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中古楽器店に持ち込まれるのは楽器だけじゃない。諦めた夢や止まっている人生をもう一度チューニングする「再生」の物語【書評】

  • 2026.8.16

【漫画】本編を読む

『Re-Tune ~あなたの人生チューニングします~』(もりさわたみこ:漫画、あべ美佳、針生悠伺:原作/ぶんか社)は、田舎町の小さな中古楽器店を舞台に、音楽とともに生きてきた人々の後悔や希望を描くヒューマンドラマである。楽器は単なる「モノ」ではなく、持ち主の人生そのものを映す存在であることを気づかせてくれる、温かな再生の物語だ。

主人公・小暮つるは、父親の死をきっかけに中古楽器店「RETUNE」を継ぐことになった22歳の女性。店にはギターやベース、ドラム、キーボードなどさまざまな楽器が持ち込まれるが、そのひとつひとつには、夢を諦めた人、音楽から離れた人、音楽に傷ついた人たちの人生が刻まれている。つるは楽器に宿る記憶や思いに触れられるという不思議な力によって、持ち主たちが抱えてきたさまざまな「思い」を知ることになる。

本作は、音楽が好きだった、あるいは、実は今も好きという気持ちを描いている。プロを目指して断念した人、生活のために楽器を手放す人、大切な思い出を封印してきた人など、楽器を通じて過去と向き合うことで、登場人物たちは少しずつ前へ進む勇気を取り戻していく。誰もが一度は人生のどこかで挫折を経験し、何かを諦めながら生きているからこそ、それぞれのエピソードが読み手の胸に響く。

つる自身も父を亡くした喪失感を抱えながら、店を継ぐ意味や、自分にしかできない役割を模索していく。誰かを救う物語であると同時に、つる自身が人との出会いを通して救われながら成長していく姿も本作の大きな見どころだ。

人生は、一度狂ったらそれで終わりではない。修理や調律によって楽器が美しい音色を取り戻すように、人の心も少しずつだが整え直せることを気づかせてくれるだろう。音楽が好きな人はもちろん、何かに挫折した経験のある人、どこか諦めた気持ちを持ったまま生きている人に、前向きな気持ちを取り戻させてくれる作品だ。

文=馬風亭ゑりん

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