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一度は訪れてみたい日本のアートスポット

  • 2026.3.11

モエレ沼公園 | 北海道

イサム・ノグチのプレイグラウンド
大地に直接作品を彫り込んだ《プレイマウンテン》(1990-96)。瀬戸内の犬島から運ばれた花崗岩を積み上げた石段は99段ある。 COURTESY OF MOERENUMA PARK

「公園全体をひとつの彫刻作品に」というコンセプトのもと、彫刻家イサム・ノグチが設計した札幌市の総合公園。山頂に続く5つのルートがあり、10分ほどで登れる公園最大の造形物である美しい三角形の《モエレ山》、芝生のマウンドからモニュメントを仰ぎ見る《テトラマウンド》、公園のランドスケープと一体化する建築物《ガラスのピラミッド“HIDAMARI”》など見どころが点在。広大な自然に包まれ、まるで彫刻の上を散策しているような気分に浸れる。

四季折々の景色を楽しめる広大な敷地を“プレイグラウンド”と捉え、彫刻作品にとどまらず、地形ごと造形したノグチ。ランドスケープアートの先駆けとなったモエレ沼公園は、2005年のオープン以来、多くの人々に愛されてきた。夏はモエレビーチで水遊び、冬はクロスカントリースキーやソリ遊びなどアクティビティも充実。心を開放し、ノグチの創造性に身をゆだねたい。

北海道札幌市東区モエレ沼公園1-1

養老天命反転地 | 岐阜県

当たり前を“反転”させ、新しい知覚と出合う
養老山麓に広がる養老公園内にある養老天命反転地。 PHOTOS: © 1997 REVERSIBLE DESTINY FOUNDATION

鮮やかな24色の外壁で構成された《養老天命反転地記念館》を入り口に、いくつかのパビリオンを通り抜けると、すり鉢状に設計された《楕円形のフィールド》が広がる。約1万8000平方メートルの敷地を誇るこのテーマパークは、美術家で建築家の荒川修作とマドリン・ギンズが構想し、実現させた美術作品。

水平や垂直の線を排除し、人工的な地平線を配するなど、人間の平衡感覚や遠近感を混乱させる仕かけが満載だ。岐阜県の形をした屋根と迷路のような回廊から成る《極限で似るものの家》は、パークのメインパビリオン。天井には1階部分を反転させた世界が広がる。

広大な《楕円形のフィールド》に足を踏み入れると、凹凸のある地面や148もの曲がりくねった回遊路が待ち受け、まっすぐ歩くことも難しい。バランスを取りながら前に進むことで、身体の未知なる可能性に気づく。不自由さえも高揚に変えてくれる、そんな場所かもしれない。

《養老天命反転地記念館》の内部もまるで迷路のよう。 PHOTOS: © 1997 REVERSIBLE DESTINY FOUNDATION

岐阜県養老郡養老町高林1298‐2

光の館 | 新潟県

「陰翳の美」を感じ、光の中で生活する
PHOTOS: HOUSE OF LIGHT
PHOTOS: HOUSE OF LIGHT

“美術作品の中に泊まる”。その先駆け的存在が、2000年につくられたジェームズ・タレルの《光の館》だ。第1回「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」に合わせて制作されたこの施設は、3組ほどの家族が泊まれる2階建ての建造物。光を操るアーティスト、タレルはここで自然光と人工光を融合させ、「陰翳の美」を体現した。

2階の部屋《アウトサイドイン》では、天窓から空の移ろいを眺めることができ、日の入りと日の出の時間帯にはライトプログラムも。ガラスなどの遮蔽物がない天窓からは、空そのものをダイレクトに感じられるのも大きな魅力だ。「室内の光として、私は水の光、浴槽の水の中の光を見下ろすようにしたいと思った」とタレルが語る浴室は、光ファイバーにより水中に光が満たされ、湯船に浸かることで光そのものに触れられる。光を知覚し、自己の内面と向き合う。一種の瞑想体験も得られるはずだ。

PHOTOS: HOUSE OF LIGHT

新潟県十日町市上野2891

Keijiban| 石川県

誰もが知る“掲示板”から、アートを発信
街角にひっそり存在する「Keijiban」。今年2月に行われたマーク・マンダースの展示風景。 PHOTOS: NIK VAN DER GIESEN / COURTESY OF KEIJIBAN AND THE ARTISTS (KEIJIBAN)

どこにでもある、なんの変哲もない街の掲示板。日本ならではの公共物に着目したベルギー出身のキュレーター、オリヴィエ・ミニョンが2021年に金沢の一角で始めたのがアートプロジェクト「Keijiban」だ。国籍は問わないが、海外を拠点とする作家に限定し、毎月1人のアーティストの作品を展示。そしてウェブサイトでは展示と関連したエディションを販売する。

「アートはもっと身近な存在であるべき。生活と地続きの場所で展示することに面白さを感じています。“本”よりも広義で、手頃な価格の“エディション”というコンセプトも、もっと広まってほしい」(ミニョン)。

22年には洋裁学校だった「秋霖館」に展示スペースをオープン。24年にはマンションの一室をリフォームし「Yonkai」も開いた。「同じ場所に押し入れがあったので『Oshiire』と名づけたプロジェクトも始めました。4スペースすべて会期終了まで展示風景の写真を公開しないことも、私のこだわりです」

「Yonkai」で発表された、千葉正也の展示「道について」。 PHOTOS: NIK VAN DER GIESEN / COURTESY OF KEIJIBAN AND THE ARTISTS (KEIJIBAN)

石川県金沢市高岡町18-13

フェンバーガー・ハウス| 長野県

作品を深く観察、Airbnbで新しい発見を
オーディオシステムと床座のクッションを備えた円形のスペースは、ヨガや瞑想、ワークショップに最適。 FUMIHIKO OKI, 2024

キュレーター、ロジャー・マクドナルドの個人美術館として2011年にオープンしたフェンバーガー・ハウス。「宇宙意識美術館」という名義で、彼の研究テーマ「神秘宗教学」に関連した展示を企画してきた。そして昨年より、3〜10月にオープンするAirbnbとしてリニューアル。長野県佐久市の森に建てられたログハウスにはドームが隣接。最大6人が泊まれるという家の各所には「宇宙意識美術館」時代に展示してきたエマ・クンツのポスターやハンナ・コリンズの写真や彫刻作品がキャプションつきで展示され、訪れた宿泊者は意図せずともアートと寝食をともにできる。

「私が提唱している“ディープルッキング(作品を深く観察する)”を自然と実践できる場所。最近館長になった『多津衛民芸館』もここから車で10分ほど。意外性のあるイベントを企画しており、10月25日には実験音楽の先駆者でもあるデヴィッド・トゥープのライブも行う予定です」(マクドナルド)

リビングスペースの壁にはエマ・クンツのポスターが。 FUMIHIKO OKI, 2024

長野県佐久市望月2179‐177

エス ハウス ミュージアム | 岡山県

同時代の作家とつくる私設ミュージアム
数年先には宿泊先としてリニューアルオープンする予定のS-HOUSE。 PHOTOS: MAYUMI HOSOKURA

岡山駅から車で30分ほど。閑静な住宅街に突如現れる「S-HOUSE Museum」は、ポリカーボネイトで覆われた真四角の建物。建築設計はSANAAが担当した。もともと個人宅だったこの場所を、私設美術館として作り替えたのはS-HOUSEの館長、花房香。臨床心理士として働くかたわら、コレクターとして美術と向き合い、岡山の奈義町現代美術館の設立にも携わった。そんな彼が目指したのは“Prospective(前方視的)”なミュージアム。

回廊には毛利悠子の《 子供部屋のための嬉遊曲 ししおどし》。 PHOTOS: MAYUMI HOSOKURA

「同時代を生きる10組の作家に依頼し、毎年、新作の制作を依頼し展示替えしています。それを10年続けていく。作家とともに“時代の先へ歩むこと”がテーマなのです」(花房)。光を透過する外壁に囲われた、同じく真四角の住居スペースにはいくつもの部屋が内包され、扉を開くと各作家の展示空間が目の前に広がる。彼の活動に共鳴した加藤泉やChim↑Pom、毛利悠子、目[mé]など、今を生きる作家の作品群が驚きとともに楽しめる場所だ。

目[mé]の活動の痕跡が集められた空間は、もともとベッドルームだった場所。 PHOTOS: MAYUMI HOSOKURA

岡山県岡山市南区浦安南町445-8

太宰府天満宮「境内美術館」 | 福岡県

境内の随所でアートに親しむ
ローレンス・ウィナー《ひとつの中心のその中心》(2020)。地面に配置されたテキストによる作品。 COURTESY OF TARO NASU© LAWRENCE WEINER, 2020. PHOTO BY MISAKO MISAKO

言わずとしれた福岡の名所「太宰府天満宮」の境内でアート体験ができることをご存じだろうか。文化・芸術の神様として崇められてきた御祭神、菅原道真公。道真公を慕って時代ごとに宝物が奉納されてきた歴史を継承し、「境内美術館」というコンセプトのもと、神社から広くアートを発信してきた。

森林の中に現れる彫刻作品は、田島美加の《エコー/ナルキッソス(太宰府)》(2022)。 COURTESY OF TARO NASU. © MIKA TAJIMA, 2021, 2022. PHOTO BY YASUSHI ICHIKAWA

2006 年より、国内外の現代アーティストを招聘し、太宰府での取材や滞在を経て制作された作品を境内のあちこちで公開。ライアン・ガンダーやローレンス・ウィナー、サイモン・フジワラ、ピエール・ユイグなどが手がけた計10点の作品が屋外に常設展示され、境内を歩く中でふいに作品と対峙できるのが楽しい。

現在、開催中のスーザン・フィリップスによる個展「Shine on Me」では、法螺貝の音が森に響く常設インスタレーションと、光と声が反射する空間芸術が展開される(2026年5月10日まで)。歴史を宿す場所で、自然と交差する作品に出合える。

ライアン・ガンダー《本当にキラキラするけれど何の意味もないもの》(2011)。 COURTESY OF TARO NASU© RYAN GANDER, 2011. PHOTO BY YASUSHI ICHIKAWA

福岡県太宰府市宰府4-7-1

神勝寺 禅と庭のミュージアム《洸庭》 | 広島県

石の海に浮かぶ、舟形のアートパビリオン
《洸庭》(2016)の外観。「神勝寺 禅と庭のミュージアム」には、滋賀県から移築した17世紀の堂宇や、復元された千利休の茶室も。庭園を散策しながら「禅」を感じたい。 PHOTO: NOBUTADA OMOTE | SANDWICH

錆石のランドスケープ上に浮かび上がる、木材で包み込まれた舟形の建物。広島県福山市に位置する「神勝寺 禅と庭のミュージアム」の敷地に突如現れるのは、彫刻家・名和晃平と、彼が率いるクリエイティブプラットフォーム「Sandwich」の設計によるアートパビリオン《洸庭》だ。

現代アートを通じた瞑想的な体験をコンセプトに、2016年に制作されたこの作品。長さ45メートルほどの舟形の建築物が石庭の上に浮かび、穏やかな景色に優雅な曲線を描く。名和が試みたのは「ワンマテリアル・ワンテクスチャ」の建築。伝統的な「こけら葺き」を応用し、約59万枚のサワラの板材で表面を覆ったという。石庭を進み、スロープを上がって入り口に進むと、物音がいっさいしない暗闇の世界に包まれる。その奥にあるのは、水と光を用いて「意識の海」を表したインスタレーション作品。外界と一線を画した環境の中で、波間に反射するかすかな光が、心を静寂へと誘ってくれるはずだ。

広島県福山市沼隈町上山南91

From Harper's BAZAAR art No.4

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