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『退職後すぐにお金に困る人』には“ある共通点”があった…意外とやりがちな“年金の間違った使い方”とは?【FPが解説】

  • 2025.8.12
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

退職後、働く予定がない場合は収入を年金に依存します。年金は老後生活を支える収入源である一方で、使い方を間違えると経済的に困窮する恐れがあります。

年金制度の理解が不足していたり、受給タイミングの判断を誤ったりすると、経済的に苦しい老後生活になりかねません。

今回は、ファイナンシャルプランナーの視点から、退職後にお金に困らないための年金活用術をお伝えします。

老後破産につながりかねない年金の使い方

退職後にお金に困る人の多くは、年金制度への理解不足と、年金に対する間違った考え方が主な原因となっています。まずは、特に多く見られる年金の使い方の失敗パターンを解説します。

娯楽費も年金でカバーしようとする

年金で旅行や趣味などの娯楽費まで賄おうとする人が見られますが、これは家計を圧迫する原因です。年金は住居費・食費・光熱費など、基礎生活費をカバーするための収入と位置づけるべきです。

日常生活で使えるお金が圧迫されると、必然的に生活の質が下がってしまうでしょう。また、突発的な医療費や修繕費が発生した際に、家計が破綻するリスクも高まります。

娯楽費や予備費は、貯金や私的年金でカバーすることが重要です。年金は生活の土台を支える収入として活用し、ゆとりある生活のための資金は別途確保しておくことで、安定した老後生活を実現できるのです。

年金受給開始時期を安易に決めてしまう

年金の受給開始時期は、60歳から75歳までの間で選択できます。しかし、年金受給開始時期を十分に検討せず、適当に決めてしまう人は少なくありません。

「年金事務所から連絡がきたから」と、安易に65歳から受給を始めると、その後に「繰下げ受給をしたい!」と考えても変更はできません。繰下げ受給をすれば1カ月当たり0.7%の割合で年金を増やせますが、一度受給を開始すると、受給時の年金額を一生涯受け取ることになってしまいます。

年金だけで現役時代と同じ生活を続けようとする

年金受給後も現役時代と同じ生活水準を維持しようとする人がいますが、これは現実的ではありません。現在の年金制度では、現役時代の収入に対する年金の給付水準(所得代替率)は約50~60%程度だからです。

年金額を正確に把握せずに生活設計を立てると、毎月の収支が赤字となり、貯金を取り崩す生活が続きます。

また、医療費や介護費用など、高齢になるにつれて増加する支出も考慮しなければなりません。「入ってくる以上に使わない」という家計運営の大原則は、年齢に関係なく意識すべきでしょう。

公的年金のみでも健全に生活するコツ

テレビやインターネットのニュースでは「年金だけでは生活できない」というネガティブな声がみられるのも事実です。

しかし、現役時代にきちんと保険料を納めるのはもちろん、老後生活に突入したあとも工夫をすれば公的年金だけでも問題なく生活できます。

繰下げ受給で年金額を最大化する

公的年金をベースにした生活設計を考える際には、繰下げ受給を検討しましょう。受給開始を1か月遅らせるごとに年金額が0.7%増額され、70歳まで繰り下げると42%、75歳まで繰り下げると84%の増額です。

月額15万円の年金を70歳まで繰り下げた場合、月額約21万3,000円の受給が可能になります(税引き前)。健康で働き続ける予定があり、年金を受け取れない期間の生活費を工面できる人にとって、有効な戦略といえるでしょう。

年金記録の管理と最適化を図る

健全な家計運営をするためには、「自分はいくらの年金を受給できるのか」という情報収集が欠かせません。「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」などを通じて、年金記録と受給できる年金額を確認しましょう。

入ってくる金額を把握できなければ、生活設計のしようがありません。年金額を把握したうえで、「毎月の生活費を何万円に抑える必要がある」「毎月の貯金の取り崩しを何万円に抑えれば、資産が100歳まで底をつかない」などのシミュレーションをしましょう。

生活費の見直しとコンパクト化

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

年金中心の生活では、支出の最適化が欠かせません。現役時代の生活費を見直し、老後に本当に必要な支出を明確にしましょう。

年金は物価上昇率や賃金上昇率などに応じて見直されますが、急増することは基本的にあり得ません。そのため、働いて収入を得る予定がなければ、支出の見直しは常に意識すべきです。

より小さな住まいへの住み替えや保険・固定電話の解約などを通じて、固定費を抑えるのは優先的に取り組みたいところです。また、マイカーを手放したり、利用していないサブスクの解約も検討しましょう。

まとめ

退職後にお金に困る人の多くは、年金制度への理解不足と計画性のない資金管理が原因となっています。特に繰り上げ受給の選択や退職金の無計画な使用は、長期的な経済的困窮につながりかねません。

繰下げ受給の活用や年金記録の適切な管理、生活費のコンパクト化により、公的年金中心でも安定した老後生活は十分に実現可能です。豊かな老後生活の実現に向けて、年金を受け取るタイミングやコスパの良い生活を意識してみてください。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。



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