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「ポスト広末涼子になれる逸材」でもスカウトを断り続けた美少女。未経験で主演デビューした女優の現在地

  • 2026.10.11
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南沢奈央-2006年8月撮影(C)SANKEI

制作発表会見でマイクに向かう16歳の声は、緊張で震え気味だった。それでも「不安もいっぱいだけど楽しくやっていきたいです」とあいさつし、「負けず嫌いです」という芯の強い一言を口にした。

2006年秋、BS-iの連続ドラマ『恋する日曜日 ニュータイプ』で主演デビューを飾った南沢奈央。 まだ無名の女子高生の主演抜擢は、異例のことだった。

スカウトを断り続けた少女が宣伝写真の現場で主役になるまで

そもそも彼女は、芸能界に強い憧れを抱いていたわけではなかった。地元・埼玉でスカウトされた当時の夢はトリマー。事務所からの熱心な誘いも、当初は断り続けていた。

そんな少女の心が大きく動いたのは、2006年4月のこと。所属事務所の先輩である黒木メイサが主演を務めた舞台『あずみ』を観て、胸を揺さぶられた。自分も人に感動を与えたいと芸能界入りを決めてから、わずか数ヶ月で主演が発表されるスピードデビューだった。

南沢の所属事務所といえば、内山理名、堀北真希、黒木メイサら人気女優を次々と世に送り出していた気鋭の事務所。さらにドラマが放送されたBS-iでは、『ケータイ刑事』シリーズで堀北真希や夏帆が初主演を務めるなど、新人女優の登竜門として注目されていた。

とはいえ、先人たちには映画やCMへの出演実績があった。完全な未経験者の抜擢を決めたのは、プロデューサーの丹羽多聞アンドリウだ。事務所の宣伝用写真の撮影で彼女を見て、目のインパクトと存在感の華を買い、「ポスト広末涼子になれる逸材」と評した。

デビュー作となった『ニュータイプ』で演じたのは、屈指の超能力を秘めながら自覚のない、口癖が「マンボ!」の女子高生・多々野ユリ。林隆三や白木みのるといったベテラン俳優に囲まれ、主題歌『片翼の神』まで歌い上げた。

放送が始まっても、学校の友人たちはまだ彼女がドラマの主役を務めていることに気づいていなかった。ドラマを見たら驚かれるのかな、と瞳を輝かせていた少女は、ここから一気にスターダムへと駆け上がっていく。

『赤い糸』のヒロインとロケ現場の単語帳

数年後には大きなドラマの主役を張れるという丹羽プロデューサーの見立ては、予想以上の速さで現実となった。

それから2年たたない2008年6月、大ヒットしたケータイ小説を映像化する『赤い糸』で、フジテレビ系の連続ドラマと映画の両方の主演に、溝端淳平とともに抜擢された。演じたのは、運命の恋を一途に信じるヒロイン・芽衣だ。年が明けると、10代と20代を対象に2009年に活躍を期待する若手女優を選ぶアンケートで、多部未華子や忽那汐里を抑えて1位に輝いた。

華やかなスポットライトの裏側で、彼女はロケ現場にまで参考書や単語帳を持ち込んでいた。2009年2月には、立教大学現代心理学部に現役で合格。仕事と受験勉強の両立を成し遂げてみせた。デビュー会見で口にした「負けず嫌い」という言葉は、決して見栄などではなかった。

原点だった舞台の上で迎える冬

2026年の今も、南沢奈央は舞台に立ち続けている。2月から3月は『2時22分 ゴーストストーリー』に出演し、5月からは井上ひさし作、栗山民也演出のこまつ座『花よりタンゴ』で、東京から大阪の新歌舞伎座まで各地を回った。8月には、上田秋成の『雨月物語』を原作とする『月を抱く人魚』の舞台に立っている。さらに2026年12月には、デビュー20周年を迎えるチェリスト・新倉瞳の『新倉瞳×南沢奈央 ベートーヴェンの小径』への出演も控える。

思えば、芸能界に興味のなかった少女をこの世界へと導いたのは、客席で感激した先輩の舞台だった。誰かに感動を届けたいと願った少女は、20年たったいま、その板の上に立つ側にいる。

震える声で「楽しくやっていきたい」とあいさつした新人は、ドラマの主役から始めて、いまは劇場の明かりの下で演じている。


※記事は執筆時点の情報です

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