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「ベランダはうちの敷地でしょ」何度伝えても止まらなかった布団のほこり。だが、汚れた白いシャツを管理会社に見せた結果

  • 2026.9.17

白いシャツについた黒い粒

よく晴れた春の土曜だった。分譲マンションの二階に越して二度目の春で、私は洗いたてのシャツをベランダいっぱいに広げていた。

昼前になって、上からバサバサと重い音が降ってきた。布団を叩く音だとすぐにわかった。たまになら仕方ないと思い、その日は気にしないことにした。

ところが夕方、洗濯物を取り込もうとして手が止まった。

白いシャツの胸元に、細かい砂ぼこりと黒い粒がびっしりついている。指でそっとなぞると、汚れが灰色の筋になって伸びた。

「え…何これ」

思わず声が出た。

見上げると、三階の手すりの外側に布団が大きくはみ出していた。上の階の住人が身を乗り出すようにして叩くたび、日差しの中を細かなほこりが落ちてくる。

その真下が、うちのベランダだった。

直接言いに行って揉めるのも嫌だったので、その夜、管理会社に電話をかけた。

「あの、上の階から布団のほこりが落ちてきて、洗濯物が汚れてしまったんです」

担当者は事情を聞いたあと、落ち着いた声で答えた。

「それは困りますね。まずは全戸向けに注意文を入れてみます」

「お願いします。手すりの外で叩かれると、全部こっちに落ちてきてしまって…」

翌週、ポストに注意文が入った。手すり越しに布団を叩かないこと、ほこりの飛散に配慮することが書かれていた。

これで終わると思っていた。

けれど、数日後にはまた同じ音がした。その後も週に何度か続き、外に干した洗濯物にほこりがつくことがあった。

袋に入れて取っておいた一枚

ある日、また布団を叩く音がした。ベランダへ出ると、ちょうど三階の住人が手すりの向こうに見えた。

私は迷った末、下から声をかけた。

「すみません、ちょっといいですか」

布団を叩く手が止まった。

「ほこりが下まで落ちてきてて…洗濯物が汚れちゃうんです」

すると、上から少し強い声が返ってきた。

「でも、ベランダはうちの敷地でしょ?」

「そういうことじゃなくて、叩いたものがこっちまで落ちてきてるんです」

「こっちだって、普通に布団を干してるだけなんですけど」

言い合いになりそうで、それ以上は続けられなかった。

けれど、その後も状況は変わらなかった。

二度目に声をかけたときも、相手は困ったような、苛立ったような声で言った。

「だから、ここはうちのベランダですよね?」

「それは分かってます。でも、下に落ちてきてるものだけ何とかしてもらえませんか」

返事はなかった。

三度目は、私が「また洗濯物が汚れてしまって」と言い終わる前だった。

「ベランダはうちの敷地でしょ。もういいですか?」

そのまま窓を閉められた。

さすがに、私が何度お願いしても難しいのだと思った。

その日も白いシャツには黒い粒と灰色の汚れがついていた。私は洗わず、そのまま袋に入れて取っておいた。

次の週、帰宅したとき、管理会社の担当者が別件で共用廊下にいるのを見かけた。

私は一度部屋に戻って袋を取り、その人のところへ向かった。

「すみません。この前相談した件なんですけど……今、少しいいですか」

「はい。どうされました?」

袋から白いシャツを出した。

「これ、洗って干したばかりのものなんです」

担当者は胸元から袖に残った灰色の汚れを見て、表情を曇らせた。

「ここまでついてしまうんですね」

「はい。上の方にもお願いしたんです。でも、『ベランダはうちの敷地でしょ』って。もう私から言うのは難しくて」

「そうでしたか。それなら、こちらから直接お話ししたほうがよさそうですね」

担当者はシャツの写真を撮り、私が覚えている範囲で日時を書き留めた。

「こちらで伝えます。しばらく様子を見てもらえますか」

「お願いします。正直、また声をかけるのもちょっと怖くて…」

「分かりました。そこは管理会社から話します」

その日の夕方、三階の玄関先からしばらく話し声が聞こえた。何を話しているのかまでは分からなかった。

ただ、それ以降、手すりの外に布団が大きくはみ出すことはなくなった。

翌週の晴れた日、私は少し迷いながら、また白いシャツを外に干した。

夕方、取り込んだ袖を明かりにかざしてみる。

前のような黒い粒も、灰色の筋もついていなかった。

完全に物音がなくなったわけではない。それでも、洗濯物を干すたびに上を見上げることはなくなった。

白いシャツをそのまま畳めたことに、ようやくほっとした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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