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【中谷美紀さんインタビュー】豊かに日々を重ねるには、まず「自分を知る」ことから

  • 2025.6.6

体の声に耳を傾けて

健やかな心と体を保ち、豊かに日々を重ねるには、まず「自分を知る」ことから。
情報にあふれたいまだからこそ、自身にとって必要なもの、不要なものを把握することが大切です。

中谷美紀さんもまた、自分にとっての最適解を見つけるため、体の声に耳を傾けてきました。

「自己流で取り入れたことが、間違っていたこともしばしば。ときには自分の体を実験台にしつつ、失敗を重ねながら、試行錯誤を繰り返してきました」
その結果、たどり着いた答えのひとつが、2010年から続けている糖質制限です。

「私の場合は糖質を取り過ぎてしまうと、体がだるくなったり、急激に眠くなったり……と体に出てしまうんです。糖質を控えてからは、大人のにきびもなくなりましたし、夏バテすることもありません」

糖質を制限するとともに、分子整合栄養医学の血液検査によってそのときの自分に不足している栄養素を知り、サプリメントで補うようにしているそう。

「ビタミンDを取ると元気が出て、アレルギー症状も軽減されるんです。睡眠の質を高めるのに役立っているのが、ビタミンB群とナイアシン。不思議と悪夢を見なくなって、熟睡できるようになりました。睡眠時間は、最低でも8時間。寝過ぎも良くないと言われますが、できることなら10時間は寝たいんです(笑)」

また、積極的に取り入れている食材のひとつが、ローストしていない生のナッツ。

「糖質を控えているとお腹が空くので、生のアーモンドやくるみ、松の実、マカダミアナッツを朝食代わりに。良質な油を取りたいので、食事のときは太白ごま油やオリーブオイルを仕上げにかけるようにしています。脳のエネルギー源になるMCTオイルも欠かせません」

栄養学にもとづいた食生活を心がけている中谷さんですが、オーストリアで暮らしているいまは、思うように食材が手に入らないことも。

おのずと、ストイックになりすぎない「おおらかさ」も身についたと話します。

「ヨーロッパの家庭を覗いてみて感じたのは、私たち日本人は真面目さゆえに、『完璧な食卓を整えなきゃ』と思い過ぎていたんだな、ということ。
夜はソーセージにチーズ、黒パンだけ、といった食卓を見ていると、がんばり過ぎなくていいのかな、と。ソーセージのような加工食品もかつては添加物を気にして一切口にしませんでしたが、出されたらおいしくいただこうと思うようになりました」

心の栄養を満たしてくれるのは、アート

一方、心の栄養を満たしてくれるのは、アートとの関わり。

最近ではオランダやパリ、ニューヨーク……と各地の美術館でゴッホの作品を鑑賞してきたという中谷さんですが、これはゴッホの死を題材にした原田マハさんの小説『リボルバー』の朗読へ挑む準備を兼ねてのこと。

「原作は地の文、台詞、モノローグ……と書き分けられていますし、人称も変化するので、当初はどう表現したらよいのか迷っていたんです。ゴッホの絵画を通じて、少しずつ作品の世界観を自分の中に蓄積していって、ようやく『いまならできるかも』という気持ちになれました」

いつかどこかで、点と点がつながり、血肉となる瞬間がくる

演じるにあたって、ヒントとなったのは意外にも「能」だそう。

「お能では面おもてをつけて男性が女性を演じますが、女性らしい声色を使ったり、しなを作ったりはせず、男性の声のままで謡うたいをうたい、仕舞いを舞う。私も無理はせず、自分の心が動かされるままに、役の心情に寄り添って演じました。ただ、ゴッホもゴーギャンも凄絶な人生を送っているので、どうしても言葉に詰まる瞬間があって。いったん冷静になってから読み直す場面もありました」

こうした声の仕事も俳優としての幅を広げることにつながるのでしょうか? と尋ねると、中谷さんからはこんな答えが。

「血肉となってくれればいいのですが、私たちの仕事は、なにかひとつ成し遂げたとしても、また新たな課題が提示されて、ゼロからのやり直しなんです。でもいつかどこかで、点と点がつながり、血肉となる瞬間が来るのかもしれませんね」

撮影/伊藤彰紀[aosora] スタイリング/犬走比佐乃 ヘアメイク/下田英里
ネイル/Michiko Kawamura[NAILHOUSE AKIKO] 文/工藤花衣

大人のおしゃれ手帖2025年7月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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