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「すみません、つい懐かしくて」読経前に話し続けた親戚。だが、住職の返しで空気が変わった瞬間

  • 2026.8.31
「すみません、つい懐かしくて」読経前に話し続けた親戚。だが、住職の返しで空気が変わった瞬間

線香の匂いのする本堂で

数年前、親戚の法事に行きました。

久しぶりに親族が集まる場で、「何年ぶりだろう」と思うほど顔を合わせていなかった人もいました。

本堂に入ると、畳の上に座布団が並び、壁際には椅子も用意されていました。線香の匂いが漂い、読経が始まるのを待つあいだ、みんな自然と声を落としていました。

そんななか、一人の親戚が懐かしそうに周りを見渡しました。

「いやあ、本当に久しぶりだな。元気だった?」

声をかけられた親族が、小さく笑ってうなずきます。

するとその親戚は、うれしそうにさらに身を乗り出しました。

「最近仕事はどう?そこに座って話そうよ。せっかく会えたんだからさ」

久しぶりの再会がよほどうれしかったのでしょう。返事を待つ間も惜しいように、次々と話しかけていきます。

「あのときのこと、覚えてる?ずいぶん昔だけどさ」

「うん、覚えてるよ。またあとで話そうか」

相手は苦笑しながら、少し声を落として返していました。

私も、注意するほどなのか迷いました。悪気があるようには見えません。ただ、静かな本堂では、その人の声だけが思った以上によく響きます。

「そうそう。それでさ」

話がまた続きかけた、そのときでした。

住職が入ってきて、ひと言だけ声をかけた

奥の襖が開き、住職が本堂に入ってきました。

親戚は「あっ」と小さく声を漏らし、そのまま口を閉じました。

住職は特に険しい顔をするでもなく、正面へ向かいます。そして座る前に、こちらを見て穏やかに言いました。

「皆さん、久しぶりですから、お話も尽きませんよね」

親戚が少し気まずそうに笑いました。

「すみません、つい懐かしくて…」

すると住職も、ほんの少し笑って続けました。

「せっかくですから、その続きはあとでゆっくり。まずは皆さんで手を合わせましょうか」

「はい」

親戚は今度こそ素直にうなずき、姿勢を正しました。

叱るような言い方ではありませんでした。それでも、その一言で本堂の空気が自然と切り替わったのを覚えています。

読経が始まると、その親戚も静かに手を合わせていました。

「そういえば、あの人はよく作ってくれたよな」

法要を終え、会食の席へ移ると、先ほどの親戚はしばらく料理を口にしていました。

ところが、誰かが故人の話をしたのをきっかけに、ぽつりと言いました。

「そういえば、あの人は料理がうまかったよな」

その声は、本堂で話していたときより少しやわらかく聞こえました。

「子どものころ、遊びに行くとよく作ってくれたんだよ。あれ、なんて料理だったかな」

向かいに座っていた親族が、すぐに顔を上げました。

「ああ、あれじゃない? よく大きな鍋で作ってたやつ」

「それそれ。懐かしいなあ」

別の親族も笑います。

「そんなことあったね。私も食べたことあるよ」

そこからは、故人との思い出が一つ出るたびに、別の誰かが「覚えてる」「そんなこともあった」と話に加わっていきました。

先ほどまで少し困っていた私も、いつの間にかその輪の中で笑っていました。

帰り道、住職の言葉を思い返しました。

「話さないでください」と止めたのではなく、「続きはあとで」と場所を変えただけでした。

久しぶりに会えたうれしさで、少し声が大きくなってしまうこともあります。

あの親戚の話好きなところも、会食の席ではみんなの記憶を引き出すきっかけになっていました。

同じ人の同じ言葉でも、話す場所とタイミングで、受け取られ方はずいぶん変わるのだと思った出来事です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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