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「なんで泣いてるの?」野次が飛んだ友人代表のスピーチ。声が震えた結婚式で、司会が動いた瞬間

  • 2026.9.17

グラスの音が、マイクの声に重なっていた

従姉妹の結婚式に呼ばれた。天井の高いホールに円卓がいくつも並び、招待客は端の席まで埋まっていた。私は新婦側の親族席にいた。

披露宴が中盤に差しかかるころには、どの卓もすっかり賑やかになっていた。とくに新郎側の席からは、何度も大きな笑い声が上がっていた。

やがて司会の人が、友人代表のスピーチを案内した。

マイクの前に立ったのは、従姉妹の地元の友人だった。小学校からの付き合いだと聞いていた。

友人は原稿を両手で持ち、少し緊張したように息を吸った。

「私が転校してきた日、いちばん最初に話しかけてくれたのが彼女でした」

声は落ち着いていた。けれど、後ろのざわめきはなかなか小さくならない。グラスの触れ合う音や話し声が、マイクの声に重なっていた。

友人はそのまま話を続けていたが、ふと原稿から目を上げた。目のふちが赤くなっているのが、親族席からでも分かった。

そのとき、新郎側の卓から大きな声が飛んだ。

「なんで泣いてるの?」

笑いを含んだ声だった。

近くの席から、つられたような笑い声も聞こえた。

友人は一度うつむき、原稿に目を戻した。口を開こうとしたものの、すぐには声が出てこなかった。

すると、同じ声がもう一度飛んだ。

「ねえ、なんで泣いてるの?」

今度は誰も笑わなかった。

原稿を持つ友人の手が、はっきり震えていた。私の隣にいた伯母も何も言わず、膝の上のハンカチを強く握っていた。

司会の人が、マイク越しに声をかけた

そのとき、進行台のマイクから司会の人の声がした。

「皆さま、少しだけよろしいでしょうか」

責めるような口調ではなかった。ただ、それまでのざわめきの中でもはっきり聞こえる声だった。

会場のあちこちで、話し声が止まっていく。

司会の人は誰かを名指しすることなく、そのまま続けた。

「お二人にとって大切なお言葉ですので、今だけ少し、お耳をお貸しいただければと思います」

新郎側の卓も静かになった。

司会の人は友人のほうへ目を向けた。

「失礼いたしました。大丈夫でしたら、続きをお願いいたします」

友人は小さくうなずき、一度息を整えた。

「…ありがとうございます」

それから原稿を開き直した。

「彼女は、私が引っ越しの荷物を積む日も、朝から来てくれました」

今度は、その声が会場の奥までまっすぐ届いていた。

話し声も、笑い声も聞こえない。

友人は何度か声を詰まらせながらも、最後の一行まで読み切った。

そして高砂のほうを見て、少し笑った。

「幸せになってね。これからも、ずっと友達でいてください」

従姉妹は下を向き、何度もうなずいた。

隣にいた新郎がハンカチを差し出すと、従姉妹はそれを受け取って目元を押さえた。

友人が頭を下げると、会場から大きな拍手が起きた。

さっきまで声の大きかった新郎側の卓からも、もう野次は聞こえなかった。

友人が席へ戻るまで、拍手が静かに続いていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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