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『ハート・オブ・ビースト』監督が語る、ブラッド・ピットの魂を揺さぶる役作り「“俳優のなかの俳優”という形容詞がぴったり」

  • 2026.9.22

アラスカの奥地で、一人の退役軍人と元偵察犬に待ち受ける運命とは――?ブラッド・ピットの主演最新作『ハート・オブ・ビースト』(9月25日公開)は、大自然の中での過酷なサバイバル、人間と犬の熱い絆を描き、アクションと感動が究極に溶け合い、忘れがたい後味を残す。監督を務めたのは、ピットとは2014年の『フューリー』以来、2度目のタッグとなるデヴィッド・エアー。撮影現場でのピットとの関係や、犬を演出した秘話など、単独インタビューで語ってくれた。

【写真を見る】ブラピ×犬、種を超えた強い絆が尊い!過酷な自然での撮影で“魔法”のような映像も

「ブラッドが特に重視するのは、演じるキャラクターが“とりつかれている”もの」

「共同プロデューサーであるオリヴィア・ハミルトンから本作の脚本を受け取ったのは、何年も前のことです。その時点で、主人公のジェームズを演じる俳優として真っ先に頭に浮かんだのが、ブラッド・ピットでした。そこで彼に脚本を送ると、とても気に入ってくれて、ジェームズを演じたいとの返事をもらい、なんと言うべきか…“運命”を感じましたね」。

本作の監督を務めたデヴィッド・エアー [c]EVERETT/AFLO
本作の監督を務めたデヴィッド・エアー [c]EVERETT/AFLO

『ハート・オブ・ビースト』の企画の始まりを、デヴィッド・エアー監督は、そう振り返る。エアーといえば、ピットを主演に迎えた『フューリー』のほかにも『スーサイド・スクワッド』(16)などアクションが見どころとなる作風を持ち味にする監督。最近は『ビーキーパー』(24)、『ワーキングマン』(25)と、ジェイソン・ステイサムの主演作を手掛けている。そのステイサムの仕事ぶりを、エアー監督は「建築家」「画家」、あるいは「職人」に近いと例えていた。ではピットは、監督の目にどのように映ったのか?

「ブラッドは、メソッドアクター(自身の経験や感情も利用し、役になりきる)に近い役作りをするタイプですが、同時に理性もはたらかせて演技します。彼が特に重視するのは、演じるキャラクターが“とりつかれている”もの。内に潜むゴースト(幽霊)を突き詰め、そのうえでディテールや動作に真実味を求めます。『なぜこう動くのか』『これにはどんな意味があるのか』を掘り下げて演じてくれます。今回は、森でのサバイバル術、火の起こし方、負傷時の応急処置、片手での作業、地図を使ったナビゲーションなど、ジェームズが持ち得るスキルを数多く習得し、撮影に臨んでいました。つまり、深い真実を基盤にしたアプローチです。ブラッドには“俳優のなかの俳優”という形容詞がぴったりですね」。

ジャーマン・シェパードのオーディンも主人公といって過言ではない [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
ジャーマン・シェパードのオーディンも主人公といって過言ではない [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ハート・オブ・ビースト』の主人公は、ピットが演じるジェームズだけではない。従軍時代から任務を共にしてきた、ジャーマン・シェパードのオーディンだ。彼らは全編、ほぼ出ずっぱり。そのオーディンを任せた犬について、エアー監督に詳しく語ってもらった。

「オーディンは、4匹の犬に演じてもらいました。メインはウーバー(Uber)という名前で、ほかの3匹は彼の息子たちです。ウーバーは、深みのある表情も見せてくれる天才犬。あとは走るのが得意、泳ぐのが得意など特徴を見極め、その都度、“適任者”を選んだのです。理想の動きを細かいステップに分解し、一つ一つの動作をトレーニングしました。犬も疲れますから、その状態に気を配り、遊び感覚で楽しんで取り込ませることも大事。ある犬が疲れたら、『じゃあここは、ホンドー(ウーバーの息子)の出番だ』と交代させるわけです。ブラッドも早い段階からドッグトレーナーと一緒に犬たちに慣れていきました。なかでもウーバーとは、たっぷり時間をかけて心を通わせていましたね。映像から伝わる彼らの絆は、本物なんですよ。ただなんだかんだ言っても犬ですから、カメラを回している間、ブラッドといい雰囲気になっても、ふらっと気まぐれで離れてしまったりもする。『言うとおりに演技しないと、エージェントに連絡するぞ』と注意しても、犬には意味がない(笑)。逆にウーバーの驚くべき行動で“魔法”のような映像が撮れたりと、おもしろい現場ではありました」。

【写真を見る】ブラピ×犬、種を超えた強い絆が尊い!過酷な自然での撮影で“魔法”のような映像も [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
【写真を見る】ブラピ×犬、種を超えた強い絆が尊い!過酷な自然での撮影で“魔法”のような映像も [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ちなみにエアー監督の人生では、犬との深いつながりはあったのだろうか?その関係性も今回の演出に役立ったのではないか。

「実はジャーマン・シェパードを飼ったことがあります。ニーナという名前で、12歳まで生きたのですが、最後は安楽死させることになってしまい…。彼女はとても賢く、深い絆を育んだので、今回のウーバーとの仕事でもその経験が役立ちました。斜に構えてみたり、生意気な面もありつつ、愛情深いなど、ジャーマン・シェパードの性格は複雑で、そこを私も理解できていたのは、ニーナのおかげです」。

一方でオーディンは軍の偵察犬という設定のため、専門家からアドバイスを受け、リアリティを追求したという。

「アフガニスタンやイラクといった戦地で、軍用犬と活動した軍事アドバイザーの協力を仰ぎました。さらに軍用犬のハンドラーに、犬との関係性や信頼感の築き方を教えてもらいました。戦地に行く犬は檻で輸送されるのではなく、兵士たちと家族のように生活しながら移動するんです。そして過酷な戦地での経験を乗り越えて帰国したあとも、犬たちは兵士の家族のペットとして余生を過ごす。そんな事実も、本作の演出に生かされましたね」。

「もう一本、ブラッドとなにか作りたい。大好きな日本で、警察を描いたドラマはどう?」

本作のもう一つの主役が、ジェームズとオーディンの旅の背景となるアラスカの大自然。実際のロケはニュージーランドの南島で行われたが、映画を観れば、いかに撮影が過酷であったかも察せられる。エアー監督にとって最も苦労したのは、どのシーンだったのか。

「氷河の近くの山の尾根を、ジェームズとオーディンが歩くシーンですね。そこまでの道路もありませんし、電源もないので、スタッフ全員を連れて行くのは不可能。15人ほどに絞り、機材と一緒に数回に分けてヘリコプターで移動しました。ブラッドもヘリで向かってもらい、現場上空から『頑張って演じて』と励まし、尾根に下ろすしかありませんでした。ブラッドは肉体的にも自分を極限に追い込んでおり、文字どおり身を削る覚悟で、撮影に挑んでくれました。多くの現場を経験した私にとっても、あれほど過酷な一日は初めてだったかもしれません」。

共に生きて還るため、歩き続ける姿が印象的 [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
共に生きて還るため、歩き続ける姿が印象的 [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

海軍での経験をもつエアー監督なので、本作のジェームズのように元軍人のキャラクターを描くのは得意中の得意。作風もハードなアクション映画、骨太なヒューマンドラマやサスペンスが中心だった。しかしこの『ハート・オブ・ビースト』は、人間と犬の絆がメインテーマということで、エアー監督作のなかでも最もエモーショナルな展開になっている。多くの監督作で脚本にも参加してきた彼が、本作では他者の脚本を映画化したからだろうか。

「キャメロン・アレクサンダーが書き上げた脚本は、美しい詩のように魂を揺さぶる旅路の物語でした。ですから今回は、私の軍隊での経験を脚本に反映させることはなかったですね。たしかに過去の監督作と印象は異なるでしょう。でも本作には、私が一貫して追求してきた2つのテーマが備わっています。一つは、過去のしがらみに苦しみ、自分の内面と向き合う主人公。そしてもう一つは、友情。今回の“ふたり”は私の監督作のなかでも、最高の親友なんです」。

ジェームズとオーディンは主従関係ではなく、親友として描かれる [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
ジェームズとオーディンは主従関係ではなく、親友として描かれる [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

タイトルの『ハート・オブ・ビースト』は、今回の舞台であるアラスカの奥地=魔の領域の比喩だが、直訳すれば「野獣の心臓部」となる。そのタイトルにかけて、エアー監督にとって「フィルムメーカーの心臓部」、その強さについて聞いてみた。

「心臓はかなり強いと思います(笑)。優れた監督に求められるのは、忍耐力とスタミナ。監督の仕事は、膨大な時間をかけた準備、終わりの見えない打ち合わせ、予算の調整、そしてポストプロダクションでの仕上げ…と、99%が“縁の下の力持ち”的なものです。常に変更を加え、作品を進化させるうえで、決して諦めないことが重要で、そんな精神的忍耐は、本作のジェームズに通じていると思いませんか?」。

今回も忍耐力とスタミナをフル稼働したことで、次回作までしばらく休養をとるというエアー監督だが、ブラッド・ピットとは、いつかまた組みたいと強調する。

『フューリー』撮影時のエアー監督とブラッド・ピット [c]EVERETT/AFLO
『フューリー』撮影時のエアー監督とブラッド・ピット [c]EVERETT/AFLO

「映画は3部作というのが美しいですよね?だからブラッドとは、もう一本、なにか作りたいんです。『フューリー』が12年前でしたから、今度は12年後に再会するかもしれません。あと今後の夢として、大好きな日本で映画を撮ってみたい。日本の警察を描いたドラマなんか、どうでしょう?」

その日本が舞台のポリス映画にブラッド・ピットが出演…となれば最高だが、12年後といわず、1年でも早く実現してほしい!

『ハート・オブ・ビースト』は9月25日(金)公開! [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『ハート・オブ・ビースト』は9月25日(金)公開! [c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

取材・文/斉藤博昭

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