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“放送から25年”…今もカリスマ的人気を誇る平成のドラマ 当時だからこそできた“挑戦的なストーリー”

  • 2025.6.19
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(C)SANKEI

筆者は、NHK放送センターでの取材を終えて、時間に余裕がある時は、奥渋谷エリアの宇田川町にある「1/6計画」にしばしば立ち寄る。MEDICOM TOYの商品全般を取り扱うアンテナショップで、1997年にオープンした直営第1号店だ。MEDICOM TOY LIFEのブランドで、アパレルやポーチなども販売しており、筆者も愛用しているのだが、そこでずっと気になっているアイテムが、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(以下、『IWGP』)とのコラボ商品のフォトメッセージTシャツ。窪塚洋介が演じるタカシ、通称“キング”の名言をプリントした、インパクトのあるイカした1枚だ。

『IWGP』Netflixでの配信から2024年に再評価の波

『IWGP』が放送されたのは2000年。今からちょうど25年前の4月から6月にオンエアとなり、一大ブームを巻き起こした。主演の長瀬智也、脚本の宮藤官九郎、それぞれにとっての代表作となっている。Netflixでの配信から2024年に再評価の波が起きていたが、特に筆者のような30代、もしくは40代にとっては誰もが夢中で見ていた、思い出の一作。マコト(長瀬智也)の着信音「Born To Be Wild」は、みんなが真似していた。マヂカルラブリーの2人も過去に『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0(ZERO)』の中で、『IWGP』のトークをしていたことがあった。そこで話題になっていたのが、やはり窪塚である。

窪塚=キングのかっこよさは、セリフじゃなく、口調にある

窪塚が演じるキング然り、キングを演じる窪塚然り、このセットは筆者のような世代にはカリスマ的人気を誇っている。今で言うコンプライアンスを考えていない(であろう)、薬物、バイオレンスを思いっきり描いた平成ドラマの象徴とも言える『IWGP』の中で、キングだけは不思議なカリスマ性、時に愛らしさをも感じさせる。G-Boysを束ねる立場から池袋最強の強さと冷酷さを合わせ持つキングの最大の特徴は、その口調にある。

先述したTシャツにも選ばれている「悪いことすんなって言ってんじゃないの。ダサいことすんなって言ってんの、わかる?」はキングを代表する名言として有名だが、本当のかっこよさは落ち着き払った態度からこのセリフが放たれていることにあると筆者は感じている。マヂラブの2人もラジオの中で触れていたが、それまでのギャングのイメージは大声で相手をビビらすというのがほとんどだった。今でもそのイメージは強いかもしれないが、例えば「なり~」のような語尾を多用するキングの飄々とした“リーダー像”は、当時筆者のような視聴者にはカリスマに映った。今改めて見返してみると、何をしでかすか予想がつかない狂気性やマコトにスッと近づいていくある種の神々しさも感じさせる。2023年には「ホットペッパービューティー」のCMで窪塚がキングを再現しており、現在の窪塚もかっこいいのはもちろんなのだが、キングとしての神秘性までは表現しきれていないように思えてしまうのだ。

今では世界的役者となった渡辺謙をはじめ、まだブレイク前の山下智久や高橋一生、妻夫木聡、さらにモブキャラで小栗旬が出演していたりと、当時とはまた違った見方ができる『IWGP』。25年前の、あの時代だからこそ撮れた、奇跡のドラマだったのだと思う。


ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。