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4人の写真家と見つめる、京都の余白の記憶

  • 2026.9.25

京都の町を深く知る4人の写真家たちが、古都の伝統建築に宿る「余白」を写し取った。レンズの向こう側にひっそりと立ち現れたのは、気配、形、静寂、光と影、そして余韻。自身が綴ったテキストとともに紹介する、これは、写真家と見つめる余白の記憶。

special thanks: Yusuke Nakanishi (KYOTOGRAPHIE) / text & edit: Masae Wako

京都〈西芳寺 湘南亭〉、〈日向大神宮〉外観、〈厭離庵〉内観
BRUTUS

西芳寺 湘南亭

写真・文:瀧本幹也

京都〈西芳寺 湘南亭〉
BRUTUS

視覚に心地よい余白は、建築の形だけに宿るものではない。
静寂に耳を澄まし目を閉じると、茶の湯が尊ぶ「間」が意識の奥に浮かび上がってきた。

「苔寺」として知られる西芳寺には、千利休の次男・千少庵が建立(こんりゅう)した茶室〈湘南亭〉がある。簡素ながら一切の無駄を削ぎ落としたその姿は、苔庭と響き合う静かな気品をたたえている。柱間や窓、刀掛けの高さの取り方までが、視覚に心地よい調和をもたらしている。

だがその余白は、建築の形だけに宿るものではない。コロナ禍で人影が絶えたひととき、静寂に耳を澄まし目を閉じると、茶の湯が尊ぶ「間」が意識の奥に浮かび上がってきた。建物の比率が導く余白は、自然とともに心の景色までも映し出していた。


Information

西芳寺 湘南亭

行基の開創と伝わる。〈湘南亭〉は重要文化財。

さいほうじ・しょうなんてい
住所:京都市西京区松尾神ヶ谷町
参拝は事前申込制


profile

瀧本幹也(写真家)

たきもと・みきや/1974年愛知県生まれ。『そして父になる』(是枝裕和監督)など映画撮影も。作品集に『LUMIÈRE』『PRIÈRE』や、特別な許可を得て正倉院をモノクロームで撮影した『正倉院』(すべてMT Gallery)。

日向大神宮

写真・文:八木夕菜

京都〈日向大神宮〉外観
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余白とは、重なった時空の中に生まれる、濃厚なイマジネーションの詰まった空間。
あらゆるものを静かに生み出す可能性が漂っているように感じられます。

重なり合う時空の中に漂う余白の感覚。古墳時代の5世紀に創建されたと伝わる日向大神宮。境内に息づく自然や建築、積み重なる歴史の気配からは時空を超えるような余白が立ち上がり、存在や意識がふっと軽やかになります。

遠い伊勢へ旅することが難しかった時代、人々はここで京都にいながらお伊勢参りの心を寄せてきました。作品は、多重露光と多重印刷の技法を用いて制作しました。幾重にも重ねられたイメージは互いに打ち消し合い、やがて輪郭を失い、静かにひらけた余白が浮かび上がります。


Information

日向大神宮

外宮の祭神は天津彦火瓊々杵尊(あまつひこほのににぎのみこと)、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)。

ひむかいだいじんぐう
住所:京都市山科区日ノ岡一切経谷町29
TEL:075-761-6639
営:社務所受け付け10時~16時
休:無休


profile

八木夕菜(写真家、美術家)

やぎ・ゆうな/1980年兵庫県生まれ。ニューヨーク・パーソンズ美術大学建築学部卒業。京都を拠点に活動。視覚を揺さぶる平面や立体作品、インスタレーションを用い、「見る」体験を通して物事の真理を追究。

法然院

写真・文:中島光行

京都〈法然院〉
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訪れた時の差し込む光や気配の記憶が刻まれることで、
その場所が自分の場所になる感覚がある。それが僕にとっての余白なんだろう。

法然院は僕の地元にあり、幼い頃からよくお邪魔しているお寺の一つ。情報が溢れ返るこの時代に、事前に調べて写真で見たような風景を確認して終わりではなく、訪れた時の差し込む光や気配の記憶が刻まれることで、その場所が自分の場所になる感覚がある。それが僕にとっての余白なんだろう。


Information

法然院

法然上人が専修念仏の法灯を掲げた名刹。浄土宗系単立の寺院で、山号は善気山。方丈は、伏見にあった後西天皇皇女の御殿を1687年移建した。阿弥陀三尊を象徴する三尊石が配置された浄土庭園には、清泉・善気水が絶えず湧き出ている。

ほうねんいん
住所:京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町30
TEL:075-771-2420
営:6時~16時
休:無休
伽藍内非公開。年2回一般公開あり


profile

中島光行(写真家)

なかじま・みつゆき/京都府生まれ。京都を拠点に活動。寺院、建築、庭園、職人などの撮影も多数。ユニークな視点で新たな寺院撮影の潮流を作っている。幅允孝らと立ち上げた出版レーベル〈すなば〉でも注目される。

厭離庵

写真・文:須藤和也

京都〈厭離庵〉内観
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静寂の中でふと感じるのは、普段は気にも留めない風の音、鳥・虫の声。
撮影をすることが、一種の瞑想体験のような感覚です。

厭離庵の参道の道すがら不思議と気持ちが落ち着いてきます。撮影を定期的に行う中で、普段は気にも留めない風の音や鳥・虫の声を、聴きに行くというよりは庵の静寂の中でふと感じてきます。撮影をするということが、一種の瞑想体験のような感覚です。

またお堂の中に入ると、光と陰影の美しさや、その中で浮かぶご住職の玄果さんの凜とした所作、座禅から、「だいじなこと」に気がつく瞬間があります。


Information

厭離庵

臨済宗天龍寺派の寺院。藤原定家の嵯峨の山荘跡に江戸中期に建てられた。明治に再建されて以後尼寺に。境内には茶席〈時雨亭〉もある。

えんりあん
住所:京都市右京区嵯峨二尊院門前善光寺山町2
TEL:075-861-2508
通常非公開だが秋に一般公開あり


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須藤和也(写真家)

すどう・かずや/愛知県生まれ。京都・岡崎に写真画廊〈風光 huko〉開業。日本の風土や営み、伝統、文化を次世代に伝えることをテーマに撮影。主な作品集に10年にわたり清水寺を撮った『gleam』(ディスカバリー号)。

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