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小室哲哉が明かした“長すぎイントロ”の【ワケ】…元OLのボーカルが歌った累計“130万枚”の『別格の名曲』

  • 2026.11.9
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1996年10月、ドリームツアーの日程を発表したglobeのKEIKO(C)SANKEI

秋が深まるころ、テレビの歌番組をつけても、ラジオのつまみを回しても、小室哲哉の名前がクレジットに並ぶ楽曲に行き当たった。フロアを揺らすダンスチューンもあれば、胸を締めつける切ない恋の歌もある。

そのさなかに、globeが7枚目のシングルとして世に送り出したのがこの曲だった。

globe『Can't Stop Fallin' in Love』(作詞:小室哲哉・MARC/作曲:小室哲哉)ーー1996年10月30日発売

恋の歌でありながら、この曲の主人公として描かれたのは、日々の仕事を持つ女性だった。秋に生まれたこのラブソングは、大晦日の大舞台を経て、年をまたいで長く売れていくことになる。小室が託した働く女性の揺らぎを、いま改めて聴き直してみたい。

ピンクのジャケットで描いた働く女性の揺らぎ

globeは、KEIKO、MARC(マーク・パンサー)、小室哲哉の3人組ユニットだ。歌を担うKEIKOは、デビュー前にOLとして働いていた経歴を持つ。

この曲の主人公は、日々の仕事に手応えがあり、毎日が充実している女性だ。それでもなお、恋をする気持ちまでは手放すことができない。働く自分と誰かを想う自分のあいだで、日々揺れ動いている。そのリアルな揺らぎこそが、この曲の芯になっている。

守りたい日常がある人の恋だから、「止められない」という感情に切実なリアリティが宿るのだろう。恋の歌の主人公に仕事という日々の重みを持たせたところに、この曲ならではの確かな手触りがある。

ミュージックビデオにおけるKEIKOのビジュアルも、この人物像に合わせて作られていた。茶髪にピンクのジャケットという姿だ。ジャケットという働く人の装いに、ピンクというやわらかな色を合わせる。仕事と女心の両方を、一着の衣装で見事に表現していた。

ふたりの恋より言えない本音を歌わせる

小室はのちにglobeの詞について、一対一の恋の歌が減っていったと振り返っている。あなたと私の物語を描くのではなく、女性が普段口に出せずにいる気持ちを、歌の中で代わりに言葉にする。その考え方は、この曲の詞にも重なって見える。

詞は小室とMARCの共作だ。歌の主人公は特定の誰かに閉じていないため、仕事を抱えながら恋をしている人なら誰でも、その席に座ることができる。恋の相手との会話劇に仕立てれば、聴き手は客席の観客になってしまう。だが、主人公の胸の内に焦点を絞り込めば、聴き手はその感情を自分のものとして受け止める当事者になれる。小室が選んだのは、明らかに後者だった。

自分では言えない気持ちを、KEIKOの声が先に言ってくれる。聴き手は物語を外から眺めるのではなく、主人公の立場に入ったまま曲の終わりまで連れていかれる。歌われているのは誰かの恋なのに、聴き終えると、まるで自分の本音を少し吐き出したような余韻が胸に残る。

歌い出す前の長い時間も曲のうちだった

globeの楽曲はイントロが長い。小室にとって、そこは歌が始まるまでの単なる前置きではなかった。彼はその長さに、ふたつの明確な役割を見ていた。

ひとつは、新しい音を試すための実験の場。もうひとつは、カラオケで歌う人たちが言葉を交わすための時間だ。作り手としての挑戦と、歌う人がひと息つくための時間。一見ばらばらに思えるふたつの役割が、同じ前奏の中に重ね合わせられている。

この曲も、KEIKOの歌が始まるまでにMARCのラップを挟みつつ、たっぷりと間を取る。前奏の長さを、聴き手がどこで誰と過ごすかという風景から組み立てる。スタジオの中だけで完結させない、小室ならではの設計だ。

前述の視点とつなげて考えると、この長さはさらにもうひとつの意味を帯びてくる。他人の本音を自分の声で歌うには、少しだけ心の準備が要る。小室の考えをなぞるなら、おしゃべりをしながらマイクを受け取り、前奏が流れるうちに主人公の気持ちへと入っていける。言えない気持ちを代わりに歌わせる詞と、歌い出しまでの長い助走は、同じ方向を向いていた。

年をまたいで売れ続けた歌

その年の大晦日、globeは第47回NHK紅白歌合戦に初出場を果たし、紅組としてこの曲を歌った。秋に出た新曲が、わずか2か月後には1年を締めくくる大舞台で鳴り響いていた。

売れ方にも、この曲らしい形が表れている。発売直後の勢いで50万枚を超えたシングルは、年の瀬から翌年にかけて、さらに70万枚以上を積み上げた。最初の勢いよりも、そのあとの長い売れ行きのほうが大きかったのだ。累計は130万枚を超え、globeのシングルでは『DEPARTURES』『FACE』に次ぐ売上を記録した。

秋の新曲として一気に駆け抜けるのではなく、冬のあいだずっと買われていった。言えない気持ちを代わりに歌ってくれる曲は、季節がひとつ進んでも手放されなかった。年明けの数字に、手元に置かれ続けた一枚の姿が浮かび上がる。

聴き直すなら、イントロが鳴り出してもすぐには身構えないでほしい。長い前奏のあいだに一度だけ自分の毎日を思い浮かべてから、KEIKOの最初の一声を待つ。そうして聴くと、仕事も恋も手放さない女性の姿が、よく知っている誰かの顔をして立ち上がってくるはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

(文・笄坂かける)

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