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新原泰佑、憧れの寺山修司の世界で新境地挑戦 『ちょっとだけエスパー』で大泉洋から学んだこととは?

  • 2026.9.19
新原泰佑 クランクイン! 写真:高野広美 width=
新原泰佑 クランクイン! 写真:高野広美

ドラマ『25時、赤坂で』『御上先生』『ちょっとだけエスパー』など注目作に引っ張りだこで、どの作品でも確かな存在感を発揮する俳優の新原泰佑。4歳から始めたダンスを活かし、ミュージカル『ニュージーズ』はもちろん、『インヘリタンス-継承-』『球体の球体』『梨泰院クラス』など舞台での活躍も続いている。2025年には第32回読売演劇大賞 杉村春子賞を受賞し、さらなる進化を見せる彼が、この秋、寺山修司の幻の戯曲を61年ぶりに舞台化するBunkamura Production 2026 ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』で主演を務める。

【写真】ビジュ最高! 新原泰佑インタビュー撮りおろしショット

◆憧れの寺山修司ワールド「寺山さんの言葉はアイスピックみたいな感覚」

寺山修司生誕90周年である2026年に、61年の時を経て上演される本作は、1967年に劇団「演劇実験室◎天井棧敷」を旗揚げした寺山が、1965年にたった1回の公演のために書き下ろした幻の戯曲。

舞台は1960年代の東京。ごく普通の青年が謎の男との契約によって、ことばを失う代わりに憧れていたボクサーとしての能力を手に入れ、名声を得る一方、多くのものを失っていく。ことばを失った青年が、ボクシングや新たに出会う人々を通して自らの道を模索し、栄光と葛藤の中で何を選び取るのかを描く物語だ。

演出を務めるのは、これからの演劇界を牽引する存在として注目を集める杉原邦生。音楽を☆Taku Takahashi[m-flo]が担当することも話題を集めている。

――寺山修司の幻の戯曲である本作への主演オファー。お話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

新原:寺山修司という人にいつか触れてみたいと思っていました。寺山さんが描く世界の中に入ってみたい、寺山さんの世界を自分の体内に入れたい、寺山さんの世界の中で息をしている自分を見てみたいと思っていたんです。夢のひとつのようなものであったので、意外と早く実現してびっくりしている自分もいますが、やっぱりうれしかったですね。

――寺山さんの作品のどんなところに魅力を感じられていたのですか?

新原:詩が好きなんです。寺山さんが書く言葉には鋭利さがあると思っていて。鋭利なのに、すごく人が書いた温かさがあるといいますか。寺山修司という人にしか書けない言葉がそこに詰まっていると思いますし、自分の中ではアイスピックみたいな感覚なんですよね。寺山さんの言葉1つ1つがすごく僕を刺してくる。気付いたら自分の中で血がにじむようにじんわり広がっていって。そして逆に自分の血液に戻っていくような感覚。すごくエッジが効いているけど、誰もが共感できるんじゃないかなという印象です。

――今回演じられる貞夫は言葉を失ったボクサー役です。

新原:びっくりしますよね。「ミュージカルですよね?」ってマネージャーさんに確認しちゃいました(笑)。でもこれがちゃんと成立するんですよ。主演が言葉を喋れないというのはあまりないと思いますし、その目新しさに面白みを感じたのも今回挑戦させていただきたいと思った要因の1つでもあるのですが、台本を読んでやりたくなっちゃったというのが強くて。寺山さんが書いてくださっている貞夫の気持ちをいかに分かりやすく、そしていかに余白を持って伝えられるかが大事だなと思っています。

寺山さんが「劇団側が半分、お客さんが半分で、やっと舞台は1つになる」みたいなことをおっしゃっていて。今回の作品はまさにそんな作品になる気がしています。観てくださる方々も僕の表情や空気、動き、もちろん手話や身体表現もあるんですけど、それらを観て自分の中のボキャブラリーからあてはまるものを見つけていかないといけない。ある種お客様も何か考えざるを得ない状況になるからこそ、この作品は十人十色感じることが違ってくる作品になるのかなという予感がしています。

◆主人公は誰もが共感できるキャラクター

――演じられる貞夫の印象はいかがですか?

新原:たぶん皆さんが、登場人物の中で一番共感できる人なのかなって思います。だらしなかったりするので多少なりともちょっと嫌悪感だったりが最初はあったんですけど、台本を読み進めていくうちにだんだんと「これって自分が心の一番奥底に持っている感情、本来あるはずなんだけど隠して生きている感情なのかもしれない。それは意外と誰でも持っているものなのかもしれない」と感じるようになりました。一番身近な人間なのかなと思いますし、作品を観終わったらみなさん彼のことを好きになっているんじゃないかとも思います。

彼はだらしなくてちょっとフラフラしている中でも彼なりの信念、自分の中の芯や軸というものは絶対に動いていないと思うんです。自分の中に細くて頑丈な軸がある中で、その周りの余白でずっとフラフラしているという感覚なので、そこをお見せできたらいいなと思いますし、そこも好きになってほしいですね。

――ボクシングの練習はいかがですか?

新原:殴る、殴られるのってめちゃくちゃ怖いですね。コーチングしてくれている先生には「避けるのが上手いね」って言われています(笑)。プロとしてやってらっしゃる方を本当に尊敬しますし、ボクシングも含めた格闘技ってすごいなって思いました。

難しいですけど、やるからにはやり切りたいなと思いますし、もっと練習を重ねたいと思います。

――演出の杉原さんとは初顔合わせですね。

新原:ご自分でお祭り隊長とおっしゃっていて(笑)。学園祭や文化祭がすごく大好きで祝祭劇はお任せ!とおっしゃっていたんですけど、僕も文化祭は気合いを入れて文化祭実行委員とかやるタイプで(笑)。お話していく中でもクリエイティビティに溢れてるなって思いましたし、やりたいことが頭の中からいっぱい溢れ出ちゃって止めどない人なんだなと僕は感じたので、稽古でもそんな思いを受けてどんどんブラッシュアップしていければいいなと思っています。

――m-floの☆Taku Takahashiさんによる音楽も楽しみです。

新原:☆Takuさん、学生時代ミュージカル部だったらしいですよ。杉原さんも知らずにオファーされたみたいで。僕がこんなこと言っていいのか分からないですけど、本当にいい曲ぞろいなんです。デモの時点でサブスク配信しましょうよ!と思うくらい、1曲1曲のボリューム感や曲調もそうですし、このキャラクターの歌っている姿が見えるような、素晴らしい曲ばかりです。僕はダンスをやってきましたし、m-floさんが、我々が歌うための曲を書き上げてくださっているということに本当にたまらなく大興奮しています。

◆『ちょっとだけエスパー』で大泉洋の背中から学んだ姿勢

――昨年は『ちょっとだけエスパー』での紫苑役が大注目を集めました。大泉洋さん、ディーンフジオカさん、宮崎あおいさん、北村匠海さんなど、そうそうたる皆さんとの共演はいかがでしたか?

新原:本当に刺激的でしたし、皆さんの1発にかけるエネルギーみたいなものは、映像で伝わるとおりの熱量を実際の現場で毎回出されているので勉強になりました。自分も皆さんの熱量に応えていきたいと思いながら芝居をしていました。

――一番大きな刺激となったことはどんなことでしょうか。

新原:大泉さんの現場作りはすごく勉強になりました。お人柄もありますし、とても真面目な方なんですけれども、やっぱり楽しいことが好きなんだろうなと感じて。クリスマスマーケットのシーンは、吹き抜けの上階から広場にいるエキストラの皆さんに向けて「頭が高くてすみませ~ん!朝早くからありがとうございま~す!」とお声がけされたり。素敵な背中を見させていただきました。

――映像のお仕事と舞台のお仕事での意識の変化はありますか?

新原:映像をやっている時は「この芝居のアプローチ、舞台でやりたいな」、舞台をやってる時は「これが映像になったらこのアプローチどうするんだろう」と、ずっと僕の中で交互にぐるぐる繰り返しています。

映像に取り組んでいる時は「画面のサイズに収まってる気持ちを舞台で開放したら、どうなるだろう?」「これを100パーセントで解放した時に、どうやって演じるかな?」という好奇心がいつも1番最初に来ますね。

――杉村春子賞を受賞されてご自身の中に変化はありましたか?

新原:やっぱり賞をいただいてから、責任感といいますか、そういうものが自分の中で生まれました。いい意味でプレッシャーになっているんですよ。このレベルで止まってちゃいけないと自分を奮い立たせるじゃないですけど、まだまだもっともっとできる、もっといい芝居ができるという向上心にも繋がっていますね。

小さい頃からダンスをやってきて、「この技できない」って思ったら、できるまで「なんだよ、この野郎!」と思いながらずっとやってきました。「もうこの技ができたらダンスなんてやめてやる!」と思っても、いざクリアできたらまた次の壁があって「あぁ、まだやめられない」となり、どんどんダンスが好きになっていった。その結果として、今があるんですね。負けず嫌いだし、それで自分が強くなってきたので、僕はプレッシャーに負けることはないと思っています。

――新原さんにとって、ダンスというのはどういう存在ですか?

新原:呼吸してる感じが一番する瞬間かもしれないです。普通に歩いてる時よりダンスをしてる時の方が呼吸してるなって思います。生きがいに近いようなもので、生きてるなって生を実感するというか。人前で何かをパフォーマンスする、表現するっていうことが、一番生きてるって感じられるんですよね。

――公演期間中にお誕生日を迎えて、26歳になられるんですよね。

新原:幕が開いて3日後です。マチソワで、翌日は休演日。むくまないように呑みたいと思います(笑)。

――20代も折り返しとなりますが、20代のうちに目指す姿はありますか?

新原:う~ん。あまり考えてないですね。なるようになると思っているので。これをやっておきたい!と思ったら、やりきった時に次を見つけるのに時間がかかっちゃいそうな気がして。例えばこういう役をやりたいとか、そういうゴールを作らずに未知なものに進んでいった方が新たな自分に出会える気がしているんですよね。

今回の作品もこういう役をやるとは思っていなかったのですが、貞夫という男に合うと思ってくれた演出家の方、プロデューサーの方々が、この貞夫という色に僕を染めてくれるんだろうなっていう期待のもとに僕は飛び込む。そうした連続がたぶん今後もずっと続いていくんだと思うんです。でも、それが素晴らしいことだと思うし、僕の一番の喜びなので、自然体でこれからもいろんな役に出会っていきたいなと思っています。

(取材・文:佐藤鷹飛 写真:高野広美)

Bunkamura Production 2026 ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』は、10月4日~20日東京・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)、11月7日・8日大阪・SkyシアターMBSにて上演。

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