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「うちの子の晴れ舞台なんだから」子供の発表会で三脚を下ろさない保護者。だが、隣の席の人が注意した結果

  • 2026.9.10
「うちの子の晴れ舞台なんだから」子供の発表会で三脚を下ろさない保護者。だが、隣の席の人が注意した結果

プリントには、そう書いてあった

去年、息子の幼稚園の発表会がありました。

会場はホールで、事前に一枚の案内プリントが配られていました。

そこには、撮影は決められた立ち見スペースから行うこと、客席では後ろの人の迷惑になるような撮影をしないことが書かれていました。

当日の会場にも、同じ内容の案内が出ていました。

劇が始まってすぐのことです。

二列前に座っていた方が、大きな三脚を自分の席の前に立てました。その隣の方も、カメラを両手で高く掲げています。

ちょうど息子が出ているあたりが、ほとんど見えなくなりました。

「え…」

思わず声が漏れましたが、それ以上は何も言えませんでした。周りからも小さなため息や、椅子を動かす音が聞こえます。

私の膝の上には、あのプリントがありました。

書いてあるのに。みんな読んでいるはずなのに。

そう思いながら、私は折り目を指でなぞっているだけでした。

すると隣に座っていた方が少し身を乗り出し、二列前へ声をかけました。

「すみません。後ろからだと、舞台が見えなくなってしまって…。三脚、少し下げてもらえませんか」

責めるような言い方ではありませんでした。むしろ、かなり気を遣っているように聞こえました。

三脚のそばにいた方が振り返りました。

「でも、うちの子の晴れ舞台なんだから、ちゃんと撮ってあげたいんです」

隣の方は少し戸惑いながらも、もう一度言いました。

「お気持ちは分かるんですけど、後ろの人がほとんど見えなくて…」

すると相手は、少し声を落として言いました。

「そんなに邪魔ですか?見えないなら、そっちが少しずれればいいですよね」

言ってくれたのは、隣の方だった

その瞬間、私は何か言わなければと思いました。

私も見えません、と。

でも、声が出ませんでした。

隣の方は一瞬こちらを見ました。助けを求めたわけではなかったのかもしれません。

ただ、その目を見たとき、私は余計に何も言えなくなってしまいました。

「…分かりました」

隣の方はそう言って座りました。

係の方は舞台脇にいて、客席でのやり取りには気づいていないようでした。三脚はそのまま立ち続け、劇は十五分ほどで終わりました。

息子の姿は、ときどき人の頭や三脚の隙間から見える程度でした。

拍手が起こり、舞台が暗くなったあと、隣の方が私に小さな声で言いました。

「すみません。変な空気にしちゃいましたね」

私は慌てました。

「いえ、そんな。私も見えなかったので…」

するとその方は、少し困ったように笑いました。

「やっぱり、見えなかったですよね」

その一言が、胸に刺さりました。

「私もですって、さっき言えばよかったです」

ようやくそう言うと、その方は首を横に振りました。

「いや、私が勝手に言ったことなので。気にしないでください」

それでも私は、気にせずにはいられませんでした。

プリントはしばらく捨てられませんでした。

今も引っかかっているのは、三脚そのものより、あのときの自分です。

隣の方は、みんなが困っていることを一人で口にしてくれました。そして言い返されたときも、一人でした。

私があのとき、たった一言、

「私も見えません」

と言っていれば、少なくとも一対一のやり取りにはならなかったはずです。

誰かが声を上げたとき、自分も同じことで困っているなら、今度は黙らずに言いたい。

あの発表会を思い出すたび、そう思います。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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