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ヨシムラでワークス勢を撃破! 辻本聡がTT-F1を制した“リア乗り”の秘密

  • 2026.8.22

メーカー直系のワークスチームがしのぎを削った1980年代の全日本ロードレース。そのなかでヨシムラを駆り、1985~86年のTT-F1を連覇したのが辻本聡だ。市販車ベースのマシンでワークス勢を打ち破った速さはどこにあったのか。イラストレーター松屋正蔵が、独特の“リア乗り”とともに当時の辻本聡を振り返る。

※この記事は過去に掲載された内容をもとに、WEB向けに再構成しています。

ワークス勢を破ってTT-F1連覇! 辻本聡を支えた“リア乗り”

前回はモリワキ出身の八代俊二さんについてお話ししましたが、今回はモリワキとともに全日本で活躍し、関東のセミワークスとも呼べるヨシムラ出身の辻本聡さんについて書こうと思います。

皆さんもご存じだと思いますが、辻本さんはMotoGPのテレビ放送で解説者を務めています。そして、これも有名な話ですが、「PILOTA MOTO」というカフェのマスターでもあります。

場所は横須賀港から海岸沿いの道をしばらく走ったところ。まさに海の目の前に辻本さんのお洒落なカフェがあります。あのココナッツ入りのコーヒーは特別に美味しかったです。まだメニューに残っているのでしょうか。

さて、レーサーとしての辻本さんですが、1985~86年のTT-F1クラスでシリーズチャンピオンを獲得しています。

TT-F1とは、現在のJSB1000のルーツとなったカテゴリーで、市販750ccバイクをベースにした改造マシンで争われていました。

改造とはいえ、ルールで許されている範囲は広く、エンジン以外はほぼ自作パーツのような状態でした。もちろんエンジンにもかなり手が入っています。だからこそ、僕のようなレースファンにとっては、サーキットへ足を運び、実車を見ること自体が大きな楽しみでもありました。

当時は全日本の筑波ラウンドが年4回行われていましたが、僕はそのすべてに友達を誘って観戦に行っていました。

1985年頃の全日本には、各メーカーのワークスチームが専用のワークスマシンを開発して参戦していました。

そんななか、セミワークスとは呼ばれていたものの、ヨシムラやモリワキといったパーツメーカーが、バイクメーカー直属のワークスチームを相手に勝ち続け、シリーズチャンピオンまで獲得する。その凄さは、今振り返っても偉業だったと思います。

そして辻本さんは、1987年にはヨシムラからアメリカ国内選手権のAMAシリーズへフル参戦することになります。

辻本さんのライディングで強く印象に残っているのが、“リア乗り”です。

お尻の半分ほどをイン側へ入れながら、外足はいつもきれいにタンクへ添えられていました。外足のヒザが開かないということは、腰の位置は引き気味。まさにリア寄りに荷重するフォームだったわけです。

イン側のヒザは、路面へタッチした状態で開いたり閉じたりしていました。ライディングセンスに富んだライダーに見られる動きで、後の世界チャンピオン、ウェイン・レイニーさんにも同じ特徴がありました。

辻本さんは腰をリア寄りへ引き、やや猫背気味のライディングフォームでした。

手足が長く胴が短い体型だったため、リア乗りになると頭の位置が低くなり、深く伏せているようにも見えました。猫背気味とはいえ背中は無理なく伸びていたので、リアタイヤから伝わってくるインフォメーションを背筋でうまく捉えていたように僕には見えていました。

AMAへフル参戦した際には深刻なケガを負い、日本へ戻って治療を続けながらレースへ参戦することになります。

ケガから回復した後は、全日本のTT-F1からGP500クラスへステップアップしました。

ヨシムラ時代の辻本さんはリア乗りだったと書きましたが、2ストロークのRGV-Γ500やNSR500では、あまり相性が良いようには見えず、苦戦しているようにも感じられました。

エンジンブレーキの有無が、リア乗りの辻本さんにとって何らかのマイナス要因になっていたのか? そんなことを当時は考えながらレースを見ていました。

そして今でも鮮明に思い浮かぶのが、クシタニがデザインした赤と黒のヨシムラカラーの革ツナギです。

AMA初参戦時に着ていた日の丸デザインの革ツナギは、「PILOTA MOTO」の店内にも展示されていました。

ワークスマシンがひしめく時代にヨシムラで勝利を重ね、TT-F1を2年連続で制した辻本聡さん。その速さと独特のライディングフォームは、1980年代の全日本ロードレースを象徴する記憶のひとつとして、今も僕のなかに強く残っています。

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