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『silent』に続くか? “注目の脚本家”が描く、30代女性たちの本気の再挑戦…今から期待高まる“NHK夜ドラ”

  • 2025.8.4
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木竜麻生 (C)SANKEI

9月8日から放送される『いつか、無重力の宙で』の放送が今から待ち遠しい。

本作はNHKの「夜ドラ」枠で放送される大人の青春群像劇。大阪の広告代理店に務める望月飛鳥(木竜麻生)は現在30歳。社内では優秀な社員として若手から尊敬されていたが、周りの期待に応えようと必死で過ごす中で疲弊し、何が自分の言葉で何が自分の思いなのかわからなくなっていた。

そんなある日、高校時代に飛鳥といっしょに天文部を立ち上げた日比野ひかり(森田望智)が13年ぶりに姿を現す。ひかりは高校時代から宇宙飛行士を本気で目指してがんばっていたが、あることがきっかけで宇宙飛行士選抜試験を受ける直前に夢が絶たれてしまったことに落ち込んでいた。

飛鳥はそんなひかりに「宇宙飛行士にはなれなくても〈超小型人工衛星〉だったら、今の私たちだって宇宙を目指すことができるかもしれない」と提案。そして二人は、天文部の仲間だった自由奔放な水原周(片山友希)と、しっかり者の木内晴子(伊藤万理華)に声をかける。再集結した4人は人工衛星を作り始めるが、同じく宇宙を目指す大学生の金澤彗(奥平大兼)から「素人だけで人工衛星を作ろうなんて厳しくないですか?」とばっさりと切り捨てられる。

現在わかっている「あらすじ」はこれくらいだが、元天文部の30代女性4人が〈超小型人工衛星〉を作ることで、宇宙を目指すというストーリーはとてもユニークだ。

元天文部の女性4人は木竜麻生、森田望智、片山友希、伊藤万理華という若手実力派女優。そこに若手実力派俳優として注目を集めている奥平大兼が絡む座組も楽しみである。役者の名前を観ただけでも、これまでのテレビドラマとは違うケミストリーが起こるのではないかと期待してしまう。

新進気鋭の脚本家が話題作を発表するNHK「夜ドラ」枠

本作が放送されるNHKの「夜ドラ」枠は、夜10時45分から15分間、月~木にかけて放送される、朝ドラ(連続テレビ小説)のような帯ドラマ枠となっている。

帯ドラマという特殊な番組構成もあってか「夜ドラ」にはユニークな作品が多く、出演者も脚本家もこれから伸びそうな若手を積極的に起用してきた。

例えば2023年に放送された『わたしの一番最悪なともだち』は、終活がうまくいかない女子大生と彼女が天敵としている幼馴染の女性の友情を描いた物語だが、朝ドラの『おかえりモネ』等の作品で活躍する蒔田彩珠が主演で、2025年度後期の朝ドラ『ばけばけ』でヒロインを演じることが決まっている髙石あかりが、主人公の幼馴染役で強烈な存在感を見せていた。

そして、脚本の兵藤るりは本作で大きく注目され、2024年の連続ドラマ『マイダイアリー』で向田邦子賞を受賞した。

また、2023年に『ケの日のケケケ』で第47回創作ドラマテレビ大賞の大賞を受賞した森野マッシュも、2024年に『VRおじさんの初恋』の脚本を担当しており、若手脚本家が頭角を表す場として現在注目されている。

『いつか、無重力の宙で』の脚本を担当する武田雄樹も、NHKで単発ドラマ『高速を降りたら』を2024年に手掛けた新鋭脚本家で、オリジナルの連続ドラマを単独執筆するのは今回が初めてとなる。

『高速を降りたら』は危篤の義父の元に向かうために3人の夫が、深夜の高速道路をドライブするミッドナイト・ロードムービーというユニークなドラマだった。

男たちはそれぞれ人には言えない秘密を抱えており、「男らしさ」をこじらせるあまり職場や家庭で行き詰まっていたことが次第に明らかとなっていく。

3人はそれぞれ普通の男性で、男らしさをひけらかして周囲を威圧するようなタイプには見えないのだが、そういう一見優しそうに見える普通の男性が抱え込んでいる「男らしさ」の病をコメディテイストで描き出した見事な作品だった。

テーマはもちろんのこと、真夜中の高速道路を男3人でドライブするというシチュエーションも面白かったため、次回作をとても楽しみにしていたのだが『いつか、無重力の宙で』が、30代の女性4人の話になると知って驚いた。

『高速を降りたら』も危篤の父親のベッドを取り囲んで喋る3姉妹の描写が上手かったため、男女どちらの側からでも書ける方だとは思うのだが、どういうアプローチになるのかは全く想像がつかない。だが、予想がつかないからこそ逆にとても楽しみである。

新人脚本家のオリジナル作品に注目が集まるテレビドラマ

動画配信サービスが増えた影響もあり、テレビドラマの本数は年々急増しているが、内容はどんどん画一化しており、企画の豊かさが失われつつある。

そんな中で明るい話題は、若手脚本家にオリジナルドラマを書かせる機運が高まっていることだ。フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した新人脚本家・生方美久が書いたオリジナルの連続ドラマ『silent』のヒット以降、その傾向は強まっているのだが、NHKは元々、若手脚本家に斬新な企画のオリジナルドラマを書かせることに力を注いできた。

「夜ドラ」のような新人脚本家を起用するドラマ枠が注目なのは、そこで頭角を表した脚本家が一気にブレイクするサクセスストーリーが見られるからだ。武田雄樹も『いつか、無重力の宙で』をきっかけに一気に名前が知られる存在となる可能性もゼロではない。

放送前から期待しすぎかもしれないが、題材やあらすじを見た時に、このドラマにはこれまでの作品とは違う何か新しいものがあると感じた。その期待を超える若さ溢れる作品になってほしいと願っている。


ライター:成馬零一

76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。