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「5年ずらしておけばよい」60歳でiDeCo500万、65歳で退職金2,000万を受け取る予定が…男性を待っていた“想定外の落とし穴”

  • 2026.9.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

老後のお金は、「いくら受け取れるか」だけでなく、「いつ受け取るか」でも税金の計算が変わることがあります。

特に注意したいのが、iDeCoを一時金で先に受け取り、その数年後に会社の退職金をもらうケースです。

2026年からは、この順番で受け取る場合に、過去のiDeCo一時金をさかのぼって見る範囲が広がりました。

今回は、「60歳と65歳なら5年違うから大丈夫」と考えていたMさんのケースを見ていきます。

「5年違うなら別々に考えていい」老後資金2,500万円に安心していたMさん

Mさんは2026年に60歳を迎えた会社員男性です。22歳で現在の会社に入社し、その後も同じ会社で働き続けてきました。60歳を迎えてもすぐには退職せず、65歳まで勤務する予定です。

老後に向けた準備も、早い時期から少しずつ進めていました。そのひとつがiDeCoです。60歳時点で通算加入者等期間は10年以上あり※1、積み立ててきた資産は約500万円になっていました。さらに、65歳で会社を辞める際には、約2,000万円の退職金を受け取れる見込みです。iDeCoと会社の退職金を合わせると約2,500万円になります。

Mさんは、この2,500万円を老後生活の土台にしようと考えていました。

予定していた流れは、まず2026年にiDeCoの500万円を一時金で受け取ること。その後も会社で働き続け、2031年に65歳で退職し、会社から約2,000万円の退職金を受け取るというものでした。

Mさんがこの方法で問題ないと思っていたのには理由があります。以前、お金に関する記事や知人との会話の中で、「iDeCoを先に受けるなら、退職金とは5年ずらしておけばよい」と聞いた記憶があったそうです。
そのため、「60歳でiDeCo、65歳で退職金なら5年違う。同じ年に受け取るわけでもないから大丈夫だろう」と考えていました。

老後のお金の使い方も、かなり具体的に決めていたそうです。まず、60歳で受け取る500万円は、すぐには使わずに手元資金として確保します。65歳までの間にまとまった支出が発生した場合の予備費として残し、できるだけ温存する予定でした。

そして65歳で会社の退職金2,000万円を受け取ったら、自宅の修繕に約200万円を使うつもりでした。築年数も経ってきており、外壁や水回りなど、退職後にまとめて直しておきたい場所があったからです。

さらに、仕事を辞めた後は夫婦で旅行に行きたいと考え、その費用として約100万円も見込んでいました。残る資金は、年金で不足する生活費や、将来の医療費、介護費などに回す予定です。

「2,500万円あれば、年金と組み合わせて何とかやっていけるだろう」
Mさんは、老後資金について大きな不安は感じていなかったそうです。

FPに相談してわかった意外な結末

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ところが、60歳でiDeCoを受け取る前に、念のためFPへ相談したことで話が変わります。

Mさんは、自分の計画をそのまま伝えました。
「今年、iDeCoの500万円を一時金でもらいます。会社は65歳まで働くので、退職金2,000万円は2031年です。5年違うので特に問題ないですよね」
Mさんとしては、念のため聞いておこうという程度だったそうです。

しかし、FPから返ってきたのは予想していなかった説明でした。
「今回の受け取り方では、2031年の退職金の控除額を計算するときに、2026年のiDeCoが関係する可能性があります」

Mさんは思わず聞き返しました。
「5年違っていてもですか?」

そこで初めて、以前覚えていた「5年」という知識だけでは判断できなくなっていることを知ったのです。60歳で500万円、65歳で2,000万円。受取時期まできちんと分けたつもりでしたが、その5年だけを見ればよいわけではありませんでした。

Mさんは、老後に受け取る約2,500万円について、「いくらあるか」だけでなく、「どの年に、どの方法で受け取るか」から考え直すことになったのです。

なぜ5年違っても関係する? 2026年から広がった“さかのぼる範囲”

iDeCoを一時金で受け取る場合、原則として退職所得として扱われます。会社から受け取る一般的な退職金も同様です。

どちらにも退職所得控除がありますが、複数の退職金などを受け取るときは、計算に関係する期間の重なりによって控除額が調整される場合があります。

2026年1月1日以後にiDeCoなどの老齢一時金を先に受け、その後に会社の退職金を受け取る場合、後の退職金の年から見て「前年以前9年内」に受けた老齢一時金が対象になります※2。

Mさんの場合は、

  • 2026年 iDeCo一時金約500万円
  • 2031年 会社の退職金約2,000万円

という流れです。

受取年は5年違いますが、2026年は2031年から見た「前年以前9年内」に含まれます。そのため、「5年違うから関係ない」とは判断できません。

ただし、退職所得控除がすべて使えなくなるわけではありません。実際の控除額は、iDeCo一時金の計算の基礎となる期間と、会社の退職金に関係する勤続期間がどの程度重なるかなどを踏まえて計算します。また、先に受け取ったiDeCo一時金の額によって計算が変わる場合もあるため、実際の税負担は人によって異なります。

「退職金を先にすれば解決」とも限らない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

では、会社の退職金を先に受け取り、iDeCoを後にすればよいのでしょうか。

これも単純ではありません。

会社の退職金を先に受け、その後にiDeCoなどの老齢一時金を受ける場合には、従来通り19年内の調整ルールが適用されます※3。
また、iDeCoは一時金ではなく、年金として受け取る方法もあります。年金形式なら、公的年金等控除が関係します※4。

見ておきたいのは、「iDeCoはいくらあるか」「退職金はいくらか」だけではありません。会社で働いた期間、iDeCo一時金の計算に関係する期間、それぞれを受け取る年までまとめて見ることが大切です。

Mさんのように、「5年違うから大丈夫」と思っていても、制度が変われば前提も変わります。老後資金は、受取額だけでなく、受取時期と受取方法まで一緒に考えておきたいところです。

※1 iDeCoの老齢給付金を60歳から受け取るには、原則として60歳までの通算加入者等期間が10年以上必要です。
※2 2026年1月1日以後に受けるiDeCoなどの老齢一時金が対象です。具体的な控除額は、期間の重なり方や一時金の額などによって異なります。
※3 会社の退職金を先に受け、その後iDeCoなどの老齢一時金を受ける場合は、老齢一時金を受ける年の「前年以前19年内」に受けた退職手当等が調整対象となる場合があります。
※4 iDeCoを年金として受け取る場合は、公的年金等に係る雑所得となり、公的年金等控除の対象です。

※事例は制度を分かりやすく説明するため、内容を一部調整しています。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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