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「お姉ちゃんだからいい子にして」が苦しかった。病気の妹との愛情格差に悩んだ「きょうだい児」の切実な本音を描いたコミックエッセイ【書評】

  • 2026.8.23

【漫画】本編を読む

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

『きょうだい、だけどいや ケアをさせられたきょうだい児だった、けど』(のまり/竹書房)は、病気の妹を持つ「きょうだい児」の葛藤を描いたコミックエッセイである。家族愛やきょうだい愛の美しさを描くのではなく、その裏側にある寂しさや怒り、そして言葉にできない苦しさが綴られている。

主人公の手塚ナミには、小児喘息で入退院を繰り返す妹がいる。両親は病気の妹を優先し、ナミは幼い頃から「お姉ちゃんだから」「いい子でいて」と我慢を求められてきた。欲しいものを譲り、妹の面倒を見て、家族を助けることが当たり前だった。自分だって親に甘えたいし、大切にしてほしい。その思いを抱えたまま成長したナミは、次第に家族と距離を置くようになっていく。

本作で描かれるのは、いわゆる「きょうだい児」の苦悩だ。病気や障害のある兄弟姉妹がいる子どもは、周囲から「しっかり者」「優しい子」と見られがちである。しかし、その裏では年齢以上の我慢や責任を背負わされていることも少なくない。ナミもまた、家族のために「いい子」に振る舞うことを求められながら、自分の気持ちを後回しにし続けてきた。

それでも、本作は誰かを一方的な悪者として描いてはいない。両親も苦しむ妹を愛していたからこそ必死だった。しかし、その愛情の偏りがナミを傷つけていたことも事実だ。どちらの立場の気持ちが理解できるからこそ「親が悪い」などと簡単には割り切れない複雑な感情を抱くだろう。

一方で、大人になったナミが過去を見つめ直し、自身の気持ちと向き合っていく過程も描かれている。家族だからこそ言えなかったこと、家族だからこそ許せなかったこと。そのひとつひとつが静かに胸に迫ってくる。

近年は「きょうだい児」という言葉が少しずつ知られるようになった。しかし、その実情はまだ十分に理解されているとは言い難い。本作は当事者の視点から、その複雑な思いを伝えてくれる貴重な作品である。家族とは何か、愛情とは何かをあらためて考えさせられる。

文=座美山佐須郎

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