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【原田マハさん】スペシャルインタビュー「どんな状況でも"好き"を手放さないで」50年かけて今の私をつくっていった…と語る美術館体験にまつわるメッセージ

  • 2026.3.13

これまでアートの世界を題材にした小説を数多く生み出してきた原田マハさん。
最新作は、ひとりの少女が出会いに導かれ、小説家の道を歩んでいく物語です。
本作に託したメッセージを伺いました。

どんな状況でも〝好き〟を手放さないでほしい

日本の近代文学と西洋美術。

このふたつを軸に据えた『晴れの日の木馬たち』は、原田マハさん自身の記憶が、色濃く刻まれた長編小説です。
とりわけ、舞台のひとつである倉敷の大原美術館は、原田さんにとっては思い入れの深い場所だそう。

「10歳のとき、岡山に単身赴任していた父に大原美術館へ連れて行ってもらったのが、私にとって最初の美術館体験。そのときに感じた驚きと喜びがその後の50年をかけて今の私をつくっていった。今回は、その美術館に向けた〝親愛のメッセージ〟を送りたかったんです」

〝文学とアートの融合〟を目指した本作。その象徴として登場するのが武者小路実篤や志賀直哉らが創刊し、文芸誌でありながら西洋美術を積極的に紹介してきた「白樺」です。

本書では小説家を志す主人公・すてらの精神的な支えにもなっています。

「西洋では、美術評論がアートの価値を高める役割を担ってきました。それを、日本でも早くから実践してきたのが『白樺』。私は日本の文学者の一人として、そのことを誇らしく思っています。この物語を通じて、白樺派というムーブメントがどのように起こったのか、読者と一緒に読み解いていきたかった」

本作は同時に、すてらという少女の成長譚でもあります。

「一人の少女が、一冊の雑誌に支えられ、芸術の庇護者と巡り合い、小説の世界に羽ばたいていく。ラッキーすぎる設定ですが、当時ならあり得たかもしれません。実際、大原美術館の創設者・大原孫三郎は、アートや文学に限らず若くて有能な人を支援し続けた人でしたから」

書くことに対するすてらの情熱は、原田さん自身も抱いているもの。すてらは「私の化身みたいな存在」だと話します。

「小説を書くことには、喜びと苦しみの両方があります。決してスルスルとできることではない。それでも、生みの苦しみを経て作品を読者に届ける。それが私の人生の中心であり、一番好きなことでもあります。
その思いをすてらに投影しました。彼女は天才でもないし、環境にも恵まれていなかったけど、どんな状況でも書くことを手放さなかった。
創作の世界に限らず、どんなことであれ、好きなことを諦めずに続けてほしい。そのメッセージが読んだ方にも伝わればうれし
いです」

『晴れの日の木馬たち』 原田マハ ¥2,310(新潮社)

貧しい生活ながらも、父親の愛を一身に受けて育ったすてら。倉敷紡績で働く中、雑誌「白樺」に出会った彼女は小説家を志ざす。カバーは原田さんが大好きという写真家・ロベール・ドアノーの「シャン・ド・マルスの騎馬隊、1969年6月」。
今後はパリに舞台を移した第二部も予定。

執筆のお供

コルビュジエモデルのめがねが仕事の相棒

フランス・ジュラ地方の老舗アイウェアブランド「Lesca(レスカ)」のめがねを愛用。
「ル・コルビュジエが実際に使っていたデザインをもとに作られたもの。私はコルビュジエが大好きで、大学の卒論も彼の絵画論なんです」

私の好きなもの

2 年前に始めた茶道は「一生続けたい習いごと」

茶道の稽古で使う懐紙や扇子、ふくさなどをひとまとめに。
「お茶は決まり事が多いけど、自由な世の中だからこそ、その制約がむしろ心地よい。いずれは自分で茶会を開くのが目標。今日も、この後はお稽古なんです」

photograph: Asami Enomoto[BUNGEISHUNJU](portrait), Yumi Furuya[SORANE](still)
text: Miho Kawaguchi

大人のおしゃれ手帖2026年3月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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