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モラハラ夫、事故で“別人”に変貌→“夫の育て直し”計画に奮闘する妻に共感の声『夫よ、死んでくれないか』

  • 2025.5.3

安達祐実が主演のテレビ東京 ドラマプレミア23『夫よ、死んでくれないか』は、主人公が夫へ「あんたなんか死ねばいいのに!」と吐き捨てる、衝撃の展開を巻き起こす異色作。失踪した夫に困惑しつつも、自由な生活を謳歌し始めた主人公・麻矢(安達祐実)だったが、思わぬかたちで「夫の存在」が再び重くのしかかる。キャリアと家庭の狭間で揺れる女性のリアルを、笑いと毒気を交えて描き出す意欲作だ。

SNSが熱狂!“弘毅劇場”というカオスな愛

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(C)SANKEI

ある意味で視聴者を虜にしているのが、麻矢の友人である加賀美璃子(相武紗季)とその夫・弘毅(高橋光臣)の関係性だ。愛が重すぎて、もはやホラーじみている弘毅は、璃子のスマホチェックはもちろん、仕事のメール内容まで監視する。暴言ではなく「こんなこと言っちゃだめだよ〜!」と、愛の名のもとにすべてをコントロールしようとするその姿は、SNS上で「今週の弘毅劇場も最高」と話題沸騰中である。

制作側もこの“モンスター夫”をあえてコミカルに描くことで、笑いと恐怖の絶妙な化学反応を生み出している。愛を言い訳に他者の尊厳を侵食していくその姿には、現代的な共依存のテーマが透けて見える。

高橋光臣の怪演ぶりが、視聴者に“身に覚えがあるけど、笑うしかない”と思わせるほど中毒性があるのもポイントだ。

人格が変わった夫に“育て直し”を仕掛ける妻

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(C)SANKEI

もうひとつ注目すべきは、同じく麻矢の友人の一人である榊友里香(磯山さやか)と、夫・哲也(塚本隆史)の関係だ。哲也はいわゆる典型的なモラハラ夫。常に上から目線で怒鳴り、妻を部下のように扱う日常。だが、ある日友里香は怒りのあまり哲也を突き飛ばし、彼は頭を打って倒れてしまう。

目を覚ました哲也は、まるで別人のように朴訥で、妻の友里香に優しく接する“新しい人格”になっていた。この展開は、まるでサスペンスとファンタジーが交差するかのような驚きの連続だ。

友里香は、これはチャンスだとばかりに、“夫の育て直し”を決意する。これまでの屈辱を忘れず、今度こそ「理想の夫」に育て上げようと奮闘する姿は、観る者の倫理観を試すようでもあり、同時に深い共感も呼んでいるようだ。DVやモラハラという繊細なテーマを、ブラックコメディとして昇華させる脚本のバランス感覚は見事としか言いようがない。

夫婦とは、何か

『夫よ、死んでくれないか』は決して“夫を殺したい妻たち”の暴走劇ではない。むしろ、いびつな形で始まったこの物語は、それぞれの女性が「自分を取り戻す」ための旅でもある。

“夫という存在”に支配され、否応なく合わせてきた人生。それが一度リセットされたとき、彼女たちはやっと自分自身と向き合える。

安達祐実、相武紗季、磯山さやかという三者三様のヒロインたちが、それぞれの地獄に身を置きながらも、少しずつ自分の足で未来を歩こうとする姿は、コメディのなかにも確かなリアルを孕んでいる。

このドラマは、単なる“夫いじり”ドラマでは終わらない。そこにあるのは「夫婦って、そもそも何なのか?」という問いであり「自分はどう生きたいのか?」という人生の根幹に関わるテーマだ。

シュールな設定、爆笑必至の“弘毅劇場”、そして奇妙なヒューマン再生ドラマまで、振れ幅の大きさも魅力のひとつ。深夜枠の大胆な挑戦としても、今期もっとも見逃せない一本であると言える。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_