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「こんな場所で食うなよ」やっと座れたと喜んだ帰り道。だが、近くの乗客の行動に絶句

  • 2026.8.21

やっと座れた、と思った帰り道

仕事帰りの電車で座れることは、私にはほとんどない。

その日も期待などしていなかったのに、席が少し空いていた。

滑り込むように腰を下ろし、鞄を膝に抱えた瞬間、肩から力が抜けていくのがわかった。

「今日はついてるな」

目を閉じていれば、家に着くまでの短い休みが手に入る。

そう思っていた矢先、隣から鞄をかき回すような音がした。

ビニールの擦れる音、硬いものが触れ合う音。何気なく視線を落とすと、隣の人が缶の飲み物と袋入りのつまみを取り出したところだった。

(こんな場所で食うなよ)

プシュッという音が、車内の静けさに妙に大きく響いた。

それでも、静かに飲んで食べているだけならまだましだと、自分に言い聞かせた。目くじらを立てるようなことではない。そう思い込もうとした。

音が消えない、それでも誰も何も言わない

けれど、その考えはすぐに崩れた。

隣の人は、口を開けたまま噛む人だった。

くちゃ、くちゃ、という音が規則正しく耳に届く。合間に缶をあおる音が挟まり、また噛む音が戻ってくる。

走行音に紛れて消えるどころか、その音だけがくっきりと浮かび上がってきた。

「聞かないようにすればいい」

鞄から本を取り出して開いた。

文字を追うふりをしながら、同じ行を何度も目でなぞっていた。

内容はまるで頭に入ってこない。音が鳴るたび、体のどこかがびくりと反応した。

顔を上げると、向かいの人が一瞬こちらを見て、すぐに視線を落とした。少し離れた席の人も、眉のあたりをかすかに動かしただけで黙っている。

気づいているのは自分だけではない。それがわかっても、車内は何も変わらなかった。

「やめてもらえませんか」

頭の中では何度も言えた。それでも口は動かなかった。

言ったあとの空気を想像するだけで、喉が閉じた。

そのうちにゲップの音まで加わって、もう休むどころではない。

せっかく座れた席が、いちばん逃げ場のない場所に変わっていた。

「もう、いいか」

電車が止まって扉が開いたとき、私は立ち上がった。

隣を見ないまま、そのまま隣の車両へ移った。つり革につかまって立った瞬間、ようやく耳が静かになった。

地獄のような時間から抜け出せたのに、勝った気持ちにはならなかった。

座れた喜びは、もうどこにも残っていなかった。

「座れたら得だと思っていたのに」

それ以来、電車で空いた席を見つけても、すぐには座れなくなった。

腰を下ろす前に、隣にいるのがどんな人か、鞄の口が開いていないかを、つい確かめてしまう。あの夜から、座るという行為が、少しだけ身構えるものになった。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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