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「母の口座から葬儀代を…」215万円を下ろしに銀行へ→“預金1,500万円”あるから安心のはずが…息子が直面した“想定外の誤算”

  • 2026.9.2
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出典元:photoAC(※画像イメージです)

こんにちは、マネーシップス代表でIFAの石坂です。

「親の口座に十分な預金があるから、万一の際のお金も心配いらない」

そう思っていませんか?しかし、金融機関が名義人の死亡を把握すると口座は凍結され、たとえ家族であっても自由に預金を引き出すことはできなくなります。

今回は、亡くなった母親の定期預金1,500万円を頼りにしていたものの、葬儀費や入院費の支払期日に間に合わず立て替えを余儀なくされたご家族の事例をご紹介します。今回はこの事例から、口座凍結の注意点と対策について解説します。

1,500万円あるから大丈夫…家族が直面した支払いの壁

60代の母は、地方銀行に定期預金1,500万円を持っていました。普通預金には約80万円、年金口座には2ヶ月ごとに約32万円(月換算で約16万円)が入っていたそうです。

長男と長女は、母から「もしものときは、この預金を使えばいい」と聞かされていました。そのため、葬儀費用や入院費の支払いについて、細かく話し合っていませんでした。

母が亡くなった後、葬儀会社から提示された見積もりは約180万円。内訳は、葬儀一式で約120万円、式場利用料で約25万円、飲食や返礼品で約35万円です。さらに、最後の入院費約28万円、介護用品代約7万円の支払いも残っていました。すぐに必要なお金は合計約215万円です。

長男は「母の定期預金を一部解約すれば払える」と考え、銀行へ相談しました。

ところが、銀行では母の死亡を確認したため、預金の払戻しには相続手続きが必要だと説明されました。定期預金は母名義のまま残っているものの、長男がすぐに引き出せる状態ではなかったのです。

相続人は長男と長女の2人。

預金を正式に解約するには、戸籍関係書類の取得、相続人の確認、遺産分割の内容確認などが必要になります。長男は書類を集め始めましたが、母の出生から死亡までの戸籍をそろえるのに数日かかりました。長女は遠方に住んでいたため、書類のやり取りにも時間がかかります。葬儀会社への支払い期限は1週間後でした。

結局、長男は自分の普通預金から180万円を立て替え、入院費等35万円はクレジットカードで支払いました。母の定期預金には1,500万円ある。それなのに、相続直後の支払いにはすぐ使えない。

これが家族にとって大きな誤算だったのです。

1,500万円あっても、すぐ使えるとは限らない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

この事例の注意点は、預金額と使えるタイミングを分けて考えていなかったことです。

親の定期預金に1,500万円あることと、相続直後に家族が自由に使えることは同じではありません。金融機関が死亡の事実を把握すると、預金の払戻しや解約には、相続人を確認する書類や遺産分割協議書などが必要になる場合があります。

必要書類は、遺言書の有無や金融機関の取り扱いによっても変わります。

一方で、遺産分割が終わるまで一切引き出せないわけではありません。民法には、遺産分割前でも一定額まで預貯金を払い戻せる制度があります。目安は、口座や明細ごとに「相続開始時の預金額×3分の1×その相続人の法定相続分」で計算します。

ただし、同一金融機関から単独で払い戻せる金額には150万円の上限があります。

たとえば、母の定期預金1,500万円が同じ銀行にあり、相続人が長男と長女の2人だった場合、長男が単独で請求できる目安は、1,500万円×3分の1×2分の1=250万円です。

しかし、同一金融機関ごとの上限が150万円のため、実際には150万円が一つの目安になります。

今回のように、葬儀費用180万円と入院費等35万円を合わせると215万円です。このケースでは、仮払い制度を使っても、必要額215万円の全額をまかなえない可能性があります。

また、制度を使う場合でも、金融機関への申し出や戸籍などの書類準備が必要です。「制度があるからすぐ現金化できる」と考えるのは危険です。

預金総額だけでなく「直後に動かせる資金」を準備しておこう

親の口座に潤沢な資金があっても、死亡後の手続きを終えるまでは解約や引き出しが行えず、葬儀費や医療費などの急な支払いに対応できないリスクがあります。

遺産分割前の仮払い制度が存在するものの、同一金融機関からの引き出しは150万円が上限となるため、必要額の全額を賄えるとは限りません。戸籍等の書類調達にも時間を要します。

親の通帳や口座の確認にとどまらず、家族が立て替えられる手元資金の把握や支払い負担の共有を事前に進め、「今すぐ動かせるお金」を確保しておくことが大切です。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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