1. トップ
  2. エピソード
  3. 「前、前。こっち見なくていいから」参観日での歌の途中で声をかけ続けた父親。だが、先生が注意したワケ

「前、前。こっち見なくていいから」参観日での歌の途中で声をかけ続けた父親。だが、先生が注意したワケ

  • 2026.9.17
「前、前。こっち見なくていいから」参観日での歌の途中で声をかけ続けた父親。だが、先生が注意したワケ

教室の後ろに、保護者が並んでいた

姉に頼まれて、甥の幼稚園の参観日に行った。

四月の終わりで、教室の窓は上のほうだけ開いている。

後ろには保護者が10人ほど並び、私は端の壁ぎわに立った。

活動が始まってすぐ、前にいた父親が携帯電話を取り出した。撮影は禁止ではない。私も一枚くらいは残そうと思っていた。

ただ、その父親は保護者の列から少しずつ教室の横を前へ進み、子どもたちが座っている列のそばまで出ていった。

先生が気づいて声をかけた。

「すみません。撮影は後ろのほうからお願いできますか」

父親は携帯電話を構えたまま振り返った。

「ああ、でも…後ろだとうちの子、ほとんど映らないんですよ」

困ったように笑ったものの、その場からは動かなかった。

先生は少し間を置いたあと、子どもたちのほうへ向き直った。参観を止めたくなかったのだろう。そのまま歌が始まった。

ところが、しばらくすると父親の声が教室に響いた。

「ほら、もっと前向いて」

近くにいた子が一人、つられるように振り返った。

少しして、また声が飛ぶ。

「そうそう、先生のほう。ちゃんと歌って」

今度は隣の子まで父親のほうを見た。

それでも父親は、自分の子を撮ることに夢中になっているようだった。

「前、前。こっち見なくていいから」

三度目には何人かの子どもがまとめて振り返り、歌声も少しばらばらになった。

先生は歌を止め、父親のそばまで歩いてきた

先生はオルガンから手を離した。

「ちょっと待ってね」

子どもたちにそう声をかけてから、教室の横を通り、父親のところまで歩いてきた。

怒った顔ではなかった。ただ、今度は父親のすぐそばまで来て、静かにはっきりと言った。

「お父さん、みんなそちらを気にしてしまうので、後ろの列までお願いします」

父親は一瞬、子どもたちのほうを見た。

何人かがまだ自分のほうを見ていることに、そのとき初めて気づいたようだった。

「あ…すみません」

携帯電話を下ろし、今度は何も言わずに保護者の列まで戻っていった。

先生も前へ戻ると、子どもたちを見渡した。

「じゃあ、もう一回、最初からやってみようか」

先生が手を叩くと、子どもたちも一斉に前を向いた。

そのあとの父親は、列の端から静かに撮影していた。子どもに声をかけることもなかった。

参観が終わり、園庭で迎えに来た姉と合流したとき、私は教室でのことを話した。

「歌ってる途中に、お父さんが三回くらい自分の子に声かけててさ。ほかの子まで振り返っちゃって」

姉は驚いた顔をした。

「歌ってる最中に?」

「うん。最初に先生から後ろで撮ってくださいって言われてたんだけどね」

「それは先生も困るね」

「最後は先生がそばまで行って、『みんなそっちを気にしちゃうから』って言ってたよ」

「ああ……あの先生、怒鳴ったりしないけど、ちゃんと言うときは言うんだよね」

そう話していると、甥がこちらへ走ってきた。

「おじさん、今日の歌、聞こえた?」

「聞こえたよ。ちゃんと歌えてたじゃん」

そう答えると、甥はうれしそうに笑った。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ