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日本の女優第一号が暮らした、名古屋「文化のみち二葉館」で、大正ロマンに浸る

  • 2025.6.3

歴史的な建造物が多く残り、“文化のみち”と呼ばれている名古屋市内のエリア。この地域でもひときわ目を引く、オレンジ色の屋根の大きな建物が「文化のみち二葉館」です。こちらは、日本の女優第一号、川上貞奴が暮らした邸宅。館内にはステンドグラスや螺旋階段などを備えた華やかな空間が広がり、貞奴に関する貴重な資料の展示もあります。大正ロマンの香り漂う御屋敷をゆっくりと見学して、優雅な気分に浸ってみませんか。

日本の女優第一号が暮らした、名古屋「文化のみち二葉館」で、大正ロマンに浸る
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歴史的な遺産が多いエリアに移築復元

日本の女優第一号が暮らした、名古屋「文化のみち二葉館」で、大正ロマンに浸る
敷地内の緑が彩りを添える、瀟洒な外観

「文化のみち二葉館」があるのは、名古屋市内で“文化のみち”と呼ばれているエリア。名古屋城から尾張徳川家の邸宅だった徳川園に至る地域で、名古屋の近代化の歩みを伝える貴重な歴史遺産が多く残されています。
文化のみち二葉館は、“日本の女優第一号”として活躍した、川上貞奴が大正から昭和初期にかけて暮らした邸宅です。所有者が変わり、増改築が行われていましたが、後に名古屋市が建物の寄付を受けて、2005年に現在の場所へ移築復元。現在は、見学施設として公開されています。

女優であり、事業家でもあった川上貞奴

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貞奴の舞台の様子など、活躍を伝える当時の雑誌や新聞記事

文化のみち二葉館で暮らした川上貞奴とはどんな人物だったのか。簡単にご紹介しましょう。売れっ子の芸者だった貞奴は、役者で興行師でもある川上音二郎と結婚。音二郎が率いる川上一座のアメリカ公演で女優として舞台に立ち、海外でも評判になります。その後、1900年のパリ万博でも公演し、“マダム貞奴”として有名になりました。

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舞台衣装を飾っているショーケースにステンドグラスが映って、素敵なイメージに

音二郎の死後しばらくして女優を引退した後は、名古屋市内に「川上絹布株式会社」という会社を設立。文化のみち二葉館では、旧知の仲で事業パートナーでもある福沢桃介とともに生活していました。
貞奴の生涯については、文化のみち二葉館の展示で詳しく紹介されているので、そちらも参考にしながら、ドラマチックな人生をたどってみてくださいね。

政財界人や文化人が集ったサロン“二葉御殿”

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ステンドグラスや螺旋階段など見どころが多い、大広間

女優として成功した貞奴と、名古屋を拠点に発電所の建設に携わり、“電力王”といわれた福沢桃介。二人が暮らした屋敷は、約2000坪もの敷地と建物の豪華さ、当時最先端の設備などから、“二葉御殿”と称されていました。当時の人たちも仰ぎ見たオレンジ色の瓦が目を引く外観や、洋風の玄関に圧倒されながら、館内へ入ってみましょう。

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電力王の屋敷にふさわしく、電灯が点いていた二葉館。夜にはこのステンドグラスを通して外に灯りが漏れ、幻想的に映ったはず

1階の大広間に入ると、その優雅さに魅せられます。部屋の一面には大きなステンドグラス。「初夏」をテーマに、季節の草花や鳥などが描かれています。入口の横にも「踊り子」と題した、趣の異なるステンドグラスが飾られ、大広間を華やかに彩っています。半円形のソファがあるコーナーではきっと当時も、訪れたゲストがくつろいだはず。その正面の螺旋階段を降りてくる貞奴は、まさに舞台に登場する女優のように見えたことでしょう。政財界人や文化人など、屋敷を訪ねた特別なゲストを魅了する仕掛けが、そこかしこに感じられます。

女優としての活躍を伝える展示も

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左は、舞台衣装の打掛となぎなた。右は、パリ万博の際のポスター

大広間の隣は、貞奴の生涯や女優としての活躍を伝える資料が見られる展示室。唯一残っている舞台衣装や、パリ万博の舞台出演時に制作されたポスターのレプリカが印象的です。貞奴のことを伝えた当時の新聞記事や、貞奴の姿がわかるポストカードなど興味深い資料がいっぱい。ピカソが描いた貞奴の絵が掲載されたフランスの雑誌や、桃介に関する資料も展示されています。

和と洋の要素を併せ持つ建物

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和室2部屋と、2畳の小間が並ぶ展示室

文化のみち二葉館の特徴のひとつは、洋風と和風の空間を備えた和洋折衷。移築された部分と復元された部分があり、建物中央の和室は創建当初のままで、国の文化財として登録されています。
こちらには調度品や愛用品の実物やレプリカが置かれ、当時の暮らしを再現しています。華やかな洋室と比べると、趣のある品々に囲まれて落ち着ける空間。2人のことを思い浮かべながら、こだわりの品々をじっくりと眺めたくなります。

館内の随所で見られる、復元の技も見どころ

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モノクロの古い写真とデザイン画を基に復元された、ステンドグラス「踊り子」。ソファの布地は、オリジナルと思われる生地に近い色で復元して張り替え

復元部分も、できるだけ当時の材料や工法を使って、創建当初の姿を再現しています。館内の一部では、復元部分が公開されていたり、オリジナルと復元を見比べることができたりする場所も。違いを確かめたり、違いがわからないほど見事な復元の技を感じたり、貴重な建造物の復元という観点で見学してみるのも興味深いですね。

郷土ゆかりの文学資料も展示

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椅子が置かれている展示室もあるので、落ち着いて座って読むこともできる

建物の2階は、郷土ゆかりの文学資料の展示が中心です。近代文学の礎を築いた坪内逍遥や、直木賞作家の城山三郎、『ぼくらの七日間戦争』の著者、宗田理など、名古屋を中心とする郷土ゆかりの文学者や作品を資料やパネルで紹介しています。手に取って自由に閲覧できる資料もあるので、ゆっくりページをめくってみてはいかがでしょう。和室の方も、貸室として使われていない場合は見学できるので、覗いてみてくださいね。

文化のみちの拠点施設としての一面も

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2階の展示室にあるステンドグラスには、貞奴の好きなもみじがあしらわれている

和洋折衷の建築美や趣ある調度品、貞奴の生涯や活躍を伝える貴重な資料など、見どころが尽きない「文化のみち二葉館」。文化のみちの拠点施設として、同エリアの情報提供も行っています。なごや観光ルートバス「メーグル」のバス停が建物の前にあってアクセスしやすいですし、周辺を散策する際にはぜひ立ち寄ってみてくださいね。

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