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「控室に置いてきた、封筒を丸ごと忘れた」ご祝儀の封筒をめぐって固まった空気。だが、新婦の母の一言で空気が一変

  • 2026.9.6

列がはけて、白い封筒は控室へ下がった

大学時代の友人の結婚式だった。私は受付ではなく、招かれた側だった。

受付は共通の友人二人が担当していた。私は少し早く着いたため、荷物を預けたあとも受付の近くにいて、列が少しずつ短くなっていくのを眺めていた。

やがて最後の招待客が受付を済ませ、台の上が片づき始めた。芳名帳とペンが端に寄せられ、預かったご祝儀は大きめの白い封筒にまとめられていた。

受付が二人だったため、封筒も2つあった。それぞれが受け取った分を確認しながら、芳名帳を指で追っている。

「あとは数えるだけだね」

「先に控室に置いてこようか」

二人はそう話して、白い封筒を持って控室へ向かった。

私も自分の席へ戻った。しばらくすると披露宴会場の扉が閉まり、照明がゆっくり落ちていった。

もうすぐ、新郎新婦の入場だった。

入場まで二分、友人の顔色が変わった

そのとき、受付をしていた友人が通路の途中で急に立ち止まった。

さっきまで普通に話していたのに、明らかに顔色が違う。私のところまで来ると、袖口をつかんで小さな声で言った。

「控室に置いてきた、封筒を丸ごと忘れた」

どうやら、席に戻ってから急に気になったらしい。

「落ち着いて。まず鞄の中を見て」

友人は鞄を開け、底まで何度も確かめた。それでも白い封筒は出てこない。

受付の台にも戻ってみたが、そこにはもう何も残っていなかった。

もちろん、控室へ置いてきたこと自体は覚えている。

ただ、受付を任されていた友人にとっては、大切なご祝儀を手元から離したまま披露宴が始まることが急に不安になったようだった。

「取りに行ったほうがいいかな」

しかし控室は会場の扉とは反対側にある。すでに入場準備が始まっていて、今から回れる道もなかった。

入場までは、あと二分ほどだった。

近くにいた親族の方たちも、こちらの様子に気づいていた。

誰かが責めたわけではない。それでも友人が焦るほど、周りもどう動けばいいのか分からなくなっていった。

そこへ、新婦のお母様が近づいてこられた。

事情を聞くと、少しだけ考え、それから落ち着いた声で言われた。

「大丈夫、封筒は2つとも控室にあるから」

そして続けた。

「なくなったわけじゃないんだから、あとで集計すればいいのよ」

友人はまだ何か言おうとしていたが、お母様は会場の扉を指して、笑いながら言われた。

「今日はそっちじゃないでしょう」

その一言で、止まっていた空気が動いた。

友人もようやく席へ戻り、ほどなくして照明が変わった。音楽が流れ、扉が開く。

隣にいた友人が、小さな声で言った。

「あの人、強いね」

お開きのあと、控室をのぞくと、白い封筒は置いたままの場所にあった。中身も全部そろっていた。

新郎新婦は、今もこの出来事を知らない。

あのとき場を戻したのは、封筒が見つかったことではなかった。

「なくなったわけじゃない」と先に言ってもらえたことで、友人もようやく、自分が今すぐ何とかしなければならないわけではないと気づけたのだと思う。

今でも結婚式で受付の台を見ると、あの日、お母様が静かに扉を指した姿を思い出す。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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