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新解釈で伝統をアップデートした韓国料理「李朝膳」【おいしい店みっけ!】

  • 2026.9.30
Jun Hasegawa

ユニークなコンセプトととびっきりおいしい料理を提供しているお店が続々と誕生している東京グルメシーン。その“今”をフードジャーナリストの佐々木ケイさんと高山裕美子さんが独自の視点で紹介する連載「おいしい店みっけ!」。

個性派物件を自分のセンスでおしゃれにリノベしたお店に続き、今回ふたりが注目したのはモダンに進化した韓国料理。祐天寺にオープンした「李朝膳」で味わえる料理とは?

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Photo : JUN HASEGAWA Editor : SATOKO UDA

Jun Hasegawa

期待の新店登場!

自他ともに認める無類の韓国料理好きだが(特にスープや鍋、麺類)、王道の焼肉屋か本格派のガチ韓国料理、あるいはバズり狙いの一過性なトレンド店はあるのに、どうしておしゃれな雰囲気で日常使いできる韓国料理店が東京には少ないのだろうと、もどかしさを感じていた。こんなにも韓流ドラマが流行っているし、本場韓国や世界の大都市でもモダンな韓国料理店は増加傾向にあるのに!

そんなフラストレーションを解消してくれそうな期待の新店が、祐天寺の住宅街にオープンした「李朝膳(りちょうぜん)」だ。

Jun Hasegawa

中国の茶房を思わせる空間と、自家製ヤンニョムの滋味

扉を開けるとそこに広がっていたのは中国の茶房を思わせる、シンプルでいて静かな空間。

最初に運ばれてきたのは、お通しのチャンジャだ。チャンジャに使われている自家製ヤンニョムは保存料やうま味調味料を使わず、ベストな味わいのバランスを模索したという濁りのないきれいなコクが印象的。

続いて登場した「ナムル盛り合わせ」(写真下¥1,200)は、もやしやほうれん草、ぜんまいといったお馴染みのスタメンに加え、歯ごたえが新鮮なつるむらさきの茎を合わせる意外性も。さらに前述のヤンニョンが使われた清々しい「ラディッシュのキムチ」(¥900)と、どれも丁寧な仕事を感じさせ、これから出てくる料理への期待値が上がる。

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人生の節目に寄り添う、温かなわかめスープの記憶

「李朝膳」は、韓国人の両親をもつ石山秀一さん(写真右)とアパレル業時代の同僚だった近藤昌平さん(写真左)、料理人の北山和美さん(写真中央)の「いつか一緒にお店をやろう」という夢が結実した一軒だ。コンセプトは、石山さんが幼い頃から日常的に食べてきた「心と体に染みる韓国料理」をベースに、現代的な感性でアレンジしたメニュー。しかし、最初のアイデアは「わかめスープ」を専門に出す朝食の店だったという。

「家に帰って朝ごはんでわかめスープが出たら、父が『今日は誰の誕生日だ?』と聞くくらい、韓国では誕生日に絶対に食べるんです」と石山さん。

韓国におけるわかめスープは、単なる汁物の枠を超え、人生の節目や日常の温もりに深く根ざした特別な料理だ。出産直後の母親が体調回復のために毎日食べる伝統があり、その感謝を込めて「生んでくれた母の苦労を忘れないように」と誕生日に食べる習慣が定着したのだそう。そうした思い出と石山さんのルーツが詰まったわかめスープは、現在の「李朝膳」でも看板メニューとして愛されている。

ちなみに韓国の一般的なわかめスープは牛バラやもも肉でだしをとるが、「李朝膳」では、韓国で使われている専用の大鍋でじっくり煮込んだ牛骨とテールのスープがベース。そこに石山さんが生まれ育った大分県・国東半島産の天然わかめを合わせることで、力強いだしのうま味に負けない、豊かな磯の香りを引き出している。

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母から伝授された家庭の味と、軽やかな現代的アプローチ

料理を担当する北山さんは、店をオープンするにあたり、大分の石山さんの実家に数日間居候して、石山さんのお母様から家庭料理の作り方を伝授。「お母さんの料理って、本当にシンプルなんですよね。でも、素材の味とかだしのうま味がすごくしっかり引き出されていて、一口食べた時に『あ、すごくやさしいな、毎日食べられる味だな』って感動したんです。あの手料理の感覚、素朴だけど芯のあるおいしさを、この店でもちゃんと形にしたいと強く思いました」と北山シェフ。

和食やイタリアン、フードコーディネーターとしてのキャリアを持つ北山さんは、そういった“お母さんの味”を保ちつつ、食材の組み合わせの新しい提案や、ちょっとしたアレンジを加えている。

例えば、「李朝膳サラダ エゴマのジェノベーゼ添え」(¥1,500)は、ごま油ベースのドレッシングを和えた韓国のシンプルな葉物のサラダに、エゴマとナッツ類、ごま油を合わせたソースとマスカルポーネを添え、フライドオニオンをトッピングしたもの。エゴマのソース自体も韓国テイストなので、いわゆる“フュージョン料理”という感覚はそこまでなく楽しめる。

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また、「韓国鮑と魚介のチャプチェ」(¥2,100)は、贅沢にあわびやあさりなどを使ったうま味爆弾的な一品。「実家ではこんな食べ方したことがない(笑)」(石山さん)という言葉通り、家庭料理の枠を超えたリッチな味わいだ。

「モダンにアレンジはするけれど、フュージョンにしすぎて韓国料理の根幹や基本の味付けを壊したくはないんです。アレンジしても『あ、これはちゃんと韓国料理だな』と納得できる着地点を守ることを第一に考えています」と石山さん。

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主菜の「国産牛スネ肉のチム ナッツのソース」(¥2,800)も同様で、九州しょうゆ、果物、ごま油をベースにした甘辛くコクのあるタレで煮込む韓国の伝統料理「カルビチム」のアレンジなのだが、伝統技法をベースにくるみなどのナッツを加えて、香ばしさをプラス。濃厚な味付けは、白ごはんが欲しくなる一品だ。

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プレミアムなソジュに生マッコリ。料理を引き立てる一杯

近藤さんが担当するドリンクのラインナップにも感度が光る。マッコリには、韓国・蔚山(ウルサン)の醸造所で作られる「ボクスンドガ」の生マッコリ3種をセレクト(写真右)。加熱殺菌をしない生マッコリならではの強い発酵炭酸と、シャンパンのようなシュワシュワ感、乳酸菌の爽やかな酸味が特徴で、定番のオリジナルや赤米、キレのあるスーパードライタイプまで飲み比べが楽しめる(写真右 グラス¥1,200)。

ブルックリン発のプレミアム・クラフトソジュ「Tokki Soju(トッキ・ソジュ)」がグラス(写真右から2番目¥2,500)で試せるのも、うれしいポイントだ。100%韓国産のオーガニック米と水、伝統の発酵種「ヌルック(麹菌の一種)」のみを使い、人工甘味料や添加物は一切不使用。「李朝膳」で扱っているのは高級ラインの「黒」。深みがあり、ウイスキーやブランデーのようにじっくり味わうタイプだ。

さらに、韓国・済州島発のクラフトブルワリー「チェジュビール」のホワイトエールや、国産からヨーロッパ、南アフリカ、オセアニアまで揃うナチュラルワインなど、モダンな韓国料理の今を体現する魅力的なドリンクの提案が散りばめられている。

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店の根底に流れるのは伝統と新しい風

この店の根底にあるのは、母の手料理のような身体に染み渡るやさしさと、韓国の伝統の技法。そこにほんの少しの新しい風と遊び心を添えるさじ加減が、「李朝膳」の真骨頂だ。 伝統の軸をぶらすことなく、けれど軽やかに時代と歩調を合わせる。そんな心地よいスタンスを持つこの場所が、どのように味わいを深めていくのか楽しみである。

李朝膳/りちょうぜん

住所/東京都目黒区祐天寺2 -8-8 1F
営業時間/17:00~23:00
定休日/不定休(SNS要確認)
Instagram/@Le Chozen


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