1. トップ
  2. エンタメ
  3. 長谷川奈央×田村亮×芦川よしみ、映画『影を売る女』で考えた“本当の幸せ”「いまあるものを大切に」

長谷川奈央×田村亮×芦川よしみ、映画『影を売る女』で考えた“本当の幸せ”「いまあるものを大切に」

  • 2026.10.13

「もし、影を売れば億万長者になれるとしたら?」。そんな不思議な問いかけから始まる映画『影を売る女』(10月16日公開)は、主人公の河合夕子を通して “本当に大切なもの”を見つめる物語。夕子を演じた長谷川奈央は、単独主演のプレッシャーを乗り越え、等身大の焦りや不安、数奇な運命を辿るキャラクターの心の変化を鮮やかに演じた。そして夕子の転機に現れる重要なキャラクターを演じるのは、田村亮と芦川よしみ。長谷川は、2人の温かさに包まれながら撮影に臨んだという。本作を通して感じた“幸せ”。俳優として大切にしていることについて、3人が語り合った。

【写真を見る】笑顔で手を振る長谷川奈央、田村亮、芦川よしみ。和やかな雰囲気の3人の撮り下ろし写真をお届け!

「皆さんと撮影できる喜びや感謝を忘れないように」(長谷川)

願いが叶うことと引き換えに“影”を売ってしまう女性の姿を追う『影を売る女』 [c]2026 IRH Press
願いが叶うことと引き換えに“影”を売ってしまう女性の姿を追う『影を売る女』 [c]2026 IRH Press

都内の広告代理店に勤める河合夕子(長谷川奈央)は、恋人もいなければ貯金もなく、出世も見込めない平凡な女性。未来が開けない現実に小さな焦りを感じつつも、お金持ちでイケメンな男性との結婚を夢見ながら日々を送っていた。もうすぐ28歳を迎えるというある日。怪しげな黒マントの男から「影を売ってくれたら、億万長者にしてあげます」と声をかけられた夕子。夕子は男の誘いを深く考えずに承諾し、自身の影を売ってしまう。すると不思議な幸運が次々と舞い込み始める。有頂天になっていく夕子は、果たして本当の幸福をつかむことができるのか?

――影を売る女・夕子を通して、本当の幸せとはなんなのかを問いかける本作。脚本を読んだ感想を教えてください。

長谷川奈央(以下、長谷川)「コメディ要素も多く、純粋に“次の展開が気になる!”と楽しみながら読み、これはおもしろい作品になるぞと感じました。後半では、夕子の価値観を揺るがす展開が描かれていたので、演じるうえでも苦しいな、胸が痛いなと。そうやって自分事として脚本を読んでいました。同時に私が演じる河合夕子は、最初から最後まで出ずっぱりの役なのだと驚いて。夕子はいろいろな表情を見せていく役どころでもあるので、“これは表情の勝負になる、大変だぞ”と感じました。たくさん表情の研究をして、撮影に臨みました」

映画単独初主演を果たした長谷川奈央 [c]2026 IRH Press
映画単独初主演を果たした長谷川奈央 [c]2026 IRH Press

――『美しき誘惑-現代の「画皮」-』(21)で市原綾真さんとダブル主演を果たした際には、「プレッシャーもあった」とお話されていました。単独主演となった今回は、いかがでしたか?

長谷川「前回はダブル主演だったので、気持ちを分け合えることが救いになっていました。市原さんも同じように緊張しながら頑張っているんだと思うことができたんですが、今回は単独主演ということで、前回より大きなプレッシャーを感じていました。実はクランクイン直前まで、恐怖に押しつぶされそうになって泣いたりしてしまっていたんです。でも赤羽(博)監督をはじめ、すばらしいスタッフの皆さん、キャストの皆さんと一緒に作品に取り組めるなんて、こんなに幸せなことはない。これから始まる1か月の撮影では、皆さんと撮影できる喜びや感謝を忘れないようにしようと、そちらの気持ちへ切り替えることで前を向くことができました」

田村亮が演じるのは、夕子が路上で出会った占い師 [c]2026 IRH Press
田村亮が演じるのは、夕子が路上で出会った占い師 [c]2026 IRH Press

――田村さんと芦川さんは、夕子の転機に現れる役柄を演じました。脚本を読んだ感想や、ぜひやってみたいと思われた理由を教えてください。

田村亮(以下、田村)「僕の俳優としてのキャリアは、映画からスタートしたんですね。右も左もわからないところから、映画の世界に入ったんです。だから映画の話をいただくと、すごくうれしくて。どんな役でもやりたいなと思うんです。映画デビューは19歳のころ。当時は、ワンカットを撮ったら、次のカットまでライティングを調整したり、カメラの位置を変えたりと、すごく時間がかかったものなんです。いまは撮り方もだいぶ変わりましたが、そうやってみんなで一緒につくり上げる映画の現場に行けることは、僕にとってとてもうれしいことです」

芦川よしみ(以下、芦川)「私も(長谷川)奈央と同じように、“おもしろい”と思いながら脚本を一気に読んでしまいました。主人公が不思議な扉を開けてしまった…この人はどうなるんだろう!って。読んでいるうちに、自分もその扉の向こうに入り込んでしまっているような気持ちになっていました。すごく先が楽しみになるお話でしたね。影を売ってから夕子の影が映らなくなる表現など、映像になったらどうなるんだろうという楽しみもありました」

「“幸せ”というのは人それぞれのものだなと思っています」(田村)

怪しげな黒マントの男が夕子に声をかける [c]2026 IRH Press
怪しげな黒マントの男が夕子に声をかける [c]2026 IRH Press

――現実に焦りを感じていた彼女は、謎の男から「影を売ってくれたら、億万長者にしてあげます」と持ちかけられ、その誘いに乗ってしまいます。夕子が抱える不安や焦り、そして望みに共感できる部分はありましたか?

長谷川「初めて脚本を読んだ時も“自分を見ているみたいだな”と感じるくらい、ものすごく共感しました。私自身、25歳になった瞬間、“アラサーになったんだ”と焦りを感じた経験があったんです。街で親子連れの方を見て“いいな”と思ったり、女性としての焦りみたいなものが急に出てきてしまって。それは自分でも不思議でした。また夕子は“こうなったらいいな…”と夢見がちなところのある女性ですが、そういうところも自分と似ていて。私自身、なかなか行動に移せなかったり、周りに流されてしまう時もあるので、“私も、影を売ってしまうかも”と夕子に共感すると同時に、彼女を通して自分がほしいもの、自分の幸せについて考える機会にもなりました」

とある事件をきっかけに夕子と交流を深める女性を、芦川よしみが演じる [c]2026 IRH Press
とある事件をきっかけに夕子と交流を深める女性を、芦川よしみが演じる [c]2026 IRH Press

芦川「私たちはライトに当たるお仕事なので、影がないとなったら大変(笑)!」

長谷川「たしかに!(笑)」

芦川「そういうことを抜きにして、一人の女性として考えてみるとどうでしょうか。謎の男は、“1年間、自己実現はなんでも叶えます”と語りかけてきますよね。私はもう年齢を重ねているので、いまは大きな夢や希望を持ったり、自己実現をしたいという想いも薄れていますが、20代のころだったら、謎の男の誘いに心を動かされてしまっていたかもしれません。でも影がないことでビクビクして生きなければいけなかったり、職場や友人にも隠し事をするのだと思うと、それが本当に自分の幸せなのかなと思ってしまいます。1年って結構、長いですし!初めはそそられるけれど、本当の幸せについてよく考えてみると、影を売ることは無理なのかなと思ったりしました」

――影を売って望みが叶うとなると、夕子はどんどん欲深くなっていきました。その姿を見ても、本当の幸せについて考えさせられます。

田村「僕にとって、主人公にとって、そしてあなたにとって、“幸せとはなんぞや”ということなんだよね。“幸せ”というのはとてもいい言葉だけれど、欲張りすぎると、とんでもないことになってしまうものでもある。そう考えると、“幸せ”というのは人それぞれのものだなと思っています」

「長谷川奈央は、“謙虚なカメレオン女優”」(芦川)

【写真を見る】笑顔で手を振る長谷川奈央、田村亮、芦川よしみ。和やかな雰囲気の3人の撮り下ろし写真をお届け!
【写真を見る】笑顔で手を振る長谷川奈央、田村亮、芦川よしみ。和やかな雰囲気の3人の撮り下ろし写真をお届け!

――夕子に大切な言葉を投げかける役を田村さんと芦川さんが演じると聞いた時、どのように感じましたか?

長谷川「興奮しましたし、大喜びしました!撮影が楽しみで仕方なかったですし、こんな光栄なことはありません。田村さんとは以前、『世界から希望が消えたなら。』という作品でご一緒して。お医者さんと看護師役として共演させていただいたんですが、本物のお医者さんにしか見えないんです!本当にすばらしくて、大尊敬する俳優さんです。今回も田村さんの存在感に引き込まれましたし、撮影の合間に佇んでいらっしゃるだけでもステキで。赤羽監督と2人で『カッコいいですね』とお話していたんですが、監督は『俺もあんなふうに歳を重ねたい』とおっしゃっていました。役として対峙した時にも、田村さんからやさしく、温かい笑顔を向けていただいたことで、心がほどけていくような感覚がありました。ありがたく、貴重な経験をさせていただきました」

田村「彼女は、お芝居に変な癖がついていないところがすごくいいんです。女優でも男優でも、俳優を始めてから2、3年経ってくると、いろいろな芝居を目にして、人の真似をしてしまうことがある。長谷川さんにはそういったところが感じられず、5年先、10年先も楽しみだなと思いました」

長谷川奈央が等身大の焦りや不安、数奇な運命を辿るキャラクターの心の変化を鮮やかに演じる [c]2026 IRH Press
長谷川奈央が等身大の焦りや不安、数奇な運命を辿るキャラクターの心の変化を鮮やかに演じる [c]2026 IRH Press

長谷川「うれしいです…。ありがとうございます!そして芦川さんとは、何本も同じ作品に出演させていただいているんですが、現場でお会いしたことがなかったんです」

芦川「そうなんです!同じ作品に何本も出ているのにね。初めて演技でご一緒することができて」

長谷川「やっと叶いました!それがうれしくて、うれしくて。お芝居もすばらしくて、感激しました」

芦川「私もすごくうれしかったです。楽しかったね」

長谷川「芦川さんはいらっしゃるだけで、パーッと周りを照らすような力を持っていらっしゃるんです。メイクをしている時からいつも楽しいお話をしてくださって、たくさん笑わせていただきました。お芝居でご一緒するとどうなんだろうと緊張していたんですが、いつもと変わらないフランクな芦川さんそのままでいてくださったので、本当にありがたかったです」

芦川「ずいぶん前ですが、本人にも『奈央ってすごく不思議だね。いろいろな役に見える』と言ったことがあるんです。個性がないわけではないのに、学校の先生、女医さん、OLさんなど、いろいろな役を演じる姿が見えてくる。それでいて、性格は謙虚。私は、“謙虚なカメレオン女優”だと思っています。自然とその役に気持ちを乗せることができるし、どんな役も似合う女優さんですよね。『美しき誘惑-現代の「画皮」-』で悪女を演じる時には、“奈央がこの役をやるの!?大丈夫かな”とドキドキしていたんです。でもそれも見事に演じられていて、『頑張ったね、偉かったね』と伝えました」

長谷川「芦川さんは、いつもそうやって励ましてくださるんです。最高の褒め言葉をいただいて、本当にありがとうございます!」

「いま自分に与えられているものを、改めて大切にしていこう」(長谷川)

――芦川さんと田村さんは、役者業を長く続けていくうえで大事にしていることはありますか?

田村「僕はもともと、俳優を目指してはいなかったんです。中学、高校時代からオファーはあったらしいんだけれど、母が『高廣、そして正和も出ているし、これ以上もう息子を世間にさらしたくない』と断り続けていたらしいんです。その話は、あとから聞いたんだけどね。ある時、親父と『無法松の一生』を一緒にやった稲垣浩監督という巨匠が、101本記念の映画(『暴れ豪右衛門』)を撮るということで。三船敏郎さんの弟役として、僕にお声がかかったんです」

――それが先ほどお話されていた、映画デビュー当時の出来事なのですね。

田村「そのころの僕は商社マンになりたくて、経済や英語を一生懸命に勉強していて。だけど稲垣先生だから、むげには断れない(苦笑)。そんなふうにして、映画に出演しました。必死に勉強をして大学を卒業してから、俳優養成所に入りました。そこでアルバイト気分では、この世界でやってはいけないなと。みんなと一緒にスタートラインに立って『あ、え、い、う、え、お…』と発声練習から始めて、そうやって必死にやっていけば、周りから文句を言われることもないだろうと思ったんです。そういったなかでも、やっぱりお声をかけていただくのがうれしくて、ここまで来たのかなと感じています」

芦川「私も子役のころからこのお仕事を始めましたが、そのなかで一番気をつけているのは健康です。特に舞台は、スケジュールを組み直してもらうことのできないお仕事。歳を重ねていくごとにスタミナや集中力は落ちてきますし、だからこそ体を休めることが大切になります。地方で舞台公演があったり、撮影があったりしても、夜に飲みに行ったり遊びに行ったりはせず、ホテルで食事をしたりと、お芝居に集中できるように体力を温存するようにしています」

影をなくした夕子には不思議な幸運が次々と舞い込んでくる [c]2026 IRH Press
影をなくした夕子には不思議な幸運が次々と舞い込んでくる [c]2026 IRH Press

――長谷川さんは、出演作を重ねるごとに俳優業の醍醐味についてさらに実感していることはありますか。

長谷川「今回のように大先輩の方々とご一緒させていただけると、“続けていてよかった”と実感します。一方でいまは、俳優というお仕事の難しさをより感じるようになっています。始めたころのほうが、怖いもの知らずだったかもしれません。続けていくと、お芝居は嘘をつけない、ごまかせないものなんだということに気づけるようになって。難しいけれど、そこが醍醐味なのかなと思っています。また今回のように主演を任せていただくと、“作品を守っていかなければ”という責任感も必要だなと感じています」

『影を売る女』が放つメッセージについて語り合った
『影を売る女』が放つメッセージについて語り合った

――本作を通して、どんなことを感じてもらえたらうれしいですか?

長谷川「今回は影を失ったことの代償が描かれていますが、これは別のものにも置き換えられると感じています。人生において、お金や自分の利益のためになにかを犠牲にしてしまうことって、結構あるなと思うんです。時間が経ってから気づくこともたくさんあるからこそ、なにかを失う前に、いまあるものに“ありがとう”と感謝できる人間でありたいなと思うようになりました。それは、映画を撮り終えてからずっと意識していることです。本作を観ていただく皆さんにも、いま自分に与えられているものを、改めて大切にしていこうと思ってもらえたらうれしいです。なにか大きなことが起きるわけではなくても、観終わったあとに心が少しすっきりして、身近なものを大切にしようと思える。そんな想いにさせてくれる映画だと思っています」

田村「幸せを、人からもらってはいけないということですね。幸せを自分で作りなさい、見つけなさい、探しなさい。頑張れ、頑張れ、頑張れ」

芦川「本当におっしゃるとおり、幸せは誰かからもらうものではないですね。人間って欲深いし、嫉妬心もあるし、悪いことを考えたりしてしまう時もあるけれど、本作を通して自分の過去を振り返り、“あの時、こんなことをしてしまったな”、“あれはいけないことだったな”と認識するだけでも、明日が変わってくるものだと思うんです。過去の自分を反省して、切り替えて、幸せの方に向かっていくことで、新たな道が開けるんじゃないか。そんなふうに感じさせてくれる映画だと思っています。また、夕子は失敗をしていろいろなことに気づいていきますよね。私が演じた大伴さんも劇中で言っていましたが、失敗することって、とても大事なことだと思うんです。失敗をしていないということは、挑戦をしていないということ。私は舞台で大失敗をしたことがあって、その時はとことん落ち込みました。でもいまになって思えば、それがのちの財産になっています」

取材・文/成田おり枝

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ