1. トップ
  2. 『年収1000万』と『年収800万円』“手取りの差額”に絶句。お金のプロが明かす、稼ぐほど損をする“残酷なカラクリ”

『年収1000万』と『年収800万円』“手取りの差額”に絶句。お金のプロが明かす、稼ぐほど損をする“残酷なカラクリ”

  • 2026.3.8
undefined
出典元:phootAC(※画像はイメージです)

「年収1,000万円」といえば、かつては裕福な生活の代名詞でした。しかし実際になってみると、「税金が高くて手取りが意外と少ない」「支援制度から外されてばかりで損をしている気がする」といったモヤモヤを抱える人が少なくありません。

2024年10月から児童手当の所得制限が撤廃されるなど、一部で改善の動きも見られますが、高所得者層を取り巻く状況は本当に好転したのでしょうか?

そこで今回は、社会保険や家計見直しの専門家である柴田充輝さんにインタビュー。年収1,000万円世帯が直面する「制度の壁」の正体と、会社員でも実践できる具体的な防衛策について詳しく解説していただきました。

児童手当は改善も…依然として残る「年収1000万円の壁」

---児童手当や高校無償化の所得制限撤廃は朗報ですが、これで年収1,000万円世帯の「不利な状況」は解消されたのでしょうか?まだ残っている「壁」はありますか?

柴田 充輝さん:

「児童手当の所得制限は、2024年10月から撤廃され、所得に関係なく全世帯に支給されるようになりました。また高校の就学支援金も2025年度から所得制限の一部が撤廃され、公立高校については全世帯が実質無償化の対象になっています。こうした改善は朗報ですが、それでもなお年収1,000万円前後の世帯が不利になる制度はいくつも残っています。

まず『配偶者控除』です。納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除は完全にゼロになります。給与収入のみの場合の目安は年収約1,195万円超で適用外ですが、年収900万円を超えたあたりから控除額が段階的に縮小していくため、じわじわと税負担が重くなります。

次に『高額療養費制度』です。これは医療費の自己負担に上限を設けてくれるありがたい制度ですが、年収によって上限額が大きく変わります。たとえば100万円の医療費がかかった場合、年収約370万〜770万円の区分なら自己負担の上限は約8万7,000円ですが、年収約1,160万円以上の区分では約25万4,000円に跳ね上がります。同じ治療を受けても、自己負担額に大きな差がつくのです。

さらに見落とされがちなのが『子どもの医療費助成』と『奨学金』です。子どもの医療費助成は各自治体が独自に行っている制度で、市区町村によって対象年齢や所得制限の基準が異なります。年収1,000万円前後でこの制限にかかり、助成を受けられなくなるケースがあります。

大学進学時の奨学金も、多くの制度で保護者の収入基準があり、この年収帯は対象外になりがちです。児童手当や高校無償化の改善が進んでも『細かい支援が次々と外れる』といった構造は残っており、それが積み重なることで家計への影響は無視できない金額になるのです。」

年収800万円世帯と「豊かさが変わらない」は本当か

---よく「年収1,000万円あっても、手取りや支援の差で年収800万円の人と生活レベルが変わらない」という話を聞きます。実際のところ、どうなのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「結論から言うと、児童手当の所得制限撤廃や高校就学支援金の拡充によって、かつてほど極端な『逆転現象』は起こりにくくなっています。ただし、家族構成や住んでいる自治体によっては『実質的に使えるお金がほとんど変わらない』状況は依然として起こり得ます。

まず手取りの基本を押さえましょう。年収1,000万円でも実際に手元に残るのは700万円程度です。一方、年収800万円なら手取りは約600万〜630万円程度。額面で200万円の差があっても、所得税の累進課税と社会保険料の増加により、手取りの差は100万円前後に縮まります。さらに年収850万円以上では給与所得控除が195万円で頭打ちになるため、年収が上がっても控除のメリットが増えない仕組みになっています。

ここに、残っている制度の差が加わります。自治体によっては子どもの医療費助成に所得制限があり、年収1,000万円前後で対象外になることがあります。大学進学時の給付型奨学金や授業料減免も、多くの場合この年収帯では利用できません。高額療養費の自己負担上限の差も、家族が大きな病気をした場合には年間で数万〜十数万円の差になります。

税金や社会保険料の負担を感じやすくなるうえに制度上の不利が積み重なると、年収800万円世帯との『体感的な豊かさの差』はかなり小さいのが実情です。」

搾り取られるだけじゃない! 会社員ができる「自衛策」

---会社員だと税金は天引きされるばかりで、対策のしようがないように思えます。この年収帯でも有効な手立てはあるのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「会社員の場合、税金や社会保険料は給与から天引きされる仕組みのため、自営業者のように経費を計上して所得を下げるといった手段がほとんどありません。所得税は累進課税で自動的に上がり、社会保険料も報酬に連動して決まるため、自分の意思で負担を大きく減らすことが構造的に難しいのです。だからこそ、『会社員に認められた数少ない節税手段』を漏れなく活用することが重要になります。

その中で有効活用したいのが『iDeCo(個人型確定拠出年金)』です。掛金の全額が所得控除になるため、所得税率が20〜23%になるこの年収帯では節税効果を感じやすいでしょう。たとえば企業年金のない会社員が月2万3,000円を拠出すると、年間約27万6,000円が所得から差し引かれ、所得税率20%の場合は約5万〜6万円の節税になります。住民税の軽減分も合わせると年間約8万〜9万円の効果があり、老後資金も同時に準備できて一石二鳥です。

なお、iDeCoの掛金上限は2027年1月から最大で月額6万2,000円に引き上げられる予定なので、有効活用しましょう。

次に『ふるさと納税』です。年収1,000万円なら寄付上限額がおよそ17万〜18万円程度あり、実質2,000円の自己負担で返礼品を受け取れます。厳密には節税ではなく税金の『前払い』ですが、返礼品の分だけ家計の実質的な支出を減らせるため、やらない手はありません。

そして見落とされがちですが効果が大きいのが『共働きで世帯年収を分散させる』という考え方です。同じ世帯年収1,000万円でも、片働きより共働きのほうが課税対象となる所得が分散されるため、手取り収入は多くなります。たとえば夫1人で1,000万円を稼ぐより、夫700万円・妻300万円のほうが累進課税の影響が緩和され、自治体の医療費助成や奨学金の所得判定でも有利に働くケースがあります。

手元に残ったお金を効率よく増やす手段として、NISAの活用をおすすめします。2024年からは年間最大360万円まで非課税で投資でき、生涯投資上限は1,800万円になりました。運用益に税金がかからないため、長期の資産形成に最適な制度です。会社員は『稼ぎ方』で税金を減らすことが難しい分、iDeCo・ふるさと納税・NISAという『使い方・守り方』の三本柱をフル活用して、手元に残るお金を最大化していくことが大切です。」

制度の「壁」を知り、賢く資産を守る

児童手当などの改善が進んだとはいえ、年収1,000万円世帯には依然として「所得制限」や「累進課税」による負担感が残ることが分かりました。しかし、嘆いてばかりいても手取りは増えません。

柴田さんが教えてくれたように、iDeCoやふるさと納税、NISAといった制度をフル活用し、共働きによる世帯年収の分散なども視野に入れることで、家計の防衛力は確実に高まります。まずは「知ること」、そして「使える制度は漏れなく使うこと」。これが、この年収帯における賢い家計運営の第一歩と言えそうです。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。