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『新感染』ヨン・サンホ監督最新作『顔 -かお-』最速レビュー。関わった人全員が“醜い”と蔑む母の遺体がもたらす意味とは?【映画レビュー】

  • 2026.8.28
 ⓒ 2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.
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現代において我々が身近に目にするようになった人間の「負の感情」をこれでもかと突きつけてくる恐ろしい映画を見てしまった。「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016)でよく知られるヨン・サンホ監督の最新作、「顔 -かお-」である。

生まれつき目が見えないながらも韓国随一の篆刻家(落款印などを作る芸術家)と知られ、“生きる奇跡”と呼ばれたイム・ヨンギュとその息子ドンファンのもとに40年前に行方不明となっていた母チョン・ヨンヒの遺体が発見されたとの知らせが届く。イム・ヨンギュのドキュメンタリー番組を製作していたプロデューサーの提案をきっかけに、息子のドンファンは母の足跡を追うが、かつて彼女と関わった人々は口を揃えてこう言った。

“彼女は醜かった”と……。

映画は息子ドンファンの現代パートと、父イム・ヨンギュと母チョン・ヨンヒが出会った70年代の韓国を舞台に全編サスペンスフルに展開していく。

なかでも本作では「醜さ」が大きな主題となっている。

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イム・ヨンギュの妻でありドンファンの母であるチョン・ヨンヒは、かつて縫製工場で働いていた。彼女を知る人々から醜いと蔑まれ、さらには疎遠となっていた姉妹の記憶に残っているのも、その醜い容姿であった。ドンファンは母の人となりを知りたいものの、人々は彼女の容姿の醜さばかりを語り、あまつさえその容姿を根拠に彼女の人格までをも判断しているありさまだ。

しかし盲目であるが故に社会の脇へと追いやられていた若かりしイム・ヨンギュは、人格者として知られる縫製工場の社長から篆刻の腕を見込まれて工場の一角で商いを始める。こうしてドンファンの父と母は出会ったのだ。

果たしてイム・ヨンギュは目が見えないからこそ、容姿ではなく母の内面に惹かれたのか。

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映画はイム・ヨンギュのこんな言葉から始まる。

「目が見えないからこそ、“美しさ”とは何かを一心に考えるんだ」と。

この言葉は本作でもっとも重要な一節であり、クライマックスでイム・ヨンギュのこの言葉の真の意味に気付いたときは心が震えるほどの衝撃を受ける。

今、我々はSNSによってこれまで見えなかった他者の心の言葉を目にするようになった。そこには「美醜」をもっとも重要な価値とするルッキズムや、それらへの劣等感やコンプレックスなどが可視化されている。一方で、暴力や抑圧を受けた人々や、社会的弱者の存在を知ることができるようにもなったが、彼らの行動や主張を封じるようなトーン・ポリシング的な言葉も可視化され、かつてないほど人の心の醜さが浮き彫りになっている。

まさに本作の「顔 -かお-」は、我々がいま直面しているこうした醜悪な人間の心の闇がすべて詰まっている作品なのである。

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本作の監督であるヨン・サンホは、「新感染 ファイナル・エクスプレス」や続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」(2020)で知られ、近年ではNetflixのオリジナルシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」(2024)などを手がけるなど、一見すると派手なエンタテインメント作家のように思える。

しかし「新感染 ファイナル・エクスプレス」では市井の人を物語の中心に据え、人間のエゴや身勝手さを丁寧に描き、同作の前日譚として発表しているアニメ「ソウル・ステーション/パンデミック」(2016)では社会全体への辛辣な問いをも投げかける。さらに「啓示」(2025)で描いていた信仰への盲信は、現代の極端に固定化された価値観への風刺にも見てとれる。そして「顔 -かお-」はそういったヨン・サンホ監督の社会への鋭い眼差しのなかでも、とりわけ直球かつ鋭利な作品に仕上がっていると感じた。

本作「顔 -かお-」は、かつてないほど人間の本心がぶつかり合っている現代において、その“醜さ”を真正面から投げかけてくる映画である。

文=すずきたけし

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映画「顔 -かお-」

脚本/監督:ヨン・サンホ『新感染 ファイナル・エクスプレス』

出演:パク・ジョンミン『密輸1970』クォン・ヘヒョ『新感染半島 ファイナル・ステージ』

シン・ヒョンビン「賢い医師生活」イム・ソンジェ『非常宣言』ハン・ジヒョン『啓示』

2025年/韓国/韓国語/103分/シネスコ/5.1ch/原題:얼굴/字幕翻訳:朴澤蓉子/提供:ツイン、Hulu

/配給:ツイン

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