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冬季うつの原因は?頑張りすぎを示す5つのサインと受診の目安を精神科医が解説

  • 2026.10.27

セルフケアを続けても調子が戻らないとき、気づかないうちに心身に無理が重なっていることがあります。
精神科医・心療内科医・臨床心理士の飯島慶郎先生によると、頑張りすぎによる疲れは気分よりも先に「眠りや食欲、休日の過ごし方の変化」として表れるといいます。
本記事では、見逃したくないうつのサインや季節性感情障害(冬季うつ)の特徴をはじめ、医療機関を受診する具体的な目安、身近な人が不調なときの正しい関わり方を解説します。

この記事のポイント
・「頑張りすぎ」を示す5つのサイン:早朝覚醒、休日の外出減少、趣味が楽しめなくなる、炭水化物や甘いものの過剰摂取、強い日中の眠気に注意。
・季節性感情障害(冬季うつ)とは:毎年秋から冬にかけてうつ状態になり、春に回復するタイプ。過眠や過食傾向が特徴。
・受診の目安と身近な人の支え方:不調が2週間以上続く場合や「消えてしまいたい」と感じたときの相談先と、「頑張って」と言わない関わり方のポイント。

気づかないうちに無理をしていませんか?「頑張りすぎ」を示す5つのサイン

工夫を続けても調子が戻らないときは、気づかないうちに無理を重ねていることがあります。
無理が続くと、疲れは気分より先に、眠りや食欲、休日の過ごし方の変化として表れます。
注意したい変化を五つ挙げます。
どれも単独では多くの人に起こるものなので、以前と比べてはっきり違うときや、いくつか重なって続くときに目を向けてください。

1)朝早く目が覚める
2)外に出なくなる
3)楽しめていたことをやめてしまう変化

一つ目は、以前より朝早く目が覚めてそのあと眠れない日が続くことです。
目覚ましや家族の用事と関係なく早く目が覚めるときは、眠りが浅くなっているかもしれません。
二つ目は、休日に外へ出なくなることです。
外出が減るほど、光を浴びる時間もさらに減ります。
三つ目は、以前は楽しめていたことをしなくなることです。
趣味の道具を出さなくなった、連絡を返すのが遅くなったといった形で表れます。

4)甘いものや炭水化物の急増
5)強い日中の眠気(女性特有の周期や更年期の影響も)

四つ目は、甘いものや炭水化物が以前より増えていることです。
秋から冬の落ち込みは、食欲が増える方向に出ることがあります。
五つ目は、日中の眠気が強くて仕事や家事がはかどらないことです。
ただし、夜中の授乳や介護で眠りが途切れている場合は、その負担だけで眠くなることもあります。
このように、うつのサインは「眠れない・食べられない」だけではありません。
また、女性は月経前にこれらの変化が強まることがあるので、毎月の周期と重ねて見ると気づきやすくなります。
40代後半からは更年期の変化が重なることもあり、その場合は婦人科での相談も選択肢になります。

毎年秋~冬にしんどくなる「季節性感情障害(冬季うつ)」と受診のタイミング

ここまでは、誰にでも起こりうる秋の不調とその対処を見てきました。
ただし、季節による変わり方の大きさは人によって違います。

日照時間が関わる「季節性感情障害」の特徴(眠りすぎ・食べすぎ)
フィンランドの住民調査では、眠る時間・食欲・気分などが季節によって大きく変わる人ほど、うつ症状を抱えている人が多い傾向がありました。
このうち、うつ病の状態が毎年同じ季節に始まり季節が変わると回復する場合は、「季節性感情障害」という病気として診断されることがあります。
冬季うつ病とも呼ばれる、うつ病の一つのタイプです。
多くは秋から冬にかけて仕事や家事に支障が出るほどのうつ状態になり、春になると回復します。
一般的なうつ病とは逆に、眠りすぎたり、炭水化物を多く食べたりするのが特徴です。
日本では、質問票を使った調査で働く人の0.5%前後がこの病気に当てはまりました。
2025年に発表されたオンライン調査では、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がない人でも50人に1人(2%程度)にあたり、傾向がある人では8.5%とさらに多くなっていました。
決して一部の人だけの特別な病気とはいえないことがうかがえます。
世界全体に目を向けると、季節性感情障害に当てはまる人は約5%にのぼり、緯度が高い地域ほど多くなります。
日本の数字が世界より低いのは、冬の日照が北欧ほど短くならないことが一因と考えられます。
実際、英国や北欧に住む日本人は冬に気分が落ち込みやすくなっていましたが、日本に住む日本人では夏と冬で差がありませんでした。
暮らす土地の日照の長さが、季節による気分の変化を左右していることがうかがえます。
国内でも、日照の少ない地域ほど季節性感情障害の割合が高く、日照時間が長い県ほど自殺率が低いという報告があります。
これは地域全体の傾向で、そこに住む一人ひとりの危険を示すものではありませんが、日照と心の関わりを裏づける結果の一つです。

一人で抱え込まずに相談したい「受診の目安」と電話相談窓口
季節性のうつ病に限らず、秋は心の不調で受診する人が増える時期でもあります。
滋賀県の大学病院の救急外来を1年間調べた研究では、精神的な不調による受診は6〜7月と9〜10月に多く、平均気温が高い月ほど受診者数が増える傾向がみられました。
研究者は、季節の変わり目に不調が増えるという臨床家の実感と一致すると述べています。
季節による気分や体調の変わり方が生活に支障が出るほど大きいときは、一人で抱え込まずに相談してください。
次の目安に当てはまるときは、一人で様子を見る段階を過ぎています。
・気分の落ち込みや意欲の低下が2週間以上続いている
・眠れない、または眠りすぎる状態が続き、生活に支障が出ている
・仕事や家事など、これまでできていたことができなくなっている
・検査で異常のない頭痛や腹痛が続き、気分の落ち込みや疲れも重なっている
・「消えてしまいたい」という考えが浮かぶ
最後の一つは、期間にかかわらず早めに受診してください。
すぐに受診できないときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、24時間つながるよりそいホットライン(0120-279-338)に電話で相談できます。
相談先は心療内科や精神科のほか、精神保健福祉センターや市町村の保健センターがあります。
勤め先の産業医や、かかりつけの内科・婦人科に相談する方法もあります。
受診の前に、変化に気づいた時期と仕事や家事への影響をメモしておくと伝えやすくなります。
実際の診察では、甲状腺の病気や貧血など、似た症状を起こす体の病気がないかを血液検査で確かめることもあります。
受診は、原因を切り分けて必要な対応を決める機会と考えてください。

家族や友人の不調に気づいたとき、周囲はどう関わるべきか

身近な人の様子が変わったと感じたら、あなたならどうしますか?
どう対応すればいいかわからず、違和感を覚えながらもやり過ごしてしまったという経験がある方もいるかもしれません。

「励まし」は逆効果?具体的な見えている変化を伝えて一緒に第一歩を提案する
「最近朝がつらそうだね」「休みの日に出かけなくなったね」のように、見えている変化をそのまま伝えてください。
「どうしたの」「大丈夫?」と聞くだけでは、「大丈夫」と返されて会話が終わりがちです。
「頑張って」「気の持ちよう」といった言葉は避けてください。
不調は頑張りが足りないせいではないからです。
代わりに「一緒に病院に行こうか」「予約だけ取っておこうか」と、行動を一つ提案してください。
「消えてしまいたい」と口にしたときの正しい受け止め方とサポート体制
本人が「消えてしまいたい」と口にしたときは、話をそらさずに受け止め、その日のうちに受診か相談窓口につないでください。
話を聞くときは解決策を急がず、途中で遮らずに最後まで聞きます。
聞いてもらえたという経験が、受診や相談に進むきっかけになります。
支える側が抱え込むと、共倒れになりかねません。本人の同意が得られるなら、かかりつけ医や産業医、保健センターなど第三者を早めに頼ってください。

まとめ:一人で耐えず、専門医や周りのサポートを頼って健やかな冬へ

秋から冬にかけての不調は、決して本人の甘えや弱さのせいではありません。
日照の減少、生活リズムのずれ、夏の疲れという理由があります。
それを知っていれば、自分を責める必要はありません。
朝の光と睡眠のリズムを整えることが、季節の変化に体を合わせる助けになります。
そのうえで2週間以上続くときや、生活に支障が出ているときは、医療の助けを借りてください。
「消えてしまいたい」と感じるときは、期間を待たずに相談してください。
一人で耐える季節にしないでください。

参考文献:
1.Imai M, et al. Cross-regional survey of seasonal affective disorders in adults and high-school students in Japan. J Affect Disord. 2003;77:127-133.
2.Jo Y, et al. Seasonal changes in mood and behaviors in individuals with attention-deficit/hyperactivity disorder trait. J Psychiatr Res. 2025;182:462-468.
3.Kim K, et al. Global prevalence of seasonal affective disorder by latitude: A systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2025;390:119807.
4.Kurata Y, et al. Seasonality in mood and behaviours of Japanese residents in high-latitude regions: transnational cross-sectional study. Biopsychosoc Med. 2016;10:33.
5.大槻秀樹ほか. 救急受診患者における精神科疾患患者数の季節性-滋賀医科大学の場合-. 日本救急医学会雑誌. 2009;20:763-771.
6.Grimaldi S, et al. Seasonal vegetative and affective symptoms in the Finnish general population: testing the dual vulnerability and latitude effect hypotheses. Nord J Psychiatry. 2009;63:397-404.
7.寺尾岳. もっと光を! 九州神経精神医学. 2014;60:143-147.

[執筆者]


飯島慶郎先生
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長

心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。
得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。
心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。
近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

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