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「欲しい人が持っていけばいい」曽祖父の遺品を鞄に入れ始めた親族。だが、母が広げた一枚で止まった手

  • 2026.9.18

仏間の押し入れから出てきた箱

曽祖父の葬式が終わった日、私は仏間のすみで正座をしていました。

子どもだった私には大人たちの話がよく分からず、靴下の先を指でいじりながら、早く終わらないかなと思っていました。

大人たちが遺言書の内容を確認していると、押し入れの奥から古い箱が見つかりました。

「これ、どうする?」

ふたを開けると、中には指輪やブローチ、細い金色の鎖などがいくつも入っています。

その箱については、遺言書には特に書かれていませんでした。

祖父はすでに亡くなっていたため、その場には祖母や祖父の兄弟、その妻たち、そして母がいました。

箱を見た祖母は、少し考えてから言いました。

「まあ…欲しい人がいるなら、持っていけばいいんじゃない?」

すると、一人の女性がすぐに箱へ手を伸ばしました。

「あ、これ鼈甲じゃない?こういうの、高く売れるんだよ」

指輪を持ち上げると、今度はブローチも手に取ります。

「こっちも結構いいものなんじゃない?」

最初は眺めているだけだと思いました。

ところが女性は、手に取った指輪やブローチを自分の鞄へ入れ始めたのです。

気になった私は立ち上がり、箱を覗き込みました。

「ちょっと、危ないから下がってて」

女性に肩を押し戻され、私はバランスを崩して畳に尻もちをつきました。

すぐに母が立ち上がります。

「ちょっと。押さなくてもいいでしょう」

いつもより低い母の声に、女性は一瞬黙りました。

「そんな強く押してないわよ」

母はそれ以上言い返さず、まず私を起こしてくれました。

母が鞄から出した、一枚の紙

私の服についたほこりを払うと、母は自分の鞄から四つ折りの紙を取り出しました。

「先週、ここを片付けたときにね。念のため、箱の中にあったものを書いておいたの」

女性の表情が変わりました。

「…何、それ」

母は紙を開きながら答えます。

「あとで分からなくなったら困るでしょう。指輪が9つ、ブローチが4つ、鎖が6本。まず全部あるか確認しよう」

さっきまでざわついていた部屋が静かになりました。

すると、その女性の夫が妻の鞄を見ました。

「おい。それ、今入れたのか?」

女性は少し間を置いてから答えました。

「見てただけよ。あとで戻そうと思ってたし」

夫は小さく息を吐きました。

「だったら、いったん全部戻そう。話はそれからでいいだろ」

周りの親族からも、「そうしよう」「まず数を見よう」と声が上がりました。

女性は黙ったまま鞄を開け、指輪やブローチを箱へ戻しました。

母が紙を見ながら、一つずつ数えていきます。

「指輪、9つ」

「あるね」

「ブローチは4つ」

鎖まで確認すると、書かれていた数とすべて一致しました。

母は紙を畳みながら言いました。

「よかった。じゃあ、これからどうするかは、ちゃんと話して決めよう」

祖母も今度は黙って頷きました。

さっきの女性はそれ以上箱に手を伸ばさず、帰るまで私と目を合わせることもありませんでした。

子どもだった私にも、母が怒鳴るのではなく一枚の紙を出したことで、その場の空気が変わったことだけははっきり分かりました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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