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夜勤明けの一杯が疲れた心と体に沁みわたる…「ランチ酒」に癒やされるアラサーバツイチ女性の悲喜こもごもを描く、原田ひ香による人気小説のコミック版【書評】

  • 2026.9.10

【漫画】本編を読む

『ランチ酒』(原田ひ香:原作、高田サンコ:漫画/KADOKAWA)は、夜勤明けの女性が、「昼間から酒を飲む」というささやかな贅沢で疲れた心を回復させていくコミック。『三千円の使い方』(中央公論新社)などで知られる原田ひ香氏の同名小説を漫画化した作品だ。

主人公・犬森祥子は、「見守り屋」という少し特殊な仕事をしている。依頼人の家へ泊まり込み、夜の間、高齢者や、夜の仕事をする母親の子どもなどを見守る仕事だ。孤独死対策、認知症、家族問題と、祥子が向き合う現場には現代社会が抱える問題などが映し出される。そんな彼女の唯一の楽しみが、仕事終わりに味わうランチ酒なのだ。

昼から飲むという背徳感はもちろんだが、生きるため、回復するためのご褒美として描いているところが斬新だ。夜通し働き、疲れ切った体で店へ入り、喫茶店の洋食や居酒屋ランチをつまみに酒を飲む。その瞬間に祥子の張り詰めていた心が緩むのだ。焼き魚に日本酒、串焼きにハイボール、濃い味の定食にビールと飯テロ級の料理描写と相まって、その幸福感につい喉を鳴らしてしまうだろう。

祥子自身もまた、離婚や元夫と暮らす娘との関係など、人生に傷を抱えている人物だ。依頼人たちの事情に触れるたびに彼女自身の孤独や迷いも浮かび上がり、「これからの人生」を考えざるを得ない場面が描かれる。そのほろ苦さが本作を「大人のグルメ漫画」にしている。昼酒にはどこか「ダメな大人」のイメージがある。しかし祥子の場合、それは怠惰などではなく自分を壊さないための儀式だ。働き、疲れ、訳アリの人々と関わり続けたからこそ、誰にも邪魔されずにひとりでリセットする時間が必要になるのである。

美味しいものは、人生の問題を根本的に解決してくれたりはしない。だが「もう少し頑張ろう」と思える力をくれるには十分だ。本作は、そんな食事と酒の力を優しく描き出す。疲れた体に入れる最初の一杯のように、じんわりと心に染みる作品だ。

文=練馬麟

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