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劇場版は興収40億超え、月9で社会現象に…20年前、“クラシックブーム”を巻き起こした主演女優

  • 2026.10.5
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2006年9月、フジテレビ系ドラマ「のだめカンタービレ」の主題歌レコーディングに訪れた上野樹里(C)SANKEI

20年前の2006年9月、翌月にスタートを控えたフジテレビ系月9ドラマ『のだめカンタービレ』の録音現場に、主演を務める上野樹里と玉木宏が駆けつけた。

吹き込まれていたのは、エンディングテーマの『ラプソディ・イン・ブルー』。演奏を担当したのは、東京都交響楽団と「のだめオーケストラ」の混成オーケストラだ。のだめオーケストラは、340人の応募から選ばれた若手たちを含む総勢約160人で、このドラマのために結成されたばかりだった。

上野が演じる野田恵(のだめ)は、楽譜を読むのは苦手だが、一度聴いた曲は弾けてしまい、超絶技巧でピアノを弾きまくる型破りな音大生。破天荒な役を前に、当時20歳の上野は、録音の場で自身のピアノ経験を語っていた。

幼稚園から小学校6年生までピアノを習っていたものの、「上達は遅かったです」と笑い、「これを機にまた電子ピアノを買って練習しています」と続けた。

演じるのは天才ピアニスト。普通なら少しでも背伸びしたくなるところで、自分の上達の遅さを屈託なく口にしてしまう。この構えのない素直さに、上野樹里という人がよく表れていると思う。

その後、上野はドラマ、映画、そしてミュージカルとのだめを演じ重ね、40歳を迎えた2026年には、自分で詞を書いた歌をピアノで弾き語りする動画を公開している。あの頃、もう一度鍵盤に触れたひとりの少女のピアノは、いかにして彼女自身の人生の音になっていったのだろうか。

シール目当てだった少女が鍵盤に没頭するまで

子どものころ、上野はピアノのエリート街道を歩んでいたわけではなかった。登校班の班長さんの家で習い、きれいで優しい先生のもと、合格すると貼ってもらえるサンリオのシールを楽しみに、マイペースに通っていた。

だが、今回の役に向けた練習は、子どものころの習い事とは違った。半年以上マンツーマンのレッスンを受け、自宅でも鍵盤に向かっていた。

クランクイン前のポスター撮影は、かなりハードなスケジュールだった。それでも上野は、時間が空くたびに、別カット用に用意されたピアノでベートーベンやモーツァルトの曲を練習していた。

千秋真一役の玉木宏は、バイオリンは顔の近くに指があるのでごまかせないと、弾く様子を“見る”ことを第一歩にしていた。その玉木も、上野の上達ぶりには焦っていたようだ。二人にとっては、月9初主演で初共演となる作品を控えた時期だった。

シール目当てで鍵盤を叩いていた少女は、空き時間のたびにピアノと向き合う20歳になっていた。

「のだめブーム」と劇場版の熱狂

2006年の秋、上野の周囲は目まぐるしい熱気に包まれていた。映画『出口のない海』、そして『虹の女神 Rainbow Song』と出演作が立て続けに公開され、そのただ中に『のだめカンタービレ』の幕が上がった。

ドラマが巻き起こした熱狂は、単なる高視聴率にとどまらず、「のだめブーム」「クラシックブーム」と呼ばれるほどに広がっていく。最終回はクリスマスの夜に放送された。そのわずか3日前には、あの日録音に臨んだのだめオーケストラが東京国際フォーラムでデビュー公演を開催し、チケットは発売と同時にソールドアウトとなった。

上野はこの作品でザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞を受賞。物語はヨーロッパ編の新春スペシャル、さらには映画前後編へとスケールを広げ、劇場版前編だけで興行収入40億円以上を叩き出すメガヒットを記録した。

20年後に届く自分の音

そして2025年8月、上野は再び「のだめ」として記者会見の場に立っていた。ミュージカル版のキャストと東京フィルハーモニー交響楽団によるフルオーケストラ公演が発表された日のことだ。

人生の半分近くをのだめと共に歩んできた上野は、また違う場所へ行くのかと笑ってしまったと明かし、「作品が旅をしているような感じ」と話した。そして、「クラシックは自分の人生から離れた感じがしていた」と打ち明け、それでも芝居を通して皆さんと楽しさを共有できたと振り返った。

あの2006年の秋、自らの上達の遅さを笑っていた20歳は、のだめを20年近く演じてきたあとで、クラシックを遠いものに感じていたと口にした。どれだけ拍手を浴び、どれだけ役を重ねても、彼女の中には背伸びをしない自分がいるように見える。

40歳を迎えた2026年6月、上野のSNSに一本の動画が投稿された。

自身が作詞し、夫・和田唱が作曲を手がけたオリジナル曲『星の記憶』。和田のギターを添えて響いたのは、上野自身のピアノによる弾き語りだった。40歳の節目と結婚10周年を記念した動画だった。

そして2026年10月25日、彼女は故郷・兵庫県加古川市で『樹里フェス 2026 in Kakogawa』を開催する。自身が日本各地で感銘を受けた音楽を地元の人々に紹介し、一緒に楽しむためのイベントで、上野も鼓童、el tempo、和田唱とともにステージに立つ。

20年前の秋、録音の場へ駆けつけてオーケストラを激励していた20歳の女優は、長い旅を経て、自分が出会ってきた音楽を地元の客席へ届ける側に立とうとしている。


※記事は執筆時点の情報です

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