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『Mステ』“第1回”で歌われた哀愁バラード…26年後、韓国の【人気歌姫】がカバーし反響!『伝説のバンド』音楽史に刻む“名曲”

  • 2026.11.8
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1986年5月、日本武道館で行われた安全地帯のライブより(C)SANKEI

誰かに話せば少しは軽くなりそうな気持ちを、まだ誰にも話したくないときがある。そういうとき、にぎやかな曲は少し遠く、無音はかえって重い。

そんな気分の日にそっと差し出したいのが、飾らないピアノで始まる1曲だ。

安全地帯『Friend』(作詞:松井五郎/作曲:玉置浩二)ーー1986年10月21日発売

安全地帯の楽曲の中でどれがいちばん好きかと聞かれて、この曲を挙げるファンは少なくない。『ワインレッドの心』や『悲しみにさよなら』といった代表曲を並べたときに真っ先に名前が出る曲ではないかもしれないが、「知っているつもり」で通り過ぎていた人にこそ、最初のピアノから聴き直してみてほしい。

この曲の魅力の核心は、そのピアノから最後のオーケストラへと至る道のりの中にある。

音が重なるほど儚さだけが残っていく

曲は、シンプルで切ないピアノのイントロから始まる。いきなり大きな感情をぶつけるのではなく、まず聴き手の隣にそっと腰を下ろすような入り方だ。

中盤に向けて情感が少しずつ高まり、サビに入るとストリングスが広がっていく。閉じていた部屋の窓が開き、外の空気がすっと流れ込んでくるような開放感がある。

そして曲は、最後に大きなオーケストラを伴って幕を閉じる。ところが、音が厚くなった分だけ気持ちが晴れ上がるわけではない。最後に残るのは、むしろ儚さだ。壮大な響きの中に、小さな寂しさをひとつだけ置いて去っていく。

大きな音でドラマチックに泣かせにかかる曲なら、一度聴けば満足してしまうかもしれない。だが、最後に儚さを手渡して終わる曲だからこそ、もう一度最初のピアノに戻りたくなる。この曲が何度も聴き返される理由は、まさにその終わり方にあるのだろう。

伴奏がピアノのイントロからオーケストラへと移り変わっても、旋律の輪郭は決してぼやけない。そこには、作曲を手がけた玉置浩二のメロディが持つ芯の強さがある。哀愁を帯びたこのバラードは、歌い手としての玉置の表現の幅がいちばんよく見える1曲でもある。

にぎやかな幕開けの回に差し込んだ切ない影

9月に井上陽水と組んだ『夏の終りのハーモニー』、10月に『Friend』、12月に『好きさ』、そしてアルバム『安全地帯V』。1986年の夏の終わりから冬の入り口まで、安全地帯の新作リリースは切れ目なく続いた。『Friend』は、その熱気あふれるただ中に置かれた1枚である。

発売からわずか3日後の1986年10月24日、テレビ朝日の新しい音楽番組『ミュージックステーション』が第1回の放送を迎え、安全地帯は『Friend』を歌った。今でこそ長寿番組だが、当時は番組そのものにも、まだ何の色もついていないまっさらな初回だった。

同じ回にはチェッカーズ、中森明菜、近藤真彦、中山美穂、アン・ルイスらが並び、香港からはジャッキー・チェンが生中継で登場している。初代の司会者は関口宏だった。

人気者たちが次々に現れる華やかな初回に、安全地帯が持ち込んだのが、この哀愁のバラードだった。お祭り騒ぎのようなにぎやかな顔ぶれの中にあってこそ、この曲が宿す哀しみの色は、かえって濃く鮮やかに浮かび上がったのだ。

アンテナとテープを伝って隣の国へ渡る

同じ頃、海を隔てた韓国では、日本の音盤は自由に手に入るものではなかった。

それでも、UHFアンテナを立てて日本のテレビを見たり、海賊版のLPやカセットテープを手に入れたりして、安全地帯を聴く人たちが確かにいた。その密やかな熱気の中で、『Friend』は人気のあった初期の曲として、深く記憶される1曲となった。

海を越えるテレビの電波と、人の手から手へと渡る海賊版のテープ。どちらもこの曲にたどり着くための、あまりにも細い道だ。

日本語の歌詞をすべて追えなくても、ピアノからオーケストラへ向かう起伏と哀愁の旋律は真っ直ぐに伝わる。この曲には、言葉の意味よりも先に、直接耳と心へ届く旋律そのものの力がある。

海を越えて戻ってきた歌への返事

2012年9月、韓国の歌手IUが東京国際フォーラムでのコンサートで『Friend』を歌った。日本の歌手の中で玉置浩二をいちばん尊敬していると公言していた彼女のパフォーマンスには問い合わせが相次ぎ、そのライブ音源は10月24日にデジタルシングルとして配信された。

音源を聴いた玉置浩二も、その真摯な歌唱への感謝を言葉にして返している。

そして奇しくも、配信日の10月24日は、26年前に安全地帯が『ミュージックステーション』の第1回でこの曲を歌った日付とぴったり重なる。

かつて電波や海賊版のテープを頼りにこの曲を聴いていた国から、次の世代の歌い手がやって来て、同じ旋律を東京の客席に届けた。この曲がたどってきた道のりは、長い年月を経てひとつの美しい輪となって結ばれた。

誰にも話したくない気持ちを抱えた日にこの曲を再生すると、最初のピアノが鳴った瞬間、海の向こうでこの旋律を聴いてきた人たちの列に、自分もそっと並んでいるような気がしてくる。この曲が静かに心に寄り添ってくれるのは、きっとそんなときだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

(文・篝火花かほり)

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