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「うちの敷地なんだから口を出さないで」隣のベランダのごみ袋の匂いに悩んだ夏。だが、管理会社に相談した結果

  • 2026.9.16

閉めたままの窓と、仕切り板の向こう

分譲の集合住宅に移って何年か経つ。二年ほど前、隣の部屋に夫婦が越してきた。

挨拶に来てくれたときの感じはよく、これから長く隣同士になるのだと思っていた。

変化に気づいたのは、ごみ収集日の前日の夜だった。

ベランダに出ると、仕切り板の下の隙間から、隣側に口を縛ったごみ袋がいくつも置かれているのが見えた。

翌朝にはなくなっていたが、それが毎回のようになった。

夏に入ると、風向きによってはこちらまでにおいが流れてくる。

洗濯物を干す間だけ窓を開け、終わったらすぐに閉める。そんな日が続いたある夕方、廊下で隣の奥さんと会った。

何度か迷った末、私は声をかけた。

「あの、ちょっといいですか。ベランダのごみ袋なんですけど……暑くなってから、うちのほうまでにおいが来ることがあって」

奥さんは少し困ったような顔をした。

「でも、うち、中が狭いんですよ。置いておく場所がなくて」

「そうなんですね。ただ、こちらも窓を開けられない日があって…。収集日の朝まで部屋の中に置いてもらうのは難しいですか」

すると、奥さんの表情が硬くなった。

「でも、こっち側に置いてるだけですよね。うちの敷地なんだから、そこまで口を出さないでください」

思っていたより強い返事に、私はそれ以上言えなかった。

それからしばらくして、特に暑かった夜に、また強いにおいが入ってきた。翌日、玄関前で奥さんと会ったので、私はもう一度だけお願いした。

「前にもお話ししたんですけど、昨日はかなりにおいが入ってきていて…。何とかしてもらえませんか」

奥さんはため息をつくように言った。

「だから、前にも言いましたよね。うちの敷地なんだから口を出さないでください」

同じ言葉を二度聞き、私は直接話すのはもうやめようと思った。

全戸に貼り出された、一枚の紙

言い返したい気持ちはあったが、飲み込んだ。ここで言い争っても、また同じことになるだけだと思ったからだ。

翌日、管理会社に電話をかけた。

「隣のお宅だけを責めてほしいわけではないんです。ただ、ベランダにごみ袋を置くことについて、建物全体に案内してもらうことはできますか」

担当者は事情を聞いたあと、落ち着いた声で答えた。

「分かりました。特定のお宅への注意ではなく、共用部の使い方とごみ出しについて、全戸にお知らせする形にしますね」

「できれば、うちから相談したとは分からない形でお願いしたいです」

「はい。個別のお部屋が分かるような内容にはしません」

二週間ほどして、集合玄関に一枚の紙が貼り出された。

ベランダにごみ袋を置かないこと、ごみは決められた日時に集積場所へ出すこと。特定の部屋を名指しする内容ではなく、同じ案内が回覧でも全戸に知らされた。

その後しばらくして、廊下で隣の奥さんとすれ違った。

奥さんは少し気まずそうに目をそらしてから、小さな声で言った。

「…あれから、ごみは中に置くようにしました」

私は一瞬迷ったが、短く返した。

「そうですか。ありがとうございます」

それ以上、どちらも何も言わなかった。

それから、仕切り板の向こうにごみ袋が置かれることはなくなった。

翌年、夏のはじめの朝。私は久しぶりに窓を大きく開けた。

風が部屋を抜け、カーテンがふわりと持ち上がる。ベランダで洗濯物を干していた夫も、去年は窓を閉めきっていたことを覚えていた。

「今年は、普通に開けられそうだな」

「うん。やっぱり風が入ると全然違うね」

隣同士だからこそ、直接言い合うだけでは解決しないこともある。あの夏のことを思い出すたび、そう感じている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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