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中山美穂、織田裕二、別所哲也がまぶしい。1991年の三人が残した青春映画

  • 2026.9.13
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2001年4月、TBSドラマ「ラブストーリー」制作発表会見に出席した中山美穂(C)SANKEI

ラジオの電波なら、湘南の海岸をつないでいける。けれど、すぐそばにいる好きな人には思いを伝えられない。1991年公開の『波の数だけ抱きしめて』は、そんな若者たちの不器用さが胸に残る映画だ。

物語の舞台は1982年。大学生活最後の夏を前に、若者たちはサーフショップを拠点にミニFM局「Kiwi」を運営し、放送を湘南一帯へ届けようとする。仲間との夢に、渡米を控えた真理子と、彼女を思う小杉、広告マンの吉岡の恋が重なっていく。この三人を演じた中山美穂、織田裕二、別所哲也もまた、それぞれの魅力が花開く時期にいた。

小さな放送局の顔になった中山美穂

中山が演じる田中真理子は、KiwiのDJを担う大学生。放送には欠かせない存在だが、アメリカにいる両親のもとへ渡る日が迫っている。心の中では小杉に引き留めてほしい。仲間から頼られる彼女にも、恋の行方はわからない。

1985年にドラマと歌でデビューし、その年の日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞した中山。映画が公開された1991年には、月9ドラマ『逢いたい時にあなたはいない…』で主演し、主題歌『遠い街のどこかで…』も歌っている。同作も多くの視聴者を集めた恋愛ドラマだった。画面の中の恋を演じ、その物語に寄り添う歌も届ける。女優と歌手の両方で親しまれた中山の活躍が、一年の仕事からも伝わってくる。

そんな彼女が演じる真理子には、小さな放送局の中心にいてほしくなる華やかさがある。音楽を届けるDJという役柄に、中山のスターとしての魅力がよく似合う。それでいて、好きな人の言葉を待つ姿には身近な切なさがある。まぶしさと心細さが同居する真理子は、夏の恋のヒロインとして忘れがたい。

カンチと同じ年、織田裕二が演じた小杉の恋

織田が演じる小杉正明は、真理子を好きなのに告白に踏み出せない大学生だ。真理子が小杉の言葉を待っているだけに、そのためらいがもどかしい。

1991年の織田といえば、『東京ラブストーリー』のカンチこと永尾完治である。リカとカンチの恋が社会現象となった作品で、恋に揺れる青年を演じた。その年の映画でも、織田は恋のもどかしさを引き受けていた。

小杉は、放送を広げる夢には仲間と一緒に向かっていける。ところが、自分の恋となると一歩が出ない。ここで心をつかむのは、背中を押したくなる若い織田の近さだろう。遠くまで電波を飛ばそうとする青年が、目の前の一人に思いを届けられない。カンチを知る人には、その不器用さがいっそう愛おしく映るのではないか。

学生たちの夏を動かす、別所哲也の頼もしさ

その小杉とは対照的に、真理子に惹かれて行動を起こすのが、別所演じる広告マンの吉岡卓也だ。Kiwiの中継局作りに協力し、学生たちが思い描いていた放送局を、仕事ともつながる計画へ育てていく。

別所は前年の1990年、日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビューを果たしたばかりだった。身長186cmという長身と、海外映画から日本の青春映画へと踏み出す新鮮さ。中山や織田とは異なる経歴を持つ俳優が、仲間の輪の外からやって来る社会人を担っているのも面白い。

吉岡には、夢を前に進めてくれる頼もしさがある。小杉にとっては恋敵でも、Kiwiにとっては力強い協力者だ。別所の存在が加わることで、恋と放送局の夢は切り離せなくなる。誰か一人を応援していればすむ恋ではない。そのややこしさまで、この三人の夏を魅力的にしている。

三人の歩みを知って、あの夏へ戻る

その後、織田は『踊る大捜査線』の青島俊作という代表役を得て、2026年9月18日公開予定の新作でも同役を演じる。別所は舞台やラジオにも活動を広げ、国際短編映画祭も主宰するようになった。中山は2024年に惜しくもこの世を去ったが、映画の中には、仲間と恋に心を寄せる真理子の姿が残っている。

三人の歩みを知ってから戻る湘南の夏は、以前より少し切ない。中山のまぶしさ、織田の不器用さ、別所の頼もしさが、一度きりの季節に重なっている。『波の数だけ抱きしめて』は、若い彼らに何度でも会いたくなる青春映画の名作だ。


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