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「ちょっと写真撮るだけだから」結婚式でケーキの前をふさいだ親戚。だが、新婦があとで漏らした一言

  • 2026.9.11

乾杯のあとから、声だけが大きくなっていった

従兄弟の結婚式に出たのは、数年前の秋だった。親族席は円卓が三つ並んでいて、私はその端に座っていた。

披露宴も後半に入ったころ、すぐ近くの席にいた新郎側の親戚の男性が、グラスを持ったまま何度も立ち上がるようになった。最初のうちは、円卓の全員が笑って見ていた。

「え、料理これだけ?もうちょっと何かないの?」

「あとさ、飲み物も。もう少し持ってきてよ」

皿を下げにきた若いスタッフが、「確認してまいります」と頭を下げて厨房のほうへ戻っていく。

ところが、戻ってくるたびに男性はまた何かを言った。少しずつ声も大きくなり、気づけば私たちの円卓から会話が消えていた。

隣の叔父が、こちらへ顔を寄せた。

「あの人…新郎さんのほうの親戚なのか?」

「たぶん。私も会ったことないです」

叔父は「そうか」とだけ言って、男性のほうをちらりと見た。

やがて司会の女性がマイクを持ち直し、ケーキ入刀の案内を始めた。照明が落ち、白いケーキが正面へ運ばれてくる。

新郎新婦が並び、ナイフに手をかけた。

その瞬間だった。

男性が椅子を大きく鳴らして立ち上がり、スマートフォンを手に前へ出た。

「ちょっと、写真撮るから。そこ、どけて」

親族席の前へそのまま入り込み、私の視界は男性の背中で完全にふさがった。

スタッフがすぐ近くまで来た。

「お客様、恐れ入ります。こちらからでもお撮りいただけますので…」

すると男性は振り返り、少しむっとした顔をした。

「いや、俺、親族だから。近くで撮らせてよ」

「ほかのお客様もいらっしゃいますので、こちらへお願いできますか」

「ちょっと撮るだけだって」

男性は案内を遮るように片手を出し、そのままスマートフォンを構えた。

二人分の影がケーキの上に伸び、シャッター音だけが何度も続いた。

司会の声も止まっていた。

新郎新婦はナイフに手を添えたまま、困ったように顔を見合わせている。新婦が一度だけ小さく息を吐いたのが、離れた席からでも分かった。

私も何か言ったほうがいいのかと思った。

けれど新郎側の親戚だと聞いていたこともあり、誰が声をかけるべきなのか分からない。円卓の誰も動けないまま、時間だけが過ぎていった。

男性がようやく席に戻ったのは、そこから五分ほど経ってからだった。

「はいはい、もういいよ」

何事もなかったように椅子へ腰を下ろす。

司会が少し間を置いてから進行を再開したが、さっきまでの華やかな空気は戻らなかった。

年が明けてから、従兄弟と入った定食屋で

正月を過ぎたころ、従兄弟と昼を食べる機会があった。

式の写真を何枚か見せてもらっているうちに、私はずっと気になっていたことを聞いた。

「ねえ、あのときの人って…結局、どういう親戚だったの?」

従兄弟は一瞬だけ箸を止めた。

「ああ…あの人ね。父方の親戚。何年も会ってなかったらしい」

「やっぱり、あのとき大変だったよね」

そう言うと、従兄弟は箸を置いた。

「うん。あそこだけは、本当にきつかった」

少し笑おうとしたようだったが、すぐに表情が戻った。

「こっちは止めに行けないし、新婦にも悪いしさ。早く終わってくれって、それしか考えてなかった」

「誰か、声かけようとはしなかったの?」

「親も困ってたみたい。下手に言って、もっと騒がれても困ると思ったんじゃないかな」

従兄弟はそこで少し黙り、お茶を一口飲んだ。

「結局、一番ちゃんと声かけてくれたの、会場のスタッフだったんだよ」

それを聞いて、あの日、男性の横で何度も頭を下げていたスタッフの姿を思い出した。

「新婦さんは、何か言ってた?」

従兄弟は小さく息を吐いた。

「『あの五分、長かったね』って。それだけ」

責めるような言い方ではなかったという。

だからこそ、その言葉が余計に残ったのだと従兄弟は言った。

会計を済ませて外に出ると、道路の向かいにある別の式場の看板が光っていた。

従兄弟はそれを一度だけ見上げたあと、「じゃあ、またな」と手を上げ、駅のほうへ歩いていった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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