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結局、杉本博司の写真って何がすごいんだ?4人の写真家が読み解く杉本写真術

  • 2026.8.23
『スギモトノート銀塩写真技法』

現在、東京国立近代美術館で展覧会『杉本博司 絶滅写真』を開催中の現代美術作家、杉本博司。そこでも展示されているのが、杉本が20代の頃から制作にまつわる覚書やアイデアを記していたノートブック、通称「スギモトノート」だ。

このノートを前に、本人が制作の舞台裏を余すことなく語った一冊、『スギモトノート 銀塩写真技法』が刊行。科学実験のように緻密なトライ・アンド・エラーを繰り返す杉本のプロセスは前提知識なしでももちろん面白いのだが、せっかくなら写真を知り尽くした専門家の意見も聞きたい。ということで、本書を読んだ4人の写真家たちに杉本写真の魅力を尋ねた。

結局、杉本博司の写真って何がすごいんだ?「スギモトノート」を読んだ4人の写真家たちに杉本写真の魅力を尋ねた
美術ジャーナリスト・鈴木 雄が聞き手となり、杉本が創作の秘密を語り尽くす。「海景」「劇場」「建築」「仏の海」「ジオラマ」の代表作の舞台裏を徹底的に解説。日本庭園、能楽を研究する静岡大学准教授の原瑠璃彦との対談も収録。岩波書店/3,300円。

平野太呂

美術大学の映像学科で勉強した僕にとって、杉本博司は教材でした。光が綺麗であることを大切にする写真家はたくさんいますが、それ以上に時間を大切にする写真家は杉本さんしかいない気がします。あえてジオラマや蠟人形という「偽物」を写すことで、そこに閉じ込められた時間だけが「本物」として紙の上に残されているようです。

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平野太呂

1973年東京都生まれ。2000年より活動開始。本誌「結局、杉本博司って何者だ?」特集号で杉本の撮影を担当。

System of Culture

杉本博司は、人間のスケールを超えたロマンティックな夢想を、綿密な儀式によって、写真へと定着させているように思います。『スギモトノート』は、その儀式の記録として読むことができます。氏の、人を相対化する視点の深遠さと、時として人を食ったような仕草や独特なユーモアからは、どこまでも静かな恐ろしさを感じさせられます。

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System of Culture

2017年に活動を開始した写真家ユニット。現在は小松利光によるソロユニットとして、静物写真を軸に活動する。

植本一子

杉本博司の時代はすべてがアナログだからこそ、こうして当時の記録がノートに記され、自らの足で撮影するからこそ、記憶は血肉となって身体に刻まれている。そんな写真術は今や絶滅危惧種かもしれない。遠くない未来、ここに書かれていることが遺跡のように感じられる日が来る。常人には真似できない、才人の歴史が残されている。

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植本一子

1984年広島県生まれ。2003年より写真家としてのキャリアをスタート。エッセイストとしても活動する。

大川原 諒

初めて見た時から忘れられない、圧倒的な存在感。プリントの大きさではない、画(え)そのものの強さ。本書を読むと、写真を表現媒体としているだけで、“引き算の美学”というべきシンプルさの奥に哲学や宗教、人類学にまで通じる深い思想が宿っていると知る。改めて偉大な写真家だと思った。個人的にはデジタルの脆さも思い知らされた一冊。

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大川原 諒

1995年生まれ。現在は映像撮影をメインに、「杉本博司」特集号をはじめ、本誌オリジナルムービーにも携わる。

『スギモトノート銀塩写真技法』より、 「劇場」の制作のために記したノート
本書より、「劇場」の制作のために記したノート
『スギモトノート銀塩写真技法』より実際に出来上がった作品図版
実際に出来上がった作品図版。毎回、絞り値や現像液の温度、時間を細かく記録している。
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