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エットレ・ソットサス自身が語ったデザイン哲学とは?

  • 2026.8.18
Edoardo Fornaciari

建築家、デザイナーとして活躍したエットレ・ソットサス(1917~2007)。2000年、彼が83歳の時に『エル・デコ』で語った、デザインの本質についての言葉。時代を超えて響くその哲学を、改めて振り返る。

『エル・デコ』2026年8月号より。

Q これまでに「あれはデザインしておきたかった」と思うものがありますか?

エットレ・ソットサス(以下E) 「この質問には危うさがありますね。みんなの意識を一つの考えへ向けてしまうからです。例えば、こんなことを言うことができます。『私は、ル・コルビュジエの作品が好きだ。その理由は、彼が住宅の空間構成に柔軟性をもたらした建築家の一人だから』。けれど同時に、私はミース・ファン・デル・ローエも好きなのです。彼のアプローチはル・コルビュジエとは正反対ですよね。絶対的な完璧さを追求しています。その作品はグリッドをベースに設計され、仕上げは端正に整えられている。どちらも興味深い。ほかにも魅力的なものはたくさんあります」

Q あなたにインスピレーションを与えるものは何ですか?

E 「色彩の歴史ですね。古代エジプトのブルーやゴールド、それからトスカーナの画家たちが手にしたアースカラー。19世紀に入ると、紫のような、それまで見られなかった色が使われ始めます。現代人は、色といえば鮮やかなネオンカラーやテレビで目にするものを思い浮かべるでしょう。私自身が若かった頃は、子どもっぽい大胆な色を好みました。シンプルで無垢なものをデザインしたいと思っていましたから。今のガソリンスタンドの色ですね。年を重ねたからなのか、最近はもっと落ち着いていて、洗練された色を使います」

Getty Images
Q 「これだけはデザインしない、もしくはできない」と思うものはありますか?

E 「私は動きを伴うものはデザインできませんね……。ファッションや自動車、自転車など、どれも無理です。本質的に、私は建築家なので、静止した状態にあるものをつくる。私は一度、いわゆる“夢の車”である『アルファ ロメオ』からデザインの依頼を受けたことがありました。そのときも、本体には手をつけず、カラーと素材だけを変えました。あの車がほかの形になるなんて、想像ができなかったんです」

Q 自宅には、これまで手掛けられた作品が並んでいるのでしょうか。

E 「ごくわずかですよ。自分の作品を目の前に置いて見続けるなんて、耐えられない! 友人で画家のフランチェスコ・クレメンテが描いた絵画を数点所有していて、あとはアメリカの家具メーカー、『エメコ』のチェア“ネイビー”を置いています」

「エメコ」の“ネイビー”¥209,000(ロイヤルファニチャーコレクション) Hearst Owned
Q チェア“ネイビー”を、ご自身でデザインしたかったとは思いませんか?

E 「そんなこと、考えたこともありません。アメリカ海軍の潜水艦などで使うためにデザインされた椅子“ネイビー”が生まれたのは、アメリカが頑丈で、実用的な家具を量産していた時代。そこにデザインはなかった。私はこの点に惹かれました。装飾も、デザインもない。このチェアに携わる誰もが『やり過ぎていない』のです。実際、あらゆるデザイナーが『デザインのないもの』をデザインしたいと思っているのではないでしょうか。デザインは、シンプルな発想から生まれるのです」

Q デザインを通じて、人々の生活をより良くしたいと思いますか?

E 「必ずしもそうとは言い切れません。ピカソを見てください。彼は作品を売りたいから絵を描いていたわけではありません。ピカソが筆をとったのは、描くのが好きで、作品を通して何かを訴えたかったからです。大切なのはプロセス。完成品よりね。たいそうな作品をつくったり、そういったものを積み上げたりすることが目的ではないのです」

Profile エットレ・ソットサス
1917年オーストリアで生まれ、主にイタリアを拠点に世界で活躍した建築家・デザイナー。1950年代にオリベッティ社やポルトロノーヴァ社などで数々の優れたデザインを生み出した後、戦後の行き過ぎた合理主義に疑問を抱き、1981年にデザイナー集団「メンフィス」を結成。ポストモダンの旗手として活躍し革新的なデザインで注目を集めた。2007年逝去。

Original Text : MICHELLE OGUNDEHIN

Text : CHISATO YAMASHITA

JUNPEI KATO
『エル・デコ』2026年8月号


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