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「席に座るな、出てきなさい、走れるやろ」見学の席に座っていた子に、観客席から飛んできた言葉

  • 2026.8.31
「席に座るな、出てきなさい、走れるやろ」見学の席に座っていた子に、観客席から飛んできた言葉

校庭に、その声だけが響いた

子どもの運動会でのことです。よく晴れた日で、校庭には朝から大勢の保護者が集まっていました。

午後の競技が始まるころ、同じクラスの子が見学用の椅子に座っているのが見えました。

先生と少し話したあと、その子は競技には出ず、そのままテントの近くで見学することになったようです。

私は「今日は出ないんだな」と思い、そのまま競技を見ていました。

すると少しして、観客席から大きな声が飛んできました。

「席に座るな、出てきなさい。走れるでしょ!」

声を上げたのは、その子のお母さんでした。

「せっかく運動会に来たんだから。ほら、行っておいで」

参加している姿を見たいという気持ちが強かったのでしょう。けれど、その子は椅子に座ったまま、うつむいていました。

「ほら、みんなやってるよ」

もう一度声が飛びましたが、その子は動きません。

周りの保護者も気づいていました。ただ、親子のやり取りに簡単には口を出せません。私も何を言えばいいのか分からず、黙って見ていました。

「今日はここで見てようか」

しばらくすると、近くにいた先生がその子のところへ歩いてきました。

椅子の横にしゃがむと、先生は周囲には聞こえないくらいの声で何かを尋ねました。

その子が小さくうなずくと、先生は穏やかに言いました。

「そっか。じゃあ今日はここで見てようか。無理しなくていいよ」

先生はそれ以上何かをさせようとはせず、競技のほうへ戻っていきました。

観客席を見ると、お母さんはまだこちらを見ていました。

けれど、今度は何も言いませんでした。

やがて同じクラスの子どもたちの競技が始まりました。

それまで下を向いていたその子も、友達が走り始めると顔を上げました。

目の前をクラスの子が通ると、小さな声で「がんばれ」と言います。

走り終えた子がこちらに気づいて手を振ると、その子も座ったまま手を振り返していました。

観客席から、それ以上大きな声が聞こえることはありませんでした。

帰り際、母親の声は少し違っていた

運動会が終わり、子どもたちがそれぞれ保護者のところへ戻ってきました。

その子もゆっくり立ち上がり、お母さんのところへ向かいました。

お母さんはしばらくその子の顔を見てから、少し落ち着いた声で聞きました。

「まだしんどい?」

その子がうなずくと、お母さんは持っていた水筒を渡しました。

「そっか。じゃあ帰ろうか」

さっき校庭に響いていた声とは、ずいぶん違って聞こえました。

お母さんも、せっかくの運動会だから出てほしいという思いが強くなってしまったのだと思います。

それでも、最後はもう無理に背中を押しませんでした。

励ますことと、今は難しいと受け止めること。その加減は、親にとっても簡単ではないのかもしれません。

並んで帰っていく親子の姿を見ながら、そんなことを考えた運動会でした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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