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連ドラ初主演、ナース役に挑んだ19歳。20年前、医療指導の先生を【質問攻め】にした人気女優の現在地

  • 2026.10.6
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2006年9月、「赤い羽根共同募金」中央伝達式に出席した石原さとみ(C)SANKEI

20年前の2006年9月、19歳の石原さとみは、半年ぶりにナース服姿でテレビへ戻ってきた。その年の1月期に主演を務めた連続ドラマ『Ns'あおい』(フジテレビ系)が、スペシャルドラマとして帰ってきたのだ。

半年というブランクがあったにもかかわらず、台本を読んだ時点で、気道確保や意識確認の動きが次々に頭に浮かんだ。医療用語も口をついて出る。だが、彼女が心を躍らせていたのは、手技の再現性だけではなかった。

石原は、なぜ点滴を2個使わなければいけないのか、といった細かな疑問を、医療指導の先生にぶつけていた。単なる段取りとして受け流すのではなく、その処置の必然性にまで踏み込んでいく。そうして言葉を交わすうちに、ふと気づけば、先生と医療の会話を成り立たせている自分がいた。そんな自分をすごいと笑い、医療は面白いですね、と続けた。

単に手順を頭に叩き込んだのではない。専門家と共通言語で話せる領域まで辿り着いた。19歳の少女が覚えた手応えは、まさにそこにあった。わからないことを問い、知らなかった世界の扉をこじ開けていく。その愚直なまでのアプローチは、20年後の2026年秋、同じフジテレビの主演ドラマに臨む彼女の言葉にも、そのまま息づいている。

「未知の世界」から指導係へ

時計の針を少し巻き戻そう。連ドラ版『Ns'あおい』の主演が報じられたのは2005年。高校を卒業し、本格的に俳優一本の道へ踏み出したばかりのタイミングだった。これが彼女にとって民放の連続ドラマ初主演。原作の漫画を読んだ石原は、病院を自分の中の「未知の世界」と呼び、そこを舞台にしたドラマにハラハラドキドキした。

彼女が託された主人公・美空あおいは、看護師歴3年目の23歳。本院の救命救急センターでのある事件が原因で、系列の桜川病院の内科病棟へ異動してきたという設定だ。まだ10代の石原が、現場の酸いも甘いも知り始めた4歳年上の職業人を演じる。発表のころには、初主演のプレッシャーも感じていた。

だが、1月から3月までの連ドラ放送を走り抜け、半年後の9月26日に放送された『Ns'あおい スペシャル 桜川病院最悪の日』で、あおいは新人看護師の指導係を任される立場へと成長を遂げていた。病院を未知の世界と呼んでいた少女が、劇中では新人に教える側に立っていた。

言葉の限られた少女と問い続ける看護師

もっとも、この年の石原さとみが直面していた壁は、看護師役だけにとどまらない。むしろ2006年は、大きな挑戦が続いた年だった。

初夏までは、テレビ朝日系のスペシャルドラマ『氷点』の主演のため、北海道での長期ロケに挑んだ。愛憎渦巻く運命に翻弄されるヒロイン・陽子には、共感できる部分がほとんどなく、難しかった。

そして8月31日からは初舞台『奇跡の人』の稽古へと突入する。挑んだのは、視力、聴力、言葉を失った三重苦の少女ヘレン・ケラー。手渡された台本は、動きを示すト書きが多く、読むのも大変だった。家庭教師アニー・サリヴァンとの激しい格闘シーンも待ち受ける。稽古初日、彼女は「けがは覚悟してます」と話し、並々ならぬ決意を見せた。

『Ns'あおい スペシャル』が放映されたのは、青山劇場での舞台初日をわずか8日後に控えた夜のことだ。点滴の数ひとつにまで理由を尋ねて臨んだ看護師役と、言葉を奪われた三重苦の少女役。対極というほかない二つの難役が、19歳の彼女のなかで同じ秋に並んでいたのである。

14年後の薬剤師役で深めた知識欲

その探究の情熱は、キャリアを重ねてからも顔を出す。2020年、石原はフジテレビの木曜劇場『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』で、主人公の病院薬剤師・葵みどりを演じる。同局のドラマで医療従事者を演じるのは、『Ns'あおい』以来実に14年ぶりのことだった。

すでに医師や看護師の役を経験していた彼女にとっても、医療の縁の下の力持ちである薬剤師の世界は未知の連続だった。しかし、薬の味や匂いにまで夢中になり、新薬もいつも勉強している原作のみどりの姿に、石原は自分と似た部分を感じていた。物事を深く知りたいという知識欲が、彼女自身にもあるからだ。

薬の効能は、演じる自分自身が理解していなければいけない。そう考えた石原は、効能や投与量まで教わりながら撮影を進めた。かつて点滴の本数の理由を尋ねていた少女が、今度は薬の投与量と向き合っていた。クランクアップのあいさつでは、葵みどりを演じることで、励ますことや寄り添うことの意味を学べたと振り返っている。

悪女ゴネリルを経て野木亜紀子との再タッグへ

そして2026年5月、彩の国さいたま芸術劇場で上演されたシェイクスピア劇『リア王』で、彼女は長女・ゴネリルを演じた。ヘレン・ケラーで初舞台を踏んでから、20年近く。開幕に寄せたコメントで、彼女はゴネリルという悪女を、思考の速さと強さ、愛に溺れ崩壊する脆さを併せ持つ女性と分析し、彼女の正義と貪欲さを掘り下げて役を生き切ると宣言してみせた。

そんな彼女が、2026年10月7日スタートのフジテレビ水10ドラマ『ポリティカルパン』で、新たな主演作に臨む。タッグを組むのは、2018年の『アンナチュラル』(TBS系)以来、約8年ぶりとなる脚本家・野木亜紀子。演じる如月弥生は、架空の国・ニッポニアの政界に潜り込み、使われ方が不透明な政治の金を鮮やかに奪い取っていく女ルパンだ。

弥生は、ヒットメーカーの野木が石原に当て書きした役だ。自由奔放でミステリアスなこのキャラクターに、石原は最初、戸惑いもあった。だが、彼女が取った行動はやはり明快だった。クランクインの前に、皆で作品を深掘りする。疑問を一つひとつ解消しながら、丁寧に解釈をすり合わせていった。そうした対話の時間のおかげで迷いは消え去り、クランクインの日には不安もなかった。

疑問と対話を積み重ねてきた人

19歳の石原さとみは、点滴が2個ある理由を尋ね、先生と医療の会話が成り立った自分をすごいと笑った。そして30代後半を迎えた今の石原もまた、怪盗という未知の役を前に疑問の霧を一つひとつ晴らし、撮影が楽しくて仕方ないとコメントに書いている。

彼女が新たな世界へ足を踏み入れるとき、その第一歩は、いつも尋ねることから始まっているように思う。疑問が一つ解けるたび、世界が開けていく過程そのものを楽しんでいるかのようだ。

新作『ポリティカルパン』で彼女が演じる如月弥生は、圧倒的なコミュニケーション能力を武器に、人の懐へスルリと入り込む怪盗だ。人の懐に飛び込むその術は、この20年間、問いを投げかけ、人と言葉を交わしてきた石原さとみという俳優の歩みと、鮮やかに重なり合う。

20年分の疑問と対話を積み重ねてきた彼女が、今度はどんな言葉を操り、視聴者を魅了してくれるのか。2026年10月の水曜の夜が、今から待ち遠しくてならない。


※記事は執筆時点の情報です

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