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つり革に何度も手を伸ばしていた小さな子ども。「危ないな」と見ていた私、だが、座っていた男性の行動に感じたこと

  • 2026.9.6
つり革に何度も手を伸ばしていた小さな子ども。「危ないな」と見ていた私、だが、座っていた男性の行動に感じたこと

背伸びをして、つり革に手を伸ばしていた

朝の電車は、いつも同じくらい混んでいる。

座れないことも珍しくなく、私はその日もドアの脇に立って、窓の外を眺めていた。

途中の駅から、小さな子どもを連れたお母さんが乗ってきた。人の間を抜けて、私の斜め前で止まる。

子どもは頭の上にあるつり革へ両手を伸ばしていた。

背伸びをすると、ようやく指先が輪にかかるくらいだった。

電車が揺れるたびに体が傾き、そのたびにお母さんが肩や腕を支えていた。

危ないな、とは思った。

でも、私は何も言えなかった。

周りを見ると、座っている人たちは目を閉じていたり、手元を見ていたりする。

誰かが意地悪をしているわけではない。ただ、それぞれ自分のことで精いっぱいに見えた。

「どうぞ」と、男性が席を立った

しばらくして、少し離れた席に座っていた男性が本を閉じた。ページにしおりを挟み、鞄を持って立ち上がる。

それから少し脇へよけ、お母さんのほうを見て声をかけた。

「どうぞ、座ってください」

お母さんは驚いたように男性を見た。

「いえ、大丈夫です」

男性は急かす様子もなく、もう一度「どうぞ」と空いた席を示した。

「でも、すぐ降りますので…」

それでも男性が笑ってうなずくと、お母さんは少し迷ってから「ありがとうございます」と頭を下げた。そして、つり革に手を伸ばしていた子どもを空いた席へ座らせた。

子どもは座席に上がると、ほっとしたように窓のほうを向いた。

少ししてから、男性を見上げて言った。

「ありがとうございます」

お母さんに促されたわけではなかった。

男性は少し笑って、「うん」と小さくうなずいた。その姿を見ていた近くの女性も、子どものほうを見て笑っていた。

男性は、その次の駅で降りていった。

私にも小さい子どもがいる。子どもを連れて電車に乗ると、席を譲っていただいても、反射的に「大丈夫です」と答えてしまうことがある。せっかく座っていた人を立たせるのが申し訳なく感じるからだ。

だから、あのお母さんが何度か断った気持ちも、少し分かるような気がした。

けれど、あの日の男性は嫌な顔ひとつせず、ただ同じ調子で「どうぞ」と言っていた。子どもも、自分からお礼を口にしていた。

それから私は、子どもと一緒のときに親切にしてもらったら、何度も遠慮するより、まず「ありがとうございます」と受け取るようになった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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