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「格闘技みたいでした」大胆な濡れ場を笑い飛ばした実力派女優。20年後、興収200億の大ヒット作で再び栄冠

  • 2026.10.5
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2006年9月、映画「愛の流刑地」 製作発表会見に出席した寺島しのぶ(C)SANKEI

20年前の2006年9月、東京・成城の東宝スタジオで、映画『愛の流刑地』の製作発表会見が開かれた。

主演の豊川悦司から「空も飛べそうな位のスーパー女優」と惜しみない賛辞を送られた寺島しのぶは、豊川との共演を「100%安心して、身を委ねることができました」と語り、目に涙を浮かべた。

原作は、過激な性描写で話題を呼んだ渡辺淳一の新聞連載小説。春にキャストが報じられて以来、世間の関心は2人の濡れ場へと集まっていた。

だが、好奇の目に晒されながら臨んだその会見で、寺島が口にしたのは自身の度胸や大胆さではなかった。共演者とスタッフを信じ切れたことだった。大胆な役に挑むときほど、この女優はまず相手を信じてすべてを預けることから始めるのだと思う。

豪華キャストが集結した会見と現場の温もり

この日の会見には、原作者の渡辺淳一、映画監督初作となる鶴橋康夫監督、豊川悦司や寺島しのぶらが顔をそろえていた。監督が出席をとるように一人ひとりを紹介していくなか、なぜか唯一名前を呼ばれなかった陣内孝則が「おそらく監督の期待度はその程度だと思う」と言って、会場を沸かせる一幕もあった。

原作者の渡辺から「一皮むけて、いい役者さんになった」と絶賛され、出席者たちから口々にたたえられた豊川は、「劇中同様、裁判みたい」と照れた。それでも感想を求められると、とてもリラックスして撮影できたことが一番大きい、と答えた。

寺島は「豊川さんとスタッフの優しさによって、本当に集中できた」とも口にして、涙ぐんだ。この映画では、実母の富司純子とも親子役で共演している。原作者の渡辺もまた、2人の名前を見たときに、これはいいと即座に思ったと語り、ハードで深い表現が多いからこの2人なら、と期待を寄せていた。

朝ドラの凛とした長女と映画の狂おしい愛

「身を委ねる」という言葉は、会見で咄嗟に出たものではない。その年の5月、2人の主演が報じられたときにも、寺島は台本を読んだ時に体の中がピンときたと話し、すべてを委ねられる豊川とまた共演できると口にしていた。

2人は2005年のドラマ『太宰治物語』(TBS系)で夫婦役を演じている。さらに翌年6月公開の映画『やわらかい生活』では、寺島が主人公の優子、豊川がいとこの祥一を演じた。製作発表の時点で多くの共演という確固たる信頼の土台があった。

そして、この製作発表が行われた2006年9月、お茶の間にはもうひとりの寺島しのぶがいた。NHK連続テレビ小説『純情きらり』である。

彼女が演じていたのは、宮崎あおい演じるヒロイン・桜子の姉、有森家の長女・笛子。ちょうどその朝ドラが最終回を迎える同じ月に、寺島は朝の顔とは180度違う大人の情愛劇の真ん中で涙ぐんでいたのである。

すでに映画『赤目四十八瀧心中未遂』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝き、実力派として名を馳せていた彼女だが、この振り幅には今振り返っても唸らされる。

「格闘技みたい」新成人の前で笑い飛ばした覚悟

11月30日の完成披露会見では、オールヌードで大胆な濡れ場を演じた寺島が、「すべてをさらけ出すつもりでやりました」と、腹をくくって撮影に臨んだことを明かした。母親役で共演した富司純子もまた、「裸も衣装だ」と言える人だと、その女優魂を称えた。

さらに年が明けた2007年1月、公開を目前に、東京・有楽町の朝日ホールで新成人を招いた試写会が開かれた。

濡れ場は恥ずかしくなかったのかと問われた寺島は、必死だったのでそれどころではなかった、豊川さんの体をまじまじと見ている余裕もないと答え、「格闘技みたいでした」と笑い飛ばした。その痛快な一言に、会場から喝采が送られた。

同じトークショーで豊川も、寺島が相手だったので余計な気を遣わずにシーンに集中できたと話していた。秋の会見で寺島が口にした「安心」を、今度は豊川がそっくりそのまま返した形だった。

封切り後、映画は瞬く間に大ヒット。豊川が福岡・大阪・名古屋・東京を1日で駆け抜ける弾丸舞台挨拶を敢行した。東京で合流した寺島がこの日、朝日舞台芸術賞の舞台芸術賞を受けたことが鶴橋監督から発表され、ふたりはそろって熱い拍手を浴びた。寺島はこの作品で、日本アカデミー賞の優秀主演女優賞も受けることになる。

20年後も輝くさらけ出す度胸と託す信頼

ふたりの盟友関係は、その後も色褪せなかった。2022年には、『やわらかい生活』と同じ廣木隆一監督・荒井晴彦脚本の映画『あちらにいる鬼』で、2人はそろって主演を務めた。発表のコメントで寺島は、豊川とまたお芝居できることに胸が弾むとつづっている。

そして2026年3月、邦画実写で初めて興行収入200億円を突破した映画『国宝』で、寺島は第49回日本アカデミー賞・優秀助演女優賞を受賞。演じたのは、歌舞伎役者・花井半二郎の妻で、俊介の母でもある大垣幸子だ。再びあの華やかな賞の舞台に立った。

その1か月前には、新橋演舞場の舞台『お光とお紺〜伊勢音頭 恋の絵双紙〜』で藤山直美と共演し、村を救うために進んで遊女になるお光を演じた。開幕前日の囲み取材では、富士山と久しぶりに共演できてうれしいと語っていた。

過激な濡れ場を格闘技みたいと笑い飛ばす豪胆さと、共演者を語るときに涙ぐんでしまうほどの繊細さ。寺島しのぶという女優の中で、自らをさらけ出す覚悟と相手に丸ごと預ける信頼は、きっと表裏一体の同じ熱源から生まれている。

あの20年前の会見で彼女が浮かべた涙を知ったうえで、『愛の流刑地』をもう一度味わいたい。


※記事は執筆時点の情報です

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