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寿命400年越えのニシオンデンザメーー数世紀も動き続ける「心臓の秘密」を調査

  • 2026.4.29
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

北極海の深海に生息する「ニシオンデンザメ」は、最大で400年以上も生きるとされています。

その寿命の長さは、現生する脊椎動物の中でもナンバーワンです。

この驚異的な長寿の理由を探るため、イタリアとドイツの共同研究チームが、ニシオンデンザメの「心臓」に注目した研究を実施。

彼らの問いはとてもシンプルです。

それは「ニシオンデンザメの心臓はそもそも老化しにくいのか?それとも老化しても壊れないのか?」ということ。

答えはどちらだったのでしょうか。

研究の詳細は2026年4月23日付で科学雑誌『Aging Cell』に掲載されています。

目次

  • 心臓はむしろ「しっかり老化していた」
  • それでも壊れない「異常な耐久性」

心臓はむしろ「しっかり老化していた」

研究チームは、ニシオンデンザメの心臓組織を詳細に分析し、さらに比較のために短命な魚(ターコイズキリフィッシュ)や近縁だが寿命が短い深海ザメも調べました。

注目されたのは「老化の指標」です。

例えば、

・心臓の線維化(組織が硬くなる現象)

・リポフスチンと呼ばれる老化色素の蓄積

・ミトコンドリアの損傷

・酸化ストレスの増加

といった、ヒトでも見られる典型的な老化サインです。

ニシオンデンザメ/ Credit: ja.wikipedia

その結果は意外なものでした。

ニシオンデンザメの心臓には、これらの老化の兆候がはっきりと確認されたのです。

特に心筋の線維化は顕著で、これは長期的にはポンプ機能の低下を招く可能性がある変化です。

また、細胞内には分解されずに残った物質(リポフスチン)が蓄積しており、細胞が長い年月のあいだダメージを受け続けてきたことを示していました。

さらに、細胞のエネルギーを生み出すミトコンドリアの損傷や、細胞内の“リサイクル装置”であるリソソームの肥大も観察されました。

これは、細胞が長期間にわたりストレスにさらされてきた証拠です。

つまり結論から言えば、

ニシオンデンザメは「老化していない」のではなく、 むしろ「しっかり老化している」

ということになります。

これは長寿生物のイメージを覆す結果です。

それでも壊れない「異常な耐久性」

ところが、ここからが本当に驚くべき点です。

これほどの老化ダメージがあるにもかかわらず、ニシオンデンザメは普通に生き、泳ぎ続けています。

研究対象となった個体も、いずれも生存していました。

人間で同じレベルの心臓の損傷が起これば、生命維持は困難になると考えられます。

しかしニシオンデンザメでは、それが問題にならないのです。

この矛盾をどう説明すべきでしょうか。

研究者たちは、ここに「レジリエンス(生物学的な耐性)」という概念を見出しました。

つまりこのサメは、

・老化を防いでいるのではない

・老化のダメージを受けても機能を維持できる

という特異な能力を持っている可能性があるのです。

この背景には、過去のゲノム研究で示唆されている特徴も関係していると考えられます。

ニシオンデンザメはDNA修復や細胞保護に関わる遺伝子を強化しており、一部の遺伝子はコピー数が増えていることが知られています。

これにより、長期間にわたり細胞の安定性を維持できる可能性があります。

今回の研究は、長寿のメカニズムについて重要な転換を示しています。

これまで「長生きする動物は老化が遅い」と考えられがちでしたが、実際にはそうではなく、「老化しても壊れない能力こそが長寿を支えている」可能性が浮かび上がってきたのです。

この視点は、人間の健康寿命を延ばす研究にも大きな示唆を与えます。

老化そのものを止めるのではなく、老化しても機能を維持する仕組みを強化するというアプローチです。

参考文献

How can a heart beat for centuries? A lesson from the Greenland shark
https://sciencex.com/news/2026-04-heart-centuries-lesson-greenland-shark.html

元論文

Resilience to Cardiac Aging in Greenland Shark Somniosus microcephalus
https://doi.org/10.1111/acel.70505

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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