1. トップ
  2. エピソード
  3. 「なにやってるんだ!」受付で10分以上怒鳴られた私に、上司が静かに示した線引き

「なにやってるんだ!」受付で10分以上怒鳴られた私に、上司が静かに示した線引き

  • 2026.9.17

外線を取った瞬間、大きな声が飛んできた

受付の仕事をしていたころの話です。午後の来客が途切れ、カウンターの内側で伝票をそろえていたとき、外線のランプが点きました。

いつものように会社名を名乗ろうとした、そのときです。

「おい、なにやってるんだ!」

突然、男性の大きな声が耳に飛び込んできました。

何のことか分からず一瞬言葉に詰まりましたが、私はできるだけ普段どおりの声で尋ねました。

「恐れ入ります。どういったご用件でしょうか」

すると男性は、さらに強い口調で返してきました。

「だから、なにやってるんだって聞いてるんだよ!」

同じ言葉を2度続けて怒鳴られ、私は思わず受話器を少し耳から離しました。

まだ何について怒っているのかも分かりません。

私は手元にメモ帳を引き寄せ、聞き取れることから書いていくことにしました。

「すみません。状況を確認したいので、何があったのか順番に教えていただけますか」

そこでようやく、男性は事情を話し始めました。

届いた案内の内容が以前聞いていたものと違うこと。前にも問い合わせたのに、その後も話が進んでいないこと。その二つに腹を立てているようでした。

「前にも電話したんだよ。それなのに、またこんなのが届いてさ。どうなってるんだよ」

「分かりました。確認しますので、案内に書かれている番号を教えていただけますか」

私は日付や番号を一つずつ復唱しながら、聞いた内容を書き取っていきました。

ただ、話を聞くほど、受付の私だけでは答えられない内容だと分かってきました。

「こちらでは確認できない部分がありますので、担当する者に代わります」

そう伝えると、男性はすぐに声を上げました。

「いや、代わらなくていいよ。今電話に出てるんだから、あなたが答えてよ」

「すみません。私では確認できない内容なんです」

「じゃあ確認してよ。こっちは前から待ってるんだよ」

私が返事をしようとしても、男性はそのまま話を続けます。

以前の問い合わせの話に戻ったかと思えば、また届いた案内への不満に戻る。

その繰り返しで、なかなか保留をお願いするタイミングもつかめませんでした。

気づけば、電話を取ってから10分以上がたっていました。

ようやく相手の言葉が途切れたところで、私はもう一度伝えました。

「お話はここまで控えました。私からきちんと引き継ぎますので、少しだけお待ちいただけますか」

隣で聞いていた上司が受話器を取った

そのとき、隣の席にいた上司が私のメモをのぞき込みました。

電話が長引いていることも、大きな声が聞こえていたことも気づいていたようです。私と目が合うと、上司は黙って手を差し出しました。

私は保留ボタンを押し、それまでに聞き取った内容を短く伝えてから受話器を渡しました。

「お電話代わりました。お待たせして申し訳ありません。受付からお話は聞いております」

上司は落ち着いた声で話し始めました。

「まず、届いた案内についてはこちらで確認します」

「だから、確認じゃなくてさ。今すぐどうにかしてほしいんだよ」

「お急ぎなのは承知しています。ただ、内容を確認しないまま、今ここでお答えすることはできません」

男性が途中で言葉を挟んでも、上司は声を荒らげませんでした。

「確認には少しお時間をいただきます。結果については、書面でご案内します」

「今日中には分からないのか?」

「申し訳ありません。今日この場でお伝えできるのは、そこまでです」

上司はそれ以上言葉を重ねず、相手の返事を待ちました。

しばらくすると、電話の向こうの声が少し小さくなりました。

「…じゃあ、確認したら書面で来るんだな」

「はい。確認ができ次第、ご案内します」

「分かった」

短い沈黙のあと、電話は向こうから切れました。

上司は受話器を置くと、私のメモを見ました。

「大丈夫? よくここまで聞き取ったね」

その言葉を聞いた瞬間、それまで張っていた肩の力が少し抜けました。

「途中から、どこで代わってもらえばいいのか分からなくなってしまって……」

上司はうなずきました。

「こういうときは、全部一人で受けなくていいよ。自分で答えられない内容だと思ったら、こっちに回して」

「はい。ありがとうございます」

私は書き終えたメモを上司に渡しました。

しばらくして、また外線のランプが点きます。

一度息を整えてから、私は受話器に手を伸ばしました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ