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50代、自分で選んだ感覚を大切に。作家・一色さゆりさんからのメッセージ【新刊インタビュー】

  • 2026.9.5

デビュー作『神の値段』以来、アートの世界を題材にした作品を書き続けている一色さゆりさん。新作小説『モナリザの裏側』に一色さんが込めた思いを伺いました。

自分で選び取った感覚を手放さないでほしい

一色さゆりさんの新作『モナリザの裏側』は、アートを題材にした5篇の連作短編集。舞台は、オスロ、ミュンヘン、NY、京都、パリと多彩で、描かれる時代も異なります。
 
「最初に決めていたのは、美術館と名画が出てくること。それから、いろいろな都市を舞台にして、その街の魅力を描くことでした。でも書き進めるうちに、なぜ人は芸術や読書体験を必要とするのか、ということがテーマになっていきました」
 
主人公たちは皆どこか不器用で、人生の迷いを抱えています。人生の波を経てきた大人世代なら、思わず自分を重ねてしまうかもしれません。
 
「『オスロで光の種をまく』は、人生との向き合い方が一番強く出た作品だと思います。全編通して、つまずいている人を書こうと思っていたわけではないのですが。もしかして自分がつまずいているのかも(笑)」
 
そんな彼らが、アートを介して人生や葛藤と向き合う。その道のりは暗くとも、先に確かな光が見えるようです。
 
「読んだあと、落ち込んでしまうような話より、少しでも前向きになれるものを書きたい、と思っています。自分自身が前向きになりたいという気持ちが入っているんでしょうね」そう微笑む一色さんご自身も、アートに救われた経験があるとか。
それは、福田平八郎という日本画家の作品『雨』を初めて鑑賞したときのこと。
 
「瓦に雨粒が染みていく様子を描いた小さな絵なのですが、最初はすごくシンプルに見えるのに、よく見るとものすごく繊細で、こんな限られた情報で、人の想像力を広げられるんだ、と衝撃を受けたんです。心が救われた感覚がありました。18歳、浪人時代の頃です」
 
表題作『モナリザの裏側』には、「なにが本物なのかは見た人それぞれが決めればいい」という印象的な一節があります。
その言葉は、他の作品にも通底する読者へのメッセージのようにも感じます。
 
「はい。女性は特に、結婚や子育て、家族の事情など、必ずしも自分の意思で選んだわけではない道を歩んでいるような感覚に陥りがちです。私自身もそんな時期がありました。そんな中でも、これは自分で決めた、と信じる感覚は大事にしたい。価値を決めるのは、自分自身なんですよね」

『モナリザの裏側』 一色さゆり ¥2,145(新潮社)

母親とルーヴル美術館を訪れ、ある絵にまつわる父と母の秘密を聞かされる『モナリザの裏側』、折れた心を立て直すためにオスロに向かった男性が、ムンクの絵に救いを見出す『オスロで光の種をまく』など、名画に導かれ、自らの人生に向き合う人々を描く5篇。
アート好きはもちろん、自分自身の価値観と向き合いたい人にも手に取ってほしい1冊。

【執筆のお供】 爽やかな香りをまとってもうひと頑張り

執筆中は好きな香りのハンドクリームや保湿ミストでリフレッシュ。「でも、執筆で苦しんでいるときに使っていた香りを嗅ぐと、その焦燥感が蘇って辛くなることも」。
そんなときは香りをチェンジするとか。執筆は朝型。朝9時頃から集中して書き始め、午前中の3時間が勝負。

【私の好きなもの】 コレクションはアート柴犬がいるとたまりません!

「若い作家さんの作品をギャラリーで買うこともあります。絵って、時間をかけて見るほど、自分の中に残っていくんですよね。柴犬が好きなので、柴犬がモチーフだったりすると嬉しくて(笑)」。
右は友人の修復士・松丸美都さんの作品で13世紀頃の写本の模写。
左下には作者のサービスで柴犬が登場します。左は大学生の作品でムンクの『叫び』が柴犬に。

photograph: Chiemi Nakajima text: Mika Miyoshi
 
大人のおしゃれ手帖2026年8月号より抜粋
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大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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