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オリジナリティの在りか、ものづくりの神髄【建築家、坂 茂のヴィジョン―未来をつくる建築 vol.2】

  • 2026.9.3
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紙、木、竹、カーボンファイバーなどの素材を使い、力強く美しい建築を作り出す建築家、坂 茂さん。今回は「木」という素材を通して、世界が認める独創性の源から建築への姿勢まで、ものづくりの根幹となる精神についてお話を伺います。

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<Profile>
坂 茂(ばんしげる)/建築家

建築家、NPO「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)」代表、芝浦工業大学特別招聘教授。1957年東京生まれ。フランス芸術文化勲章コマンドゥール、プリツカー建築賞、高松宮殿下記念世界文化賞、紫綬褒章、米建築家協会ゴールドメダルなどを受章および受賞。文化功労者。

長い時間やクラフトマンシップから醸成される建築美

<strong>「Haesley Nine Bridges Golf Clubhouse(へスリー・ナインブリッジズ・ゴルフ・クラブハウス)」<br></strong>ゴシック建築を思わせる荘厳さが、木材によりモダンな軽やかさへと昇華され、森のような美しいシルエットに。六角形と三角形が幾何学的に組み合わさった木造グリッドの連続アーチは21本の柱がフラットな大屋根を支える構造システムで、12本の線材を束ねて強度を担保した柱をはじめ、さまざまな創意工夫の結晶。石の基壇部を随所に採用するなど、デザインには韓国の伝統も意識。欧米の国際的な建築賞を数々受賞した作品。(2010年)<br>URL/<a href="https://www.haesley.com/english/index.asp" target="_blank" rel="nofollow">www.haesley.com/english/index.asp</a> Hiroyuki Hirai

技術の発展は物事を進歩させる。例えばコンピューターの進化で、医療や金融の分野は発達した。しかし建築は、技術が開発されるほど、美しさを失う。現存する過去の素晴らしい建物は、より時間をかけて設計、建設され、クラフトマンシップも相まって、醸成された美がある。片や現代の技術は時間を短縮し、効率化を促すが、かつてのような優れた建物は造れない。技術の発展とものづくりを考えるに、この建築の特性に思い至る。

私は設計、構造、ディテールと、自ら手掛ける建築家だ。スケッチは手描き。コンピューターで描いた絵は脳に通ずるが、手描きは心に通じるとも考えている。また「紙」をはじめ、建築にとって新しい素材の活用にも取り組んでいる。紙管、竹の集成材、カーボンファイバーの3種の軽い素材を用いた、昨年の大阪・関西万博のパビリオン「ブルーオーシャン・ドーム」は、その例である。

子どもの頃、大工に憧れていたのだが、「木」は当時から好きな素材だ。構造材にも仕上げ材にもなる上、断熱性能を持つ木は、樹種で強度が異なり、表情も多様。家具だって作れる。つくづくオールマイティな自然素材である。頑丈な無垢材の入手が困難な今、ヨーロッパではエンジニアリングウッドという強度と扱いやすさを増した新しい木材の開発が盛んだが、私もボルトだけで結合できるL字形木材を開発中だ。

3次元に組んだ木造グリッド連続アーチの大屋根を掲げる構造を考えたのは、今回取り上げたソウル近郊の「へスリー・ナインブリッジズ・ゴルフ・クラブハウス」だ。フランスの「ポンピドゥ・センター・メス」の木造グリッドシェルの大屋根を気に入った施主の、希望に応えた形である。世界的に木造ブームが続くが、木造の構造や加工の技術は実は難しく、専門の技術者もいる。この木造アーチの加工は、スイスとドイツでのみ可能だったものだ。

築1000年を超える木造建築を誇る日本は、今や木造後進国である。厳格過ぎる法規のもと「木造のガラパゴス化」も否めない。しかし木造の後退は、政策や税金的な事情で、材料の問題ではない。確かに1センチ角の断面では鉄の強度にはるか及ばないが、弱い素材も特性に合った設計工夫をすれば、強い建物ができる。私の興味はそこにある。

建築は時々の流行に影響を受けるものだ。ただ、歴史の中には、時代を追うことをせず、独自のスタイルを貫いた建築家がいる。構造をデザインに取り入れたガウディや、独特な手法を確立した村野藤吾などがそうだ。そんな建築家人生を送りたいと思う。私が独自の素材の研究や開発に注力するゆえんである。

初出:リシェスNo.56 2026年6月26日発売
INTERVIEW & TEXT:MAYUMI YAWATAYA
EDITING:YUKO KAMIYAMA

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