の喪失といった現象の大部分に関与しています。

植物由来食品への移行とは、単純に“食事のメニューを変える”という置き換えではありません。それは個々がポジティブな変化を起こすための、とても強力な手段です。もっと言うとメタンガスの排出を抑え、生態系を守り、水や土地などの貴重な資源を節約する手段にもなり得る。同時に、私たちの心に思いやりやマインドフルネスを呼び起こし、本来あるべき人の姿へと“再生”させるスイッチのような存在でもあるのです。

ですから、私が植物由来食品に情熱を注ぐ理由は、気候問題や健康維持のためだけではありません。そこには、平等性や動物福祉といった、複雑に絡み合ったさまざまな課題があります。だからこそ、日々植物由来食品を選択するということ自体が、実は地球規模の課題に変化や解決策をもたらすのではないかと私は信じています。

「代替品」ではなく、“再構築”としての食の提案

──「植物由来食品」と聞くと、たとえばIKEAの“プラントボール”のように、すでに身近な商品を思い浮かべる方も多いかもしれません。スージーさんは、現在独自の植物性製品を開発されているそうですが、外部機関と連携しながら、「Inside Out LLC」では、どのようなプロジェクトが進行しているのでしょう?

Inside Out LLCが目指しているのは、“食べること”を通じて、身体、地球、そして地域社会を豊かにしていく未来です。つまり、私たちは単に“植物由来の代替品”を作っているわけではなく、再生食材や、純粋な原料に根ざした食のあり方を、新たな視点で捉え直しているのです。たとえば、カナダとニュージーランドに独自の研究開発チームを持ち、糖質を抑え、栄養価が高く、美しく、そしてできる限り少ない原材料で構成された食品を開発しています。私たちは、できる限り原料に近い食品を通じて、食べる喜びと美味しさを提供するための手軽に食べられる食品に“戻したい”と考えているのです。

──すべてのプロセスをインハウス(自社)で行いながら、食を本来あるべき方向へ導くというのはかなり壮大でユニークですね。

そうですね。もう一つ、私たちの活動がユニークであると呼ばれる点については、食を文化や伝統、そして平等性の面から捉えていることではないでしょうか。私たちは、気候変動に強い作物や倫理的な調達モデル、そしてゼロウェイストシステムの開発に取り組んでいます。それは土壌を癒し、農家の生活を豊かにし、世界中で植物由来の食生活を促進することを目的としたものなのです。

食は個人の記憶であり、ファミリーそのものであり、大きな可能性を秘めたもの。私たちの目標は、人々や土地、そして未来の世代への愛に根ざした植物由来食品による“食のムーブメント”を築くことです。ひいてはこれが、持続可能性という枠を超え、土地や地球環境の再生と復興につながると考えています。

──最後に、スージーさんのお気に入りの植物由来食品レシピを教えていただけますか?

もちろん!そうですね、まず私は身体と地球に優しく、美味しくて食べるのが楽しくなるレシピが大好きです! 私の一番のお気に入りは、レンズ豆とサツマイモのほっこりしたシェパーズパイ。風味豊かで食物繊維もたっぷり、愛情たっぷりです(笑)。それに、カシューナッツベースのクリーミーなマカロニチーズのローストブロッコリー添えもよく作ります。これは、家族や友人にとても好評です。

フレッシュなものが食べたいときは、ゴマペーストとレモンで作るレモンタヒニドレッシングをかけたひよこ豆とアボカドのサラダが定番。彩りも鮮やかで栄養満点で、食感も豊かで食べるのが楽しくなります。

それから、タコスやブリトーバー、ライスペーパーロール、パスタバーなどを使ってオリジナルの創作メニューをみんなで作って食べるのもおすすめです。それぞれの組み合わせに個性が現れて楽しいですし、仲を深める絶好の機会でもありますから。

私にとって、植物由来食品は神の祝福そのもの。植物由来食品と美味しさは両立しますし、味を犠牲にせずに丁寧に食べることにもつながります。言い換えれば、植物由来食品とは、美しく満足感のある一口の中に、色彩や風味、そして健康など豊かさをすべてを詰め込んだものなのです。

Interview & Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba

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